第35話 2人が過ごした家
車が走ってから約3時間少し経った
時間はもう11時を過ぎ、辺りは真っ暗だ
「そろそろ着くよ」
沙羅さんは3時間ぶっ通しで運転していて疲れているはずなのに、微塵もそんな雰囲気を出さずに運転してくれている
「チィ姉はここにいるんですか?」
「ああ。明日は日曜で仕事が休みだから、ここに来たいと言ったんだよ」
今走っている場所は俺の実家がある所で、チィ姉と初めて会った所で、一番長く過ごした場所だ
そして、少し走っていると車は俺の家の前で止まる
「着いたよ」
「・・・ありがとうございました。わざわざこんな所まで運転してもらって」
「お礼なんていらないよ。千夏を元気にしてくれればいい」
「すみません」
「それじゃ私は事務所で吉報を待ってるよ」
「できるだけ頑張ります」
俺は笑いながら車を出て、沙羅さんは窓から手を出して、走っていった
本当にあの人には高校からお世話になってしまってる
俺は車が見えなくなるまで頭を下げ、家のインターホンを押す
「おかえり、楓」
「ただいま。チィ姉は?」
「部屋でたぶん寝てるんじゃない?疲れてたから。今日は静かに寝かせてあげなさい」
俺は家の中に入って、リビングのソファに座る
すると、母さんはコーヒーを渡してきた
「コーヒー作れるようになったの?」
「元から作れたけど、あんた達がしてくれたからやらなかっただけよ」
「そっか。料理は?」
「食べてみる?」
母さんはニヤっと笑いながら言ってくる
多分、昔と変わらないんだろう・・・
「腹減ってるけど遠慮しとく」
「そっ」
それからしばらく2人でTVを見ていると12時近くになっていた
俺は昼から何も食べてないが、何か買いに行く気にもなれず、お風呂に入って、自分の部屋へと向かう
部屋の中は、俺が出てった時と変わっておらず、ほとんどの物が綺麗な状態で残っている
おそらく、母さんが定期的に掃除でもしてくれていたんだろう
そして、俺のベッドの上には予想通り、チィ姉が小さく丸まって規則正しい寝息で、TVに映っていた顔よりは少しだけ安心しているような顔で寝ている
俺は起こさないように静かにタンスの中にある敷布団を敷いて、久々の部屋の天井を見ながら大きな欠伸をした