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第36話 高峯学園

 

 朝起きると、いつもと違う天井だった

 俺はまだ寝ボケているのかと思って、しばらくボケ~としていると、頭が働き始めてきた


「あ~・・・そっか。戻ってたんだ」


 俺は少し重い目を擦り、時計を見ると13時を指していた

 ベッドの方は綺麗に布団が畳んでおり、おそらくチィ姉はかなり前に起きたんだろう

 俺は敷布団をタンスの中に戻してから、リビングに向かうと母さんがコーヒーを飲んでいた


「お昼はもう無いわよ」

「ふぁぁぁ・・・別にいいよ。あれ?チィ姉は?」

「千夏ちゃんなら、さっき出かけるとか言って出てったわよ」

「大丈夫なのかな?」

「さぁ。一応帽子は被ってたから大丈夫なんじゃない?心配なら探してきたら?」

「ん~、そうしようかな」

「ふ~ん・・・」

「何?」


 母さんはニヤニヤしながら俺の方を見ながらコーヒーを1口飲む


「やけに千夏ちゃんの心配するなぁって」

「するでしょ。今大変なんだから」

「それだけ?」

「はぁ・・・何言わせたいのさ・・・。んじゃ行ってくるから」

「はいはい~」


 まだニヤニヤしている母さんを置いて、俺は財布と携帯を持ってガレージに向かう

 ガレージの中には昔使っていたママチャリが置いており、それに乗って、とりあえず昼ごはんを買うためにコンビニまで向かう


 サンドウィッチと適当に飲み物を買ってから、どこに行くわけでもなく自転車に乗り走らせる



「うわぁ・・・すんごい久しぶりだなぁ」


 自転車を止めて、大きな建物を見上げる

 そこは俺が3年間通った「高峯学園」だ

 日曜日なのに部活の子たちが来ているのか、門が開いている

 俺はなんとなく中に入って行くと、用務員室の所へ行く


「すみません。ここの卒業生なんですけど中入っていいですか?」

「ん?あ~、九十九くんかな?」

「え、あ、はい」


 用務員の人は、少し白髪の生えているおじさんで、俺が居た時の人とは違う

 用務員さんは一度奥に行き、すぐに戻ってきた


「高峯さんから来るかもしれないって言われててね。一応、これ持っててもらえるかな?」


 用務員さんは証明書みたいなものを渡してきて、それを受け取る


「帰る時はまたここに来てね」

「はい、ありがとうございます」


 俺は頭を下げて、スリッパに履き替えて学校の中に入っていく

 中は文化系の部活は来ていないのか、静かでグラウンドから部活の掛け声などが聞こえてくる


 ここで3年間過ごしたが、一番記憶にあるのはやっぱりチィ姉といた時間かもしれない

 俺がこの学校に入れたのはチィ姉のおかげだし、ここの学校で充実した3年間を送れたのもチィ姉のおかげだ

 チィ姉が沙羅さんや悠斗と出会わせてくれたし、ラジオ放送をしたおかげで友達も増えた

 チィ姉は途中でいなくなったけど、不思議と悲しさは無かった

 いや、悲しさはあった。だけど、学校の友達もいたし、勉強も進むのが早かったから悲しむ暇なんて無かったのかもしれない

 だけど、家に帰るとやっぱりチィ姉のいない静かな家は違和感があった。

 母さんもチィ姉が家を出ていってから、言葉にはしていなかったが、ネタ集めという旅行に行く回数も増えていた気がする

 それだけ、チィ姉は俺や母さんにとって大きい存在だったんだろう。

 でも、俺はその時、なるべく気付かないように動いて、大学生になり、チィ姉がどんどん有名になっていくのを見ていると、次第に俺の中にある気付いてはいけない物が大きくなり、気付かずにはいられない大きさまで大きくなってしまった

 その大きさに俺自身も驚いて、制御できなかった

 だから、チィ姉と一旦距離を置こうとした。

 でも、そんなのは逆効果でチィ姉を苦しませて、沙羅さんの思い通りに動かされて・・・


「はぁ・・・ここには来てないか・・・まぁそりゃそうだよな」


 放送部の部室でもあった放送部の中に入ると何も変わっていない

 だけど、本当の部室であった奥の部屋は硬く閉じられている

 まぁ普通あんな部屋があるなんて知ったら、ほとんどの生徒が利用する可能性もあるからなんだろう


 俺はこれ以上ここにいても不審者でしかないので、事務室へ向かう

 ドアの近くに行くと、事務員さんが出てきた


「おや、もういいのかい?」

「はい。ありがとうございました」


 俺はカードを事務員さんに渡し、頭を下げる

 そして、自転車を走らせた



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