第25話 バカじゃないことの証明
普段の行いが悪いのだろうか?
それとも、神様は俺のことが嫌いなのだろうか?
GW初日に俺は風邪を引いた
もちろん原因は昨日の雨でぬれたまま寝てしまったせいだろう
「っくしゅん!!・・・ああ〜」
重い体をベッドから引き離し、リビングに行くと母さんが1人でTVを見ている
「はっくしゅん!!!」
「楓、風邪引いたの?」
「見ればわかるでしょ」
「ふ〜ん、よかったわね。バカじゃなくて」
母さんは特に気にすることなく椅子から立ってどこか行く準備を始め出す
「っくしゅん!・・・どっか行くの?」
「言ってなかったけ?ちょっと仕事のネタ探しに北海道まで行くの」
「ネタって・・・ただの旅行じゃ」
「そうとも言う。それじゃGW中は帰ってこないから家よろしく!」
母さんはそう言うと家の前に呼んであったタクシーに乗り、北海道へのネタ探し&旅行へ旅立った
「っくしゅん!!・・・ああ〜薬どこに置いてあったかな・・・」
俺は風邪薬を探してみるが、普段滅多に風邪とか怪我とかしないので救急箱がどこにあるのかもわからない
たぶん、チィ姉ならわかると思うのだが、俺が風呂から出てきた時に母さんがチィ姉はGW中に両親のところに行くから家をもう出たとか言っていた
だからGW中は俺1人になる
そう考えるとこの重い体でご飯を作ったりしないといけないとか思うと重い体が更に重く感じた
「はっくしょん!!ああ〜もういいや・・・とりあえず寝よ」
風邪薬は諦めて、俺は自分の部屋に戻りベッドの中に入って寝る
次、目が覚めたときは辺りが真っ暗になっていて時計を見ると夜の7時になっていた
10時間近く寝たことになるのだが、風邪は更に悪化し体は朝以上に重く感じた
「は・・・っくしゅん!!・・・喉痛てぇ・・・腹減った・・・」
ベッドから出る気はあるのだが体が言うことを利かない。
なんとかムチを入れて動かしリビングまで行ってノドがカラカラなので水を飲む
「はぁ〜うま・・・」
いつもは母さんやチィ姉で騒がしい家も2人がいないとこんなにも静かになるのか?と思うぐらい静かで家の前を通る車の音が聞こえる
俺は立ってるのもシンドイのでソファの背を倒してそこに寝転び、TVを付ける
ソファは母さんがよくここで寝るためにベッドにできるやつで初めてソファベッドに感謝した
TVは昔やっていたアニメが流れていて主人公が仲間を助けていた
「なつかし・・・ゲホッゲホッ」
腹は減っているがもう立つ気にもなれないので、さっき冷蔵庫から取り出した2リットルの水だけ飲んで空腹を抑える
そして、見ていたアニメが終わり次はバラエティ番組が始まった
TVの中では最近人気が出始めた芸人がボケて、その相方がツッコむと会場は盛り上がっている
そんな会場とは裏腹に俺のいる家はTVの音と俺の咳とくしゃみと鼻をかんだ時の音しかしない
「はっくしゅん!!ゲホッゲホッ!・・・うえぇ・・・今のヤバ・・・」
ボーっとしていて気を緩めてしまってついクシャミと咳が連続で出てしまい、痛いノドが更に痛くなってしまった
喉の痛みと戦っていると5月とは思えないぐらい寒くなってくる
俺は寒さと重い体と戦いながら隣の客室から掛け布団を奪って、冷蔵庫から新しい水を取ってソファに再び寝転ぶ
すると、掛け布団のおかげで寒さはまだ感じるがさっきほどではなく睡魔が襲いかかってきて素直にそれに従い俺は夢の世界に入っていった
GW2日目
結局、俺はあれからずっと寝続け、起きても動く気もなれず今もずっとソファの上でTVのチャンネルを変えたりし、寝たりして時間をつぶしていた
その間、クシャミや咳や鼻水や寒気など色々なものが押し寄せてきて俺の喉と体はすでにボロボロだった
「はっくっしゅん!!!・・・ゲホゲホ・・・」
俺は飲み水が無くなったので、重い体をソファから離し冷蔵庫に向かうため立った
「うわっ・・・クラクラする・・・」
立った瞬間、眩暈と頭痛を感じ動くのさえしんどかったが脱水症状になる方が辛くなるのだけは避けたいので頑張って冷蔵庫まで歩いていく
そして普段なら簡単に開けられる冷蔵庫のドアも力いっぱい開けないといけないほど俺の体は弱っていた
「はぁはぁ・・・水ない・・・」
頑張って開けたにも関わらず、冷蔵庫の中にはすでに水は無くチィ姉の字で「千夏の!!」と書かれたオレンジジュースしかなく飲むか飲まないか悩む
前に俺が知らずにチィ姉のリンゴジュースを飲んでしまったことがあって、それがバレてチィ姉は大泣きし、そして母さんに告げ口され地獄を味わったことがあった
数分冷蔵庫の前に座り飲むか飲まないか悩んだ挙句、俺はオレンジジュースを手に取りソファまで戻る
「・・・緊急事態だから・・・っくしゅん!!」
なんて情けないのだろう・・・
ソファに座りながら言い訳した自分が悲しくなり、一口だけ飲むと俺は寝転び目を閉じた
それから何度かトイレなどで起きることがあったが寝る前と変わらずソファから離れなかった
そして、辺りも真っ暗になってきて昨日から何も食べていないお腹もそろそろ限界に達しそうだった
しかし、空腹感とは裏腹に体は言うことを利かず結局は寝ることを選択し少しでも空腹感を忘れようとする