第15話 実家
こっちに帰ってきたのは久々だ
俺はできるだけ早く帰るために新幹線に乗って実家に戻った
「ぁ・・・母さん」
「何?あんた」
実家の中に入ると母さんが仁王立ちで俺の方を睨んできていた
その反応からしてチィ姉がここにいるのは間違いない
「あんた、千夏ちゃんに会いに来たの?」
「うん」
「・・・楓の部屋にいるわ」
「ありがとう」
母さんに言われた通り、俺の部屋の中に入ると布団の引かれていないベッドの上に毛布に包まったモノがじーっと止まっている
俺はベッドの近くに座ると、毛布の隙間からチィ姉の眼だけがこっちを捉えた
「チィ姉、帰ろう」
「・・・・」
「これ以上俺たちのことでみんなに迷惑かけるの止めようよ」
「・・・・」
「ね?」
「・・・・」
毛布の隙間から見えるチィ姉の目は何の感情も無いって感じでただこっちを見てくると言った感じだ
「はぁ・・・この前、俺が女の人背負ってたところ見たらしいね。それで沙羅さんに相談したんだって?俺に彼女ができたからどうすればいい?って」
「・・・」
「チィ姉がどう思おうと勝手だけど、あれはただの先輩だから。恋愛感情なんて無いし、お酒飲んでフラフラな状態の人を1人で帰らす方がおかしいでしょ」
「・・・」
「・・・俺ね、チィ姉と喧嘩したあとに美羽に怒られたんだよ。いい加減、チィ姉と向き合ってあげなよって。確かに美羽と暮らし始めた時からチィ姉とはあまり話さなくなったし、チィ姉も仕事で大変そうだった。でも、よくよく考えてみるとチィ姉はちょっと空いた時間にも俺に電話しては遊ぼうって言ってきてたね。俺はそれを美羽が、とか言って断り続けてた」
「・・・」
「正直、有名になったチィ姉と会うのが怖かったんだよ。俺は小説を書いているとはいえ、顔を知られていない普通の人、チィ姉は日本中で知らない人はいないほどの人。どう考えても釣り合わないよ・・・だから美羽を理由に逃げてた」
でも、そのことが美羽の心に傷を付けていた。
美羽はそんな俺に対しても優しくしてくれてチィ姉と向き合えと言ってくれた
「でも、良く考えてみればチィ姉は有名人の前に俺のお姉ちゃん。血は繋がってないけど5歳の時からずっといる俺のお姉ちゃんだったね。
沙羅さんには俺から謝っておくから気持ちが落ち着いたら帰っておいで、俺の家に。おいしいご飯作って待ってるから」
笑いかけながら毛布の上からチィ姉の頭を撫でて、部屋を後にする
これでチィ姉が帰ってこなかったら来なかったで別にいい
ここに居続けて母さんと一緒に暮らすなら、俺が時々帰ってきて、高校の時と同じように遊べばいい
芸能界に戻るか、戻らないかはチィ姉次第だから
俺はリビングにいる母さんの所に行って帰ることを言って玄関に向かう
「千夏ちゃんは一緒に帰らなくていいの?」
「うん、どうするかはチィ姉が決めることだから」
「そう。まぁ頑張んなさい」
「うん、たまに帰ってくるから、母さんも気が向いたら家に来て」
「気が向いたらね」
「じゃ」
俺は実家を出て、携帯で新幹線の席予約をしながら駅に向かって家を後にした。
ついに第1章と2章を合わせて100話になりました。
ここまで続くのも読者様のおかげです。ありがとうございます。
これからも頑張っていくのでよろしくお願いします。