第1話 楓と書いて“ふう”と読みます
初めての方は、はじめまして。
「昨日も今日も、そして明日も・・・」から来てくださっている方、おはこんばんちわ。
「昨日も今日も、そして明日も・・・」を連載している途中が、こっそりこっちの方も連載し始めました。
目標は「昨日も今日も、そして明日も・・・」と交互に更新することです。
どうぞ、よろしくお願いします
俺は九十九 楓
普通は楓の部分は“かえで”と読むのだが、親が自分の子供には“楓”という漢字をどうしても使いたかったらしく男の俺が生まれても“ふう”という読み方にし、出生届けを出した
別に嫌なわけではないのだが、初対面の人には必ずと言っていいほど“かえで”と読まれ、「女の子みたいな名前だね」と言われた
そして、今 俺はある高校の掲示板に掲示された大きな紙と自分の持っている小さな紙を見比べながら必死にある数字を探していた
周りからは落胆の顔をした者、あるいは友達と抱き合い喜びあう者たちがいる
その中に俺もいるのだが・・・・
「まだぁ〜」
「うるさいなぁ。別に一緒に来てなんて言ってないんだから、どっかに行けばいいじゃん」
「嫌だよ〜楓の合格したとこ見に来てるんだから」
「だからプレッシャーになる言葉やめてよ・・・あ・・・・あったーーー!」
後ろから重みのある言葉を浴びせられ、心が折れそうになったが、自分の目の前に探していた数字が見つかり、俺は初めて神様に感謝をした
そして、1人で喜んでいると後ろから飛びついてくる人がいた
「ちょ、ちょっと止めろって恥ずかしいだろ!」
「だって!ふーちゃんの合格だよ!」
「だからってこんなたくさん人がいるところで・・・それにふーちゃん言うの止めてって」
周りの人は俺たちのほうをマジマジと見ていて、かなり恥ずかしい
今すぐその場から離れたいのだが抱きつかれているため逃げ出すにも逃げ出せなかった
「ちょっと離れてよ。恥ずかしい、それにいいの?バレるよ?」
「大丈夫、私は良いもん」
「俺が嫌なの。だから離れてよ」
「もぉ、しょうがないなぁ・・・それじゃ続きは家の中でね」
その女性は俺の頬にキスをして、家に帰っていった
「ったくも・・・だから一緒に来るの嫌だったんだ・・・うっ・・・」
その場の人達から興味シンシンな目で見られ、どこからかコソコソと声が聞こえる
俺はあまりの恥ずかしさに走ってその場から離れた
そのあと俺は通っている中学校に向かって歩き、そして職員室の中に入る
すると、担任の先生は喜んでくれ、周りの先生も一緒に喜んでくれた
「そうか〜九十九があの高峯学園に受かるとはなぁ。まぁ元から成績がよかったからちょっと努力すれば行けたんだけどな。だけど急にどうしてやる気になったんだ?」
「ちょっと姉の影響がありまして・・・」
「そうなのか?まぁおめでとう」
「はい。ありがとうございます」
俺が受かった高峯学園はここから少し離れたところにある有名進学校だ
姉もそこにトップの成績で合格し、通っている
俺は別に行きたい高校がなかったので、姉が通っている高校に冗談で行きたいと姉に言うと本気で喜び、本格的に受験勉強を見られ、そして合格となったのだ
「それじゃ俺、家に帰ります」
「おぅ。おめでとう」
「ありがとうございます。失礼しました〜」
俺は職員室から出て、家に向かう
そして家に着いてドアを開けるとクラッカーの中身が大きな音と共に俺に向けて飛んできた
「ふーちゃん!合格おめでとー!!」
「おめでとー!」
「ありがと。でも何遊んでんの?」
さっき俺に向けられたクラッカーの量にしては廊下が散らかっていてその状況は“俺が家に帰るまでクラッカーで遊んでました”と語っていた
「あ、遊んでないよ。練習だよ」
「クラッカーなんかに練習なんていらないでしょ・・・・」
「えへへ、だってふーちゃんの合格祝いだよ?ね、お母さま」
「そうそう。楓がまさか、千夏ちゃんと同じ高校に行くなんてね。運命は逆らえないって感じ?」
「あははは〜まだ早いですよ〜」
「あら?でも楓が18になったら結婚できるのよ?」
「も〜ダメですって、その話まだ」
「・・・・はぁ・・・」
俺の前では俺の母とチィ姉が盛り上がっている
“千夏ちゃん、チィ姉”とは俺の姉だ
名前は星井 千夏
苗字が違うのは、チィ姉は本当の姉ではないから
彼女の両親は宇宙開発の仕事をしている人で、ものすごく頭がよく仕事の中でも偉い人らしい
チィ姉は俺が5歳のときに、チィ姉の両親がアメリカへ栄転する際に色々あって俺の両親が預かった
その時、姉は6歳。だが、親の遺伝子を見事に受け継いでおり、天才だった
そして、そのまま俺の親によって大切に育てられ、料理、勉学、容姿すべてにおいて、ほぼ完璧な人になっていった
「あのさ、合格祝いしてもらえるのは嬉しいけど、俺疲れてるからちょっと寝るね」
「それじゃ夕飯できたら呼ぶね」
「うん。よろしく」
廊下を片付け、自分の部屋に行く
料理を作るのは姉の仕事で、俺の母は手伝いって形だ
というか、母の作った料理など食えたものではない・・・
俺は受験のプレッシャーから解き放たれ、今までの疲れを取るために布団の中に入り、寝ることにした