第27話 風邪は○○にうつすのが一番
GW3日目のお昼
「さぁてと・・・久しぶりに自転車でどっか遊びに行こうかなぁ。風邪もバッチリ治ったし」
風邪薬の効果なのか、それとも良く寝たおかげなのか、それとも・・・。
ということで俺は見事完治して、昨日の重い体が嘘のようだった
俺は背伸びをしながら、部屋を出ようとすると後ろの方から俺を怨むような視線を感じる
「あぁ〜やっぱり元気なのが一番だよね〜」
「・・・・」
「あれ?どうしたのかな?千夏さん」
「うぅ〜・・・っくしゅん!!」
「わっ、汚」
「ふ〜ちゃぁ〜ん・・・」
「はいはい、わかったから。チーして」
俺はベッドで死にかけているチィ姉の鼻に何重にもしたティッシュを押さえ、鼻をかます
「あぅぅ・・・鼻痛いぃ・・・喉痛い・・・」
「それにしても風邪は人にうつすのが一番早く治るのは本当だね」
「うぅ〜・・・」
そんな冗談を言いながらチィ姉は体も起こせないほど弱っていたので、体を起こすのを手伝う
母の知り合いの松田さんにわざわざ来てもらい、診てもらって薬も貰ったのでそれを飲ますためにお粥を食べさせる
「熱い・・・お腹減ってない・・・」
「わがまま言わない、はい食べて」
「鬼・・・」
「鬼でも結構。これ食べないと薬飲めないから」
チィ姉は「ぶーぶー」と何か訴えてくるが、すぐに息を切らして寝転んだ
「はぁ・・・ホントに食べないの?」
「だって・・・熱いんだもん・・・」
「子供か、あんたは・・・」
「っくしゅん!!・・・あぅ・・・私、病人だよ・・・」
「はいはい、鼻水垂らしながら言っても説得力無いよ。いや、逆にありすぎて笑えるよ」
「ふーちゃんの鬼ぃ・・・ゲホッゲホッ」
「本当に鬼ならこんなことしないって。はい、チーして」
何度目になるのか分からないぐらい同じ行動をしていて、ゴミ箱の中はすでにティッシュの山ができている
チィ姉が食べられないと言ったお粥とゴミ箱を持って部屋を出て、お粥は皿に入れてラップをし、ゴミ箱の中身を燃えるごみの袋に入れて部屋に戻る
「ちょっとコンビニ行ってくるから何か欲しいものある?」
「ない・・・っくしゅん!!」
「はい、チーして。それじゃ10分ぐらいで戻ってくるから」
俺は財布を持って、すぐ近くのコンビニに行き自分の食べ物とゼリーと飲み物を色々買ってすぐに家に戻る
そして、すぐにチィ姉のいる部屋に行くとチィ姉は死んだように眠っていた
俺はベッドのそばに座って、この前入ったチィ姉の部屋とまったく変わっていない部屋を見回す
相変わらず写真ぐらいしかない部屋で漫画や雑誌などは一切ない
あるとすれば所々直した個所がある熊のぬいぐるみと昔チィ姉が好きだったアニメのキャラが書かれている抱き枕ぐらいだ
正直、俺がイメージしていた女子高校生の部屋と違う
まぁ勝手に想像していただけだから、実際はどうなのか知らないけど・・・
チィ姉が寝た今、俺にはやることがないので紙に“用事があれば携帯に連絡”と書いて寝ている近くにチィ姉の携帯を置いて自分の部屋に戻りゲームをする
俺がゲームをしてから2時間近く経つと携帯が鳴り、死にそうな声が聞こえてくる
「ふぅちゃ〜ん・・・お腹減った〜・・・」
「了解」
俺はゲームを止めて、キッチンに行きチィ姉が残したお粥を温めて部屋に持っていく
「はい、どうぞ」
「うぅぅ・・・熱い・・・」
「冷めたお粥なんて美味しくないでしょ」
「ふーふーしてぇ・・・」
「そんぐらい、自分でしなよ」
「ゲホッゲホッ・・・あぅぅ・・・」
チィ姉は泣きそうな目で俺を見てきて、しんどくてフーフーできない!と言いたそうな感じで、俺的には食べてもらわないと薬を飲ませられないので諦めた
「今回だけだからね、ふーふー・・・はい、口開けて」
「あ〜・・・んぐんぐ。うん、おいしい」
「そりゃどうも、はい」
「ん・・・」
10回ぐらい同じ行為をしてくると、だるくなってくる
そんな俺のことを気にせず、次のお粥をもらうため小鳥のように口を開けて待っていた
「あ~」
「はい」
「ん・・・んぐんぐ」
おいしそうに食べてくれるのはいいのだが、なんとなくイタズラ心が湧いてくるのはまだ俺が子供だからだろうか・・・
次のやつはフーフーせずに食べさせようと考えてしまい、チィ姉が口を開けるまでの数秒、心の中で天使と悪魔が戦う
「はい、チィ姉」
「ん・・・んん!!んー!!んー!んーー!!」
「っぷ・・・あはははは〜」
つい悪魔の方が勝ってしまい、ふーふーせずに口の中に入れるとチィ姉は手をバタバタして口の中の熱さに耐えている
「・・・・ひどい、ふーちゃんは鬼だ・・・」
「ごめんごめん、ついやりたくなって・・・はい」
次のお粥を口の前に出してもチィ姉は警戒してるのかお粥と俺を交互に見てくる
「大丈夫だから、これはちゃんとしてるよ」
「・・・・あむ・・・んー!!!」
「あはははは」
今度も見事引っかかり、手をバタバタして目から涙を流しながら頑張って耐えているのだが、その姿が面白く何度でもやりたい気持ちになる
「うぅ・・・やけどした・・・もういい、いらない」
「はぁはぁ・・・ごめんごめん」
「っくしゅん!!・・・もうふーちゃんに助け求めない」
チィ姉は俺に背中を向けて寝転ぶが鼻水が出ているので、その姿に笑えて来る
「・・・もぉ!笑うな!出てけ!!」
「わかった、わかったからもう笑わないから。はい、チーして」
助けを求めないと言って数秒ですでに俺に助けられているのだが、それでもまだ怒っているみたいだった
「はい、薬飲んで」
「いらない!!」
「薬飲まないって子供か・・・」
「いらないったらいらない!・・ゲホッゲホッ!」
「ほら、薬は飲もうよ、しんどそうに咳してるじゃん」
「いらない!ゲホッゲホッ」
「はぁ・・・それじゃ口移しでしたげるから」
「ホント?!」
「嘘に決まってるでしょ。何信じてんのさ、はい薬」
「うぅ〜・・・・」
チィ姉は頬を膨らませながら素直に薬を口の中に入れて水で流しこむ
そして、飲み終わると俺にコップを渡してベッドに寝転んだ
「・・・・・寝る」
「はいはい、おやすみ」
完璧にスネたチィ姉は俺に背中を向けて寝る姿勢になったので、俺は部屋から出ようとドアに手をかけると後ろから寂しそうな声が聞こえて、そっちのほうを見るとチィ姉が寂しそうな目でこっちを見ていた
「・・・どこいくの?」
「どこってここから出ていく」
「なんで?」
「出てけ!って言ったでしょ?」
「・・・て・・・」
「なんて?」
「ここにいて・・・」
「りょーかい」
俺はチィ姉の寝ているベッドの側まで戻ろうとすると「熊のぬいぐるみを取って」と言われたので机に置いてあるぬいぐるみをチィ姉に渡す
「もしかして、それと抱き枕ないと寝れないとか無いよね?」
「あったほうが安心して寝れるの、ケホッケホッ」
「ふ〜ん、んじゃ俺ここにいるからそれと一緒に寝なよ」
「・・・手、繋いで」
「はぁ・・・わかりました、お嬢様」
布団の間から出てきたチィ姉の手を握るとチィ姉はニコッと笑って目を瞑った