第31話 あなたの好きな髪型は?
携帯が復活して、俺は気分よく学校に向かう
そして、後ろの方では何かが付いてきていた
「まって、まってよ。ふーちゃん」
「ふーちゃん言わない」
「うぅ・・・あ、まってよ。楓」
「何?千夏先輩」
俺がチィ姉の方を振り向くとチィ姉は一瞬睨んできたが、すぐにニコ~と笑って俺の横を歩きだす
「どう?」
「どう?って何が?」
「髪型だよ、評価して。楓」
「完璧だよ」
「完璧?他の言葉で」
「最強?」
「・・・」
「グッド?」
「・・・他」
「ん~・・・キュート?」
「日本語で言って!」
「はぁ・・・可愛いよ、今日も最高に可愛い」
「えへへ~」
チィ姉は本気で嬉しそうにしていて、その顔がだらしない
この前チィ姉のポニーテールを褒めてからチィ姉は髪型に懲り始め、ポニーテール、おだんごヘヤーなどなど様々な髪型をしては俺に感想を求めてくる
もちろん顔が顔なのでほとんどの髪型は似合っていて、学園のファンを更に増えてきている
だけど、チィ姉はそんなことは気にしていないのか俺の評価しかまともに受け取らないでいた
そして、今日の髪型はこの前褒めたポニーテール
「ねぇ楓はどんな髪型が好きなの?」
「どんな髪型でもいいよ」
「特にってのは?」
「別に無いけど・・・一応聞くけど、俺の好きな髪型聞いてどうすんの?」
「もちろん、その髪型をするよ」
チィ姉は当然のように言ったので俺は露骨に嫌な顔をしてみたがチィ姉には効かず、俺の手を取り自分の胸の辺りに当たるか当たらないかのギリギリまで持っていく
「ねぇ、どんなの?」
「離して」
「言わないとこうしちゃうぞ~」
チィ姉はそう言って自分の胸に俺の手を押さえついてくる
「わ、わかった!?言うから離して!・・・・・えっと・・・チィ姉が小さい時にしてた髪型は好きだった」
「私が小さい時?」
俺の答えを聞くとチィ姉は顎に手を当てて考え始めた
正直俺自身もあまりその髪型を覚えていないのだが、俺が小さい時は好きだった思い出がある
「私が何歳ぐらいのとき?」
「え~っと・・・たぶん8歳か9歳かそのへん」
「8歳か9歳・・・あ~もしかしてこんなの?」
チィ姉はそう言いながらポニーテールを解いて、後ろ髪を2つに分けて前に出す
俺はその髪型を見ると小さい時のチィ姉の姿が思い出した
「そうそう、それ」
「そっかぁ・・・ふーちゃんはこの2つ結びが好きだったんだ。でも今はゴムが無いなぁ・・・今から・・・」
俺の答えを聞くとチィ姉はブツブツと何か言いながら俺の横を歩いていた