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お嬢様は何度でも死亡フラグを折る  作者: 蓮葉
お嬢様は学園祭準備で巻き込まれる
55/81

お嬢様は王女に問われる

 「ふーん、それが不満なのね」

 「不満というわけではありません」

 「じゃあ、なんなのよ?」

 「……」


 正直、ディールが過去のエリーゼの言動ばかり持ち上げることに対する『何かイヤな感じ』をそこまでつっこんで考えたことはなかった。

 しかし、王女に問われて何も答えないわけにはいかない。


 「身の置き所がないというか……そんなことをいつまでも、今更、後生大事に、感謝しなくてもいいというか……そんな気持ちだと思います」

 「ふぅん、そんな真面目至極に考えなくてもいいと思うんだけど」

 「そうでしょうか」


 「そうよ。だって、勝手に相手が恩義を感じてくれちゃってるんでしょ? しかも相手は超有能! ならば利用するのがご令嬢の嗜みってものでしょう」


 「その、姫、言い方というものが……」

 あまりにもあけすけすぎる。エリーゼは、他に誰かがいるはずもないのに、思わずあたりを見回してしまった。

 「でも、本当のことでしょうに。あなただって、むしろーー他人に興味のないあなたこそ、結構、そこのところは割り切っているように思うのだけれど?」

 他人に興味がないない言わないでほしい、とエリーゼは思った。いや、今までの自分の態度が悪いのだが……。

 そもそも、エリーゼは他人に興味がないわけではない。

 ーーただ、親しくなることを避けていただけだ。

 いずれ、修道院へと入る身ーーいや、これは建前だ。


 もしエリーゼの能力が公になれば、エリーゼは間違いなく疎まれるだろう。絶対に味方となってくれる相手など、いない……そう、エリーゼは覚悟している。


 両親はできる限り守ってくれるだろう。今もそうだ。

 ーーしかし、シュッツナムの家を潰すわけにはいかない。弟妹だけではなく、領地のすべての人たちに対して、領主である彼らは責任があるのだ。最後の最後で、エリーゼを選ないのが、彼らの立場だ。

 師匠であるツェツェーリエは、契約により他言はしないだろう。

 ーーしかし、当然ながら味方ではない。


 ディールは……。

 いや、ディールだって、自分の人生があるのだ。エリーゼのためにすべてを敵に回すわけがないし、そんなことがあってはならない。


 結局、自分の心を守るため、単なる保身でしかない。

 これ以上、嫌われて辛い相手を作るのが、イヤなのだ。


 「それを言うならば、昔の、恥ずかしい自分の言動を思い出させるのがつらい……そんな経験は、姫にはございませんか?」

 「……んぐぐ」

 苦し紛れの反論に、しかし、リューネ姫は意外にも唸った。

 「そ、そうね……誰にだって、そんなことはあるのかも……。理性じゃないわね、そういうの、そうね」

 「何か、思い当たる節でも……」

 「あーもう! 誰だってあるでしょうそんなもの。わたしにだってあるわ! いっぱいあるわ!」

 リューネ姫は何を思い出したのか、エリーゼの言葉を遮った。

 聞いてみたい気がしたが、質問するそぶりすら不興を買うだろう。エリーゼは安全策をとって黙り……。


 「なぜ、そこで黙るの。わたしがこれだけわかりやすくコミュニケーションをとろうとしてるんだから、聞きなさいよ!」

 リューネ姫がいらだった声をあげた。

 「……聞いてほしかったのですか?!」

 「違うわよ! 聞いたら、無礼者と一喝するところよ」

 「……何をお望みですか?」

 「あなたねぇ……」

 リューネ姫は深々と嘆息すると、にやりと笑った。

 「本当に、まだまだね。わたしが色々と、そう、色々と教えてあげなければならないようね」

 背筋がゾクゾクとする。何を教えるというのだろうか。

 「……ありがとうございます」

 「違う!」

 「何がですか?!」

 「そこで礼を言わない!」

 「……どうすればいいのですか?!」

 エリーゼが思わず叫ぶと、リューネ姫ははあ、とこれみよがしにため息をついた。


 「あなたって、本当だめね。私がもっともっと指導してあげないと」

 「……ありがとうございます」

 「今のは不服そうなのがわかるわ。おもしろいから及第点にしてあげる!」


 リューネ姫はこんなにもメンドクサい人だっただろうか?

 心を許して距離が近くなったからかもしれないーーと思いつつ、それが嬉しいことなのか、嬉しくないことなのか、エリーゼはにわかには決めかねていた。

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