第26話 策士?
これは喜ぶべきなのか悲しむべきなのか、どっちなんだろう・・・
雑誌のインタビューが思った以上に早く終わってしまい、ドラマの撮影まで30分の間ができてしまった
たぶん、沙羅さんが意図的に作ったんだろう
「どうする?少し時間が開いたけど寝ておく?時間になったら起こしてあげるよ」
「ん~・・・」
チィ姉はほんの少しだけ考える
そして、何か思いついたのかパッっと明るい顔になったが、すぐに元の顔に戻した
「・・・・」
「はぁ・・・別に俺の前で千夏演じなくていいよ。チィ姉は・・・俺のお姉ちゃんなんだから、我が儘言っても罰は当たらないから」
「・・・・それじゃ、ちょっとだけお買い物に行きたい」
「いいよ。何買うの?」
「その・・・紅葉の小説が載ってるやつ」
「俺の?そんなの俺があげるよ?」
「ううん、自分で買いたいんだ」
チィ姉は俺の方をじっと見てきた
たぶん、チィ姉が言ってるのは俺が定期的に書かせてもらっている短編小説の雑誌のことだろう
俺は少し危険があると思って断ろうとしたが、チィ姉の上目目線に見られて横には触れず、縦に頷いてしまった
チィ姉はニコッと笑って帽子とマスクとサングラスとカツラを付け始める
「何それ」
「変装」
「・・・サングラス外して、カツラいらない」
「え?」
「怪しいし余計目立つ。はい、このメガネ掛けとけばいいよ」
俺は自分のカバンの中から黒フレームのメガネを出し、チィ姉に渡す
「あれ?メガネなんて掛けてるの?」
「普段はコンタクトだよ。パソコン扱うときに掛けるんだよ」
「へぇ~・・・そうなんだ」
チィ姉はそう言ってメガネを掛ける
見た感じではたぶん千夏だとは思わないだろう。まぁよく見れば千夏だからバレるかもしれないけど、その時はその時だ
俺とチィ姉は車をドラマの撮影現場に置いて、近くの本屋さんへと歩いた