第23話 いつも通・・・り?
次の朝、いつも通りに起きてリビングに行くといつも通りチィ姉と母さんが居て、朝ごはんを食べていた
「おはよう」
「楓、もう少し早く起きられないの?」
「早く起きても何のメリットも無いからこれでいいよ」
「学生はのん気でいいわねぇ・・・私は徹夜したのに」
「それは締め切り前ならいつものことでしょ・・・ふぁぁ」
母さんといつも通りの会話をしながらテーブルに座ると少しいつも通りじゃないことが起きる
いつもなら俺がテーブルに座るとチィ姉はすぐに朝ごはんを出してきてくれて横に座りに来るのだが、今日は朝ごはんも出てこなくて「ごちそうさま」と言ってリビングから出ていった
「・・・・・」
「・・・・・楓、千夏ちゃんと喧嘩でもしたの?」
「ん・・まぁ・・・それじゃ俺、学校行く準備・・・」
「待ちなさい。ちゃんと話聞かせてもらいます」
「で、でも母さん、締め切りは?」
「徹夜で頑張ったから終わったわよ。さぁ言いなさい」
母さんは見る限りでは笑っているが、目の奥に“話さないと殺”って書いてあるような目でこっちを見てくる
俺は“蛇に睨まれた蛙”もっと分かりやすく言うと“拳銃を目の前に付きつけられてる”って感じだ
なんとかこの状況を脱するために、少しニコっとしてみたが、それは今の状況を悪化させただけで仕方なく俺が覚えていることを全部話す
そして俺が話し終わると母さんは少し考え込んだ
「・・・楓」
「な、なんでしょう?」
「一回死んでみる?」
「・・・・人は一回しか死ねませんよ?母上」
「それじゃ死にかける?」
「・・・勘弁してください」
「それじゃ・・・あ、でも・・・」
母さんは独り言をボソボソ言って何か考えがまとまると、それはもう恐怖の波が押し寄せてくるような笑顔になった
「楓」
「は、はい!」
「この件は聞かなかったことにしてあげるわ。その代わりに絶対楓から千夏ちゃんに謝らないこと」
「はい?」
「だから、千夏ちゃんから話しかけてこない限り楓からは話しかけたらダメよ、何があっても」
「でも、最近学校でラジオやってるんだけど・・・」
「変わってもらいなさい、とにかく話しかけちゃダメ。もし、楓から話しかけて謝ったり、このことがバレたりしたら・・・・」
「したら?」
話の流れで聞きたくなかったことを思わず聞いてしまったが、その返事は言葉として返ってこなくて、笑顔という形で返ってきた
「・・・・わかりました。俺からは話しかけません、神様に誓って」
「よろしい、それじゃ学校行ってきなさい」
言われた通り、遅すぎる登校だが制服に着替えて自転車で学校に向かった
「珍しいね、楓くんが遅刻なんて」
「ちょっと動くと殺されそうなことがあって・・・」
「よくわからないけど?・・・おつかれさま」
教室に入って悠斗と話していつも通りの生活に戻す
放課後、俺は部室に行こうとする悠斗を呼び止めて昨日のことと朝のことを話した
「ごめん、協力してくれる?」
「いいけど・・・本当にやるの?」
「やらないと殺されそうで・・・あの目は本気だった」
「わかったよ、姉さんには僕から言っておくよ」
「助かるよ。あ、このことチィ姉にはバレないようにお願い」
「うん、でもラジオはどうするの?」
「それも込めてお願いします。たい焼き奢るから・・・」
「あはは、わかったよ。それじゃ」
「じゃ」
悠斗に協力を得て、最大の難関だと思っていた沙羅さんは悠斗に任せれて安心したのだが・・・いまいち母さんの考えていることがわからない
いつもなら、あそこで数発頭を殴られるか、仕事を3日間ぐらいぶっ通しで手伝わされるかの2択
だけど今回はチィ姉に謝るなとか話しかけるなとかよくわからない
俺は母さんは徹夜で寝ボケていたのだと答えを出して、部室には行かず家に帰る
そして家に着いて母さんの部屋に行き、朝のことをもう一回聞いてみた
「寝ボケてなんかないわよ、もしかして・・・」
「い、いや大丈夫だよ。話してない」
「そっ、それじゃこれから頑張りなさい」
「あ、うん」
俺の頭では解析不能なことが今ここで起きていて、頭が痛くなり自分の部屋のベッドに倒れ込んだ