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クリスマスプレゼント。

まだ香苗が生まれる前のお話。

 チィ姉に告白してからしばらく経ったある天皇誕生日

 チィ姉は未だに大人気アイドルとして忙しい日々を送っていて、俺も大学生としての仕事も小説家としての仕事も頑張っていた


「ふーちゃん、ふーちゃん」

「なに」

「私ね、今ものすごく幸せなの!」

「そうなんだ」


 ものすごい笑顔で言われるとちょっと怖い…

 チィ姉はニコニコしながら俺の腕に絡みついてきて顔を肩に乗せてくる


「えへへ~」


 チィ姉は何が嬉しいのかニコニコしながら、時々不気味な笑いで俺を不安にさせてくる


「さっきから何がそんなに嬉しいの?」

「えへへ~、それはな・い・しょ」

「…あ、そう。んじゃ俺は小説書かないといけないから」

「え?あ、ちょ、ちょっと待ってよ。ふーちゃん」

「何?」

「あのね、その~…私ね……えへ…えへへへへへ」

「…チィ姉、怖い」


 まさか笑っている理由が分からない笑いがこんなに気持ち悪いモノだとは思わなかった

 それでもチィ姉は笑う…いや、にやけることを止めず、俺は部屋へと逃げる


「あ!?…もういいよ……明日、事務所に来てよ。ふーちゃん」


 チィ姉はそれだけ言うとドアから離れていく足音が聞こえる

 事務所って言うのは沙羅さんの所の事だけど…何があるんだろう…

 あそこに呼び出されて良いことなんて一度も無かったような気がする




「久しぶりだね、楓太くん」

「こんにちわ、沙羅さん」


 辺りを見回すとチィ姉の姿も無ければ美羽の姿も無い

 沙羅さん1人だけみたいだ。それが怖いんだけど…

 俺は掛けてくれと言われたソファに座って出されたコーヒーを飲む


「それで?楓太君がここにくるなんてどうしたんだい?」

「あれ?沙羅さんが呼んだんじゃないんですか?チィ姉が昨日来てほしいって」

「あ~…そうか、千夏は…いや、なんでもない。とりあえず、ゆっくりしていくといいよ。千夏ももう少しで帰ってくると思うから」

「分かりました。んじゃコンセント借りますね」


 パソコンの電源を入れて、小説を打っていく

 時間がある時にしておいた方が後が楽だから



「楓太くんは最近千夏とどうなんだい?」

「何がですか?」

「いや、付き合ってからどうなんだろうって思ってね」

「どうなんだって…言われても…ん~そうですね」


 どうなんだ…って言われても…

 改めて考えてみても何も変わってないような気がする

 何かにつけて抱きついてくるし、キスを迫ってくるし…何が変わったんだろう……あ~1つあった…

 でも言うもんじゃないだろう。


「…なるほどね。君たちの進展と言えばそんなものか」

「人の心読むの止めてください」

「読むも読まないも普通に考えたらそんぐらいだろう?」

「…まぁそうですけど」


 恥ずかしさのあまりミスタッチをしてしまい、自分がどれだけ動揺してるのかが分かってしまって、ものすごく恥ずかしい…

 俺はコーヒーで一旦休憩を取って、考えを切り替える


「そういえば、今日クリスマスイブですけどチィ姉の仕事はどうなんですか?」

「夜と明日は休みだ」

「へぇ、凄いですね。この時期ってテレビ局から呼びまくりでしょう?」

「ああ。でも、彼氏と過ごさせたいと言ってあげたよ」

「……普通は隠すもんなんですけどね、アイドルの彼氏情報は」

「そんなのマスコミ相手に隠すなんて無理だよ。今の千夏を見たら誰だって幸せそうなの分かるだろう?」

「あ~…すみません」

「いや、千夏が幸せなら私はそれでいいよ」


 沙羅さんは嬉しそうに笑うとかかってきた電話を取る

 そして、話が終わると「千夏が帰ってくるよ」と言ってくれた


「さて…これから忙しくなりそうだね、お互いに」

「そうですね…うるさくならなければいいけど」

「おそらく君が思っている以上に騒がしくなると思うよ」



 沙羅さんの予言は確実に当たり、チィ姉が帰ってくると美羽も一緒に帰ってきて事務所の中が騒がしくなる。

 そして、明日が休みを良いことにチィ姉は勝手にお酒を飲み始めた


「えへへへへ~」

「お兄ちゃん、お姉ちゃんが変になっちゃった…」

「はぁ…チィ姉、何飲んでんのさ…」

「ふぅぅ~ちゃぁぁ~ん」

「抱きつかない、キスしようとしない」

「うへへへへ」

「気持ち悪い笑い方しない。ほら、チィ姉こっちのオレンジジュース飲んで」

「口移ししてぇ」

「絶対しない」

「いいじゃないか、楓太君。もう君たち付き合ってるんだしそのぐらい」

「あ、私も見てみたい」

「美羽まで何言ってんの…って、それ本当にお酒だからダメだって」

「なんれよぉ」


 ダメだ…酔ったみたいになってる…

 昔、2人でお酒を飲んだことがあるけどあの時は本当に酔ったから酷かった…

 いきなり「暑い」とか言いだして脱ぎ出すわ、いきなり泣きだすわ、怒りだすわ…あれは本当に疲れた…


「ふーしゃん!ここにふわれ!」


 たぶん、座れと言いたいんだろう

 ここで抵抗しても無意味に近いため、素直にチィ姉の横に座る


「ふーひゃんはいつもいつもほうだ!わたひががんびゃってがんびゃってやっれるのにあにもいってくれない!わたひのことがたいへつじゃないのか!」


 …たぶん翻訳すると「ふーちゃんはいつもそうだ。私が頑張ってるのに何もしてくれない。私のことが大切じゃないのか」と言いたいんだと思うけど…確かにチィ姉に対してはあまり何もしてないけど、それは俺も忙しいからだ。と言っても怒られるだけだからとりあえず頭を撫でる


「そうだね、チィ姉はホント頑張り屋さん」

「えへへへ~」


 子供のように頭を撫でられて喜んでいるチィ姉を見ているとちょっと可愛いと思ってしまった

 やっぱり付き合ってから俺のチィ姉の見方が変わってきているらしい


「はぁぁ…すみません。連れて帰ります」

「ああ。明日は休みだから仲良くな」

「…ニヤニヤしながら言わないでください。美羽の前で」

「ん?お兄ちゃん何?」

「…なんでもない。んじゃ美羽、正月は家でな」

「うん。じゃあね」

「ああ。ほら、チィ姉。帰るよ」

「うぃ~…」


 チィ姉を背中に乗せて事務所を出る

 あそこにいたら俺が玩具になってしまう。女3人に男1人では太刀打ちできないし…というか、沙羅さんには勝てないし…

 背中に乗せたチィ姉は気持ちよさそうに人の肩に顔を置いて「えへへ~」と笑っている


「チィ姉、大丈夫?」

「だいひょうれすよぉ」

「はぁぁ……もう酔った振りは良いよ。バレてるから」

「……わかってた?」


 絶対飲まないって約束したのにチィ姉がそれを破るわけがない

 それに口からお酒の匂いもしないし、顔もちょっとしか赤くない


「なんであんな酔った振りなんてしたの?」

「ん~…ちょっと2人になりたかったんだ」

「2人になりたいなら言えばよかったんじゃない?」

「…ちょっと恥ずかしかったのかなぁ」

「何を今更……で?なんで2人になりたかったの?」

「やっぱりこういう話って2人の方がいいかなって」

「こういう話って?」

「えっと…その…怒らない?」

「怒らない」

「ホント?」

「ほんとにほんと」

「…あのね…………の」

「え?なんて?」


 あまりにも小さすぎて聞き取れなかった

 チィ姉の顔を見てみるとさっきより真っ赤になっていて本当にお酒を飲んだんじゃないか?ってぐらい赤くなっている


「…あのね、ふーちゃん」

「ん?」

「その…えっと……そのね…あ、あ」

「あ?」

「……あ……ん…でき…った…」

「はい?」


 またよく聞き取れなかった…

 俺はチィ姉を一旦下ろして、チィ姉の目の前に立つ。

 チィ姉の顔はもう真っ赤っかで目も涙目になっていて親に怒られる子供のような感じだったけど、もう一回言ってもらう


「ごめん…聞き取れなかった。もう1回言って」

「…私の…お腹の…中に…赤ちゃんできちゃった」

「………ほんと?」

「うん……最近遅れてるなぁって思って確かめてみたら…で、でも!まだ下ろせるから!」

「…はぁ、チィ姉は下ろしたいの?」

「………」


チィ姉は口を固く閉じて俯いてしまった

チィ姉は俺がなんて言うのか不安で仕方がないみたいんだけど、答えは1つしかない


「だったら産もうよ。せっかく俺たちに赤ちゃんできたんだから」

「…いいの?」

「うん。こんな俺だけど良い父親になるように頑張るよ」

「ふぅちゃぁぁん」

「っとと。チィ姉もお母さんになるんだから明日から泣いたらダメだよ?」

「今日はいい?」

「うん。今はまだ俺の彼女」

「ふぅちゃん…ギュってして」

「いいよ」


 チィ姉を包むように抱きしめると小さく泣き始めた

 たぶんずっと怖かったんだろう…だから最近変なテンションで気を紛らわせていた

 そんなチィ姉に気付けなかった自分が情けない…でも、そんなことはもう言ってられない

 俺は父親になる。1人の子供を持つ父親に。

 今、俺の腕の中にはチィ姉ともう1人いるんだ…

 そう思うと自然と笑みがこぼれて、チィ姉のお腹に手を当てる


「チィ姉、一緒に頑張ろうね」

「うん、私とふーちゃんとこの子と一緒に」


これからは3人で一緒に歩いていく

これからどんなことが起きてもチィ姉とこの子となら乗り越えられる

だって、今までずっとあのチィ姉と一緒に歩んできたんだから。

こんばんわ。

もうやらないと言っておきながらやってしまいましたね…まぁクリスマスだから許してください…

そして、これは私からこの小説をお気に入りにしてくださっている皆様へのクリスマスプレゼントです。本当に感謝いっぱいの気持ちで書かせてもらいました。

そして、これがこの「才色兼備な姉と普通な俺」の最後の小説更新にさせてもらいます。(これは絶対。もちろん誤字脱字訂正などはするつもりです。時間が出来次第)



今までたくさんのコメント・お気に入り登録ありがとうございました。

それでは良いクリスマス・年末を。


メリークリスマス。



               2010/12/25 作者より

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