第33話 自分にできること。
「千夏さん!相手の方とはどういう関係なんですか!!!」
「質問に答えてくださいよ!千夏さん!!」
TVの中でチィ姉はまだマスコミの中心に居た
それほど注目を浴びていたんだから当然と言えば当然なのかもしれない
あのニュースが報道されてからもう2週間が経つ
そろそろ落ち着いてきても良い頃だとは思うのだが、マスコミは千夏に付きっきりの状態で相手との関係を聞こうとしていた
「お姉ちゃん大変だね・・・」
久しぶりに美羽が俺の家に来て、少し遅めの昼ごはんを一緒に食べながらTVを見る
TVではまた千夏のことで話していた
「さっき私がこのマンションに入ろうとしたらマスコミが取材してきたよ。
同じ事務所だけど、何か知らないか?って」
「そっか」
「もちろん、知りません。って言ったけどね」
美羽はチャーハンを口に運んでもぐもぐと食べながら話題を変えて話し始めた
俺は耳を傾けながら聞いていたが、ほとんどTVに映るチィ姉の顔が気になっていた
「でね・・・って、お兄ちゃん聞いてる?」
「ん?真美先輩がなんかメールで話してくるんだろ?」
「そうだけど・・・お兄ちゃん、TVばっかり見てるよ」
美羽は頬を膨らませながら俺を睨んできたが、すぐに「はぁぁ」と深いため息を吐いた
そして、真剣な目で見てくる
「お兄ちゃん、そろそろ自分の気持ちに素直にならない?」
「え?」
「なんで社長さんが動いてないのか不思議に思ったこと無い?」
「・・・」
確かに高峯の名を使えば、こんな報道すぐに消せる
俺もなんでその力を使わないのか不思議だとは思っていたが、沙羅さんはそういうのを嫌っているからという理由で納得していた
「社長さんはお姉ちゃんが苦しんでるのを楽しんでみてるわけじゃないよ?
毎日、お姉ちゃんと話して励ましたりしてて、社長さんも苦しんでる。それなのに高峯の力は使わないって私と小牧さんに言ったの」
「・・・」
「社長さんから言わないでくれって言われてたけど、もう我慢できないよ・・・
お姉ちゃんを助けられるのはお兄ちゃんだけだよ?
社長さんでも無い、悠斗さんでも無い、小牧さんでも無い、私でも無い・・・お兄ちゃん1人だけなんだよ?
こんなことホントは言いたくない・・・でも、これ以上苦しむお姉ちゃん見てるのは辛いの・・・
お兄ちゃんのこと好きだけど、お姉ちゃんの事も好きなの・・・」
「美羽・・・」
「お姉ちゃんを助けてあげてよ・・・」
美羽は涙を流しながら俺の方を見て、訴える
でも、俺なんかに何ができるんだろう・・・
TVに出て、千夏の彼氏は俺です!と言ったところで、信じられるわけが無い
俺自身は世間に知られていないんだから
昼飯を終えたあと、美羽も俺も何も話さず、ただ時間だけが進んでいく
そして、16時になる頃に美羽が家に帰ると言って、小牧さんの家に帰った
俺は夕食にはまだまだ早いので、パソコンに電源を入れ、仕事をする
仕事を始めてからたぶん2時間ぐらい経ったと思う
携帯がピカピカと光っているのに気が付いて、開くと母さんから着信があった
俺はまず母さんに電話をするとすぐに出る
「どうかしたの?母さん」
「千夏ちゃんのことでね。久々にTV見たら大変なことになってるから」
「あ~・・・」
「楓、あんたでしょ?あの写真」
「・・・」
「・・・まぁ色々言いたいことがあるけど、あんたの母親としてまず一言。
自分のしたいことをしなさい。千夏ちゃんは千夏ちゃん、楓は楓だから」
「わかってるよ。そんなこと」
「そっ。それじゃさっさと行動しなさい。千夏ちゃんをこれ以上苦しめるな」
「行動するって言ったってどうすれば良いか・・・」
「まぁそういうのは自分で考えなさい。楓だってもう大人なんだから」
「・・・」
「とりあえず私から言えることは、行動しないと何も起きないってことね」
「うん・・・」
「千夏ちゃんも相当参ってるみたいだから、行動するならなるべく早くしなさい。それじゃ頑張りなさいな」
最後にそれだけ言うと電話は切れた
俺は電話の画面を見ながら、しばらく考え事をまとめてチィ姉に電話をかけることにした