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第19話 九十九 楓の憂鬱?

 水曜日、かなり憂鬱な水曜日が来てしまった

 憂鬱度で言うと夏休み明けぐらいだ

 俺は憂鬱になりながらも、久美ちゃんの授業を受ける

 

「え〜っと、ここの問題は〜・・・難しいからテスト出すね~」

「え~!!」

「静かに~、これもあなたたちのためなのよ。先生は心の中で泣いているの」

「久美ちゃん~、顔がもう笑いまくってるよ~」

「だって、苦しむ顔がいっぱいなんだもん」

 

 久美ちゃんは本当に嬉しそうな顔で教室を見渡す

 そして、教室全体を見回し終わると同時にチャイムが鳴った

 

「はい〜それじゃ今日はここまで〜」

 

 授業が終わるチャイムが鳴ると、久美ちゃんは手を振りながら教室を出て行き、教室内が賑わい始める

 休み時間に特に友達と話す気分にもならなかったので俺はこの憂鬱な気持ちを少しでも忘れるために、手を枕にして寝ることにした

 そして、次に目を開けたときにはもうすでに授業が終わって、ホームルームの最中だった

 

「おはよう。すごく気持ちよさそうに寝てたね」

「あれ・・・俺何時間ぐらい寝てた?」

「3時間目の終わりからずっと寝てたから4時間ぐらいかな?」

「・・・・」

「あ、今日は楓くんと星井先輩の初ラジオだから頑張って」

「・・・せっかく忘れてたのに」

 

 俺はもう一度寝ようと試みたが横からそれを阻止するかのように頭に手が伸びてきてつむじを当たるか当たらないかの具合で触ってきた

 

「ひっ!?」

 

 俺は昔からつむじを当たるか当たらないかの具合で触られると体が固まってしまい、少しの間動けなくなるという不思議なことが起こる

 なんとか頭だけ動かし、後ろの方を見るとチィ姉がキリッとした顔でこっちを見ていた

 

「楓くん、放送室行くよ」

 

 悠斗以外の生徒はチィ姉に見惚れていたり、2年のチィ姉が1年の教室にいることに驚いていたりとさまざまな表情が教室の中にある

 

「楓くん?」

「あ・・・」

 

 俺はようやく体が動くようになり、逃げようとしたが悠斗に手を掴まれていて、何故かチィ姉は俺を睨んでくる

 

「楓くん、行くよ」

「・・・はい、わかりました」

 

 チィ姉の睨みと威圧感に押され、俺は逃げることを諦め素直にチィ姉と教室を出ていく

 俺とチィ姉は廊下を歩いている間、お互い無言で、放送室の中に入ると、まだ沙羅さんは来ていなかった

 

「はぁ・・・本当に今日するの?」

「・・・・・・・・」

「チィ姉?」

 

 何も返事を返してこないチィ姉に不思議に思い、チィ姉の方を向くとふるふると震えている

 

「寒いの?」

「・・・・」

「チィ姉?」

 

 さっきから俯いてふるふる震えているため心配になって近づくとガシッっと抱きしめられた

 

「ちょ!?ってうわっ!?」

 

 俺は急に抱きしめられたため、踏ん張りが利かずチィ姉と共に後ろにバタンと倒れてしまった

 

「ってて・・・大丈夫?チィ姉」

 

 なんとか頭だけあげて上に乗っているチィ姉の方を見るとまだ震えていて聞こえるか聞こえないかの小さな声で話しかけてきた

 

「ふーちゃん・・・あのね・・・」

「ん?」

「わ、わたし・・・すごい緊張してるの・・・」

「ようやく声出したと思ったら・・・そんなことか・・・」

「そ、そんなことって!わ、私今日どれだけ緊張してたと思ってるの!」

 

 チィ姉は怒ってるような怒ってないような微妙なテンションで俺の上に跨り、所謂マウントポジション状態で、さっきから何度も胸辺りを叩いてくる

 

「痛い痛い、わかったわかったから!」

「何がわかったの?もしかしてこの緊張の解き方?」

「そんなの分かるわけないじゃんか」

「む〜、ふーちゃんはなんか冷静だね」

「冷静っていうか・・・ん〜憂鬱?」

「憂鬱?」

 

 チィ姉は頭の上に?が何個も出ているような顔をして俺を見下ろしてくる

 

「そっ、こういうのやる前って憂鬱にならない?」

「緊張はするけど、憂鬱にはならないよ」

「ふ~ん・・・まぁもう諦めついたからいいけど・・・とりあえず今日のラジオ頑張ろうよ。ね?」

「・・・うん、頑張ろう!なんか緊張ほぐれてきた!ありがと、ふーちゃん」

「うわっ!だから抱きつかないでって!!」

 

 マウントポジションのまま抱きつかれると思いっきりチィ姉の体重が俺に掛かり、軽いんだけど自由が利かなくなる

 何とか抜けようとバタバタしてみるが綺麗に抑えられていて抜け出せず諦めた・・・のがいけなかったのだろうか・・・

 チィ姉は更に調子に乗り、キスまでしてこようとしてきた

 

「調子に乗〜る〜な〜」

「いたひ、いたひほ、ふーひゃん」

 

 調子に乗るチィ姉の頬をつねり些細な犯行をする

 

「ごめんごめん、楓くんそろそろ始ま・・・・」

「こら、悠斗入り口で立ち止まるな。」

 

 俺とチィ姉が戦っている最中、急に放送室のドアが開き悠斗と沙羅さんが目を見開いて俺たちを見ている

 

「・・・・・えーっと・・・その〜なんだ・・・悠斗30分ぐらい外に出ておこうか」

「うん、そうだね」

「いやいやいや、出なくていいですから!それに30分ってなんですか!」

 

 悠斗と沙羅さんは外に出ようとするので俺は必死で止める

 その間もチィ姉の左頬をつねっているため、チィ姉は「いたひ、いたひ」と半泣きになっていた

 

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