第13話 チィ姉はメイドさんに首ったけ
「楓くん、今日僕の家に来ない?」
放送部の部室を出る時に悠斗が俺にそう言った
俺は突然のことにびっくりしながらも頷く
そして今、悠斗の家の門の前に立っているのだが・・・・
「・・・・・」
「やっぱりおいし〜、ふーちゃんも食べる?」
驚いている俺の横でさっき買ったコロッケを食べているチィ姉がいる
「これが悠斗の家なのか?」
「そうだよ。姉さんは違うところに住んでるけどね」
「私の家は普通だぞ」
悠斗は門の横にあるカメラに手を振ると門が自動で開き始めた
「ここからちょっと歩くけどごめんね」
「何をボーっとしているんだ?楓太くん」
「ふーちゃん、行こ〜」
テクテクと歩いていく3人の後ろをキョロキョロしながら俺は付いていく
門から入って、5分かそれぐらい歩くと門の前で見た大きな家はさらに大きくなった
そして、俺たち4人が中に入ると漫画で見たようなメイド服を着た人達などが並んでいた
「おかえりなさいませ、沙羅さま、悠斗さま」
「うん。ただいま」
「ああ」
沙羅さんと悠斗は当り前のように入っていくが俺とチィ姉は唖然としている
「どうしたんだ?千夏に楓太くん。置いていくぞ」
「ふ、ふーちゃん・・・」
チィ姉もさすがに驚いているのかキョロキョロ回りを見ている
「うん。すごいね・・・漫画だけだと思ってたよ・・・」
「うん・・・私も・・・こんなにメイド服が可愛いなんて」
「・・・は?」
「だってこのメイド服かわいいもん。これほしいなぁ」
「いや、驚くところそこじゃないでしょ・・・」
「うわ〜可愛い〜」
チィ姉はキラキラした目でメイドさんのところに行って話をしていた
「千夏先輩」
俺がそういうとさっきまでテンションが高かったチィ姉はピタッと止まり恨めしそうに俺の方を見てきた
「・・・ふーちゃん、まただ・・・意地悪・・」
「悠斗たちに置いていかれるよ、千夏先輩」
「うぅー!ふーちゃんの意地悪ー!さ〜ら〜」
「うわっ」
チィ姉はさっき食べ終わったコロッケを包んでいた紙を俺の顔目がけて投げて沙羅さんのところに走っていく
俺はチィ姉が投げてきた紙を拾ろうとすると、さっきチィ姉に話しかけられていたメイドさんが近づいてきた
「あの、その紙は私が捨てておきますので」
「あ、ありがとうございます」
「いえ、それでわ」
紙をメイドさんに渡して頭を下げ、俺は悠斗のところへ向かった
「楓太くん、千夏を泣かしてはダメだぞ、これは副部長命令だ」
「いや、沙羅さん部長でしょ・・・それに俺は楓です」
「それじゃ部長兼副部長命令だ」
沙羅さんはビシッと部長兼副部長らしい威厳で俺の方に指を指して言った。が、完全に顔が笑っているので威厳なんてもんはまったくない
「楓くん、僕ちょっと母さんのところに行ってくるよ」
「ああ」
「姉さん、楓くん達を僕の部屋まで案内しておいてよ」
「ああ。いいぞ」
悠斗は俺たちと別れて違う廊下へ走っていった
「沙羅さん、この家っていくつぐらい部屋があるんですか?」
「私は知らないな、この家に住んでないからなぁ。でも人はたくさんいるぞ」
「まぁそれはさっきの見たらわかりますけど・・・」
「ちなみに沙羅の家にはメイドさんなんていないよ。あんなに可愛いのにね〜」
さっきまで落ち込んでいたチィ姉がひょこっと俺の腕の間から顔を出してもったいないって感じで言ってきた
「私の家はそんなに大きくないからな」
「へ〜どこに住んでるんですか?」
「ん、あそこだ」
沙羅さんは立ち止まって窓から見えるマンションを指差した
「へ〜高級マンションじゃないですか」
「あんまり驚かないんだな。楓太くんは」
「まぁ・・・ここと比べれば普通かなって」
「ここは大きすぎる」
「ふーちゃん、騙されちゃダメだよ。あのマンションだからね」
「それでもここと比べたらマシでしょ。チィ姉」
「違うよ、ふーちゃん。あのマンション全部が沙羅の家なの」
「は?・・・・でもちゃんとあそこに住んでる人とかいるでしょ?」
俺もここの町で育っているため、高級マンション近くを通ることがあるが普通に出てくる人などを見たことがある
「あれは売ってるんだよ。元は私の家だ」
「はい?」
「高い所が好きでね、だからあれを立てて一番上に住んでいるんだ」
「もうね、沙羅の部屋とか凄い大きいよ」
けむりとなんとかは高い所が好き。という言葉があるがまさしく合っているだろう
この人は頭脳的じゃなくて、金銭感覚的にバカだった・・・
「ほら、早く行かないと間に合わない。行くぞ、千夏 楓太くん」
沙羅さんはそういうと再び歩き出して、悠斗の部屋へと案内してくれた