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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第三章
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いざ、上層へ

更新遅れて、すみません_(:3 」∠)_

なんとか生きてます_(:3 」∠)_

 翌朝、1つ目の鐘と共に透が目覚めた。


「……んん?こ、こは?」

「透くん、おはよう。ここは仮眠室よ」


 極力優し気な声色で、ゆっくりと透へと話しかける。


 透が意識を失う前の記憶を探る。

 リアの方へ視線を向けると、服にも素肌にも黒ずんだ血が付着していた。


 どうして、と問おうとして、昨日の光景がフラッシュバックしてきた。

 恨みの籠った瞳に、耳に残る叫び声、そして視界を覆いつくす紅。


「あ、あ、あぁアッ。お、おれッ!?俺のせいでッッ!」

「落ち着いて、大丈夫、大丈夫だから」


 取り乱して震え出した透の背中をゆっくりと撫でて、ひたすらに大丈夫と繰り返す。


(こんな時にツキミちゃんがいてくれたら、空気を変えてくれるのに……)


 リアは己の無力さを嘆きながらも、今自分にできる事を続ける。


「はぁッ……はぁッ……、ごめ、ん」

「ううん、大丈夫だよ」


 透に少し落ち着きが戻り、瞳に力が宿ってきた。

 天井を見上げ、更にその上に思いをはせる。


「テディが、また……。いかなくちゃ……」


 呟くように言葉を漏らし、胸に手を当てて大きく深呼吸をする。

 透の心が壊れそうになったのを察知し、テディが再び魔力の繋がりを通して励ましていた。


 全てを助ける事はできない、優先順位を決めなければいけない、わかっていたようで全くわかっていなかった事。

 どんな状況でも助ければ感謝される、そんな思い込みを壊した体験。


 この国に来てからしんどくて諦めたい事ばかりに直面しているが、そんな透の心をなんとか維持させているのは、魔力の繋がりから自身も辛いという気持ちが伝わってくるにも関わらず、透を励まし慰め気遣うテディの存在が大きい。

 勿論そばで支えるリアや、恋人(?)のツキミを助けたいという気持ちも透の中にあるのだが、心がバラバラになりそうな時に優しく包み込んでくれたテディを思う気持ちが、透を奮い立たせる原動力となる。


「いつまでも、生まれたばかりのテディに慰められてるばかりじゃ、しょーがねえよな」

「そうね!サクッと取り戻して、美味しい物いっぱい食べさせてあげましょうっ!」


 立ち上がって部屋を出ようとした時、ぐうううぅぅぅ、という音が響いた。

 バッと顔を背けるリアをちらっと横目で確認して、透は再びベッドへと腰掛ける。


「そういえば飯食ってねえよな、用意するついでに服とかも着替えるか?」

「えっ、あっ、ええ、そうしようかしらねっ」


 収納魔術からリアの着替えと透の着替えを出し、部屋の隅と対角の隅にパーテーションを具現化させる。


「どうせなら上からお湯を降らせるから、軽く洗っちまおうか。そのままじゃ気持ち悪いだろ?」

「そうさせてもらえると嬉しいわ」


 ただの部屋を水浸しにするのに少し抵抗を覚えたが、仮眠室のベッドや床に付着した血を見て、今更かと思い直しパーテーションの内側にお湯を降らせる。


 簡易シャワーを終わらせ、食事をとった2人は、いよいよ上層階へ行く為に部屋を出た。

 主人が言ってた通りに、庭の銅像にあるスイッチを押していく。


 最後のスイッチを押し、離れの扉を開けると、そこは本館に負けず劣らずな華美な空間が広がっていた。


「なんかさっきのお屋敷よりも、どことなくセンスいい感じがするわね」


 本館とは違い、飾ってある宝飾品はどれも錆びついておらず、手入れがされていないにも関わらず輝きを保っている。

 透が興味本位で鑑定をすると、置いてあるものはどれも本物の最高級品と表示された。

 中には宝飾品の姿をした魔術具も混じっている。


「向こうとは違って、全部本物みたいだ。もしかしたら、上に続くこの場所こそ、この階で1番重要なのかもしれないな」


 見渡す限り扉は1つしかなく、開けると広々とした応接室があった。

 応接室の中には扉が2つあり、そのうちの1つは今まで見掛けたどの扉よりも重厚感があり、数多の宝石がはめられて、煌いている。


 扉は引くだけで簡単に開いたが、その先は何もない真っ白な小部屋だった。

 注意をしながら中へと入ると、門をくぐって最初に入れられた小部屋のように、部屋の壁からレーザーのような光が発せられ2人を包み込む。


「また転移させられるって事かしら?」

「多分そうだろう。効果があるのかはわかんないけど、念のため別の所へ行かないように、その、手を繋いでも……?」


 透は遠慮がちに手を差し出しながら、反応を伺う。

 リアは透の心の内を知ってか知らずか、特に深く考える素振りを見せずに快諾した。


(ツキミ、ごめんっ!これは決して浮気というわけじゃないんだ!ただ、また仲間と離れると大変だから、仕方なく……!わかってくれるよな!?)


 心の中でまだ1度もちゃんと手を繋いだことの無い、恋人であるツキミへと必死の謝罪と言い訳をする。


 最初しかお互いに好きと言い合う事も無く、甘い雰囲気になる事も無い。

 そんな関係を恋人だと言えるのかや、そもそもツキミが今も透を()()として認識しているのかどうかは、また別問題なのだが、透はそこまで思考が回ってはいない。


 一方リアは、この繋いだ手がツキミやテディだったら、もふもふと肉球のぷにぷにと両方一気に触れれたのに、と少し残念がっては、2匹と手を繋いだ事を妄想してニヤついていた。


 2人繋いだ手のひらに、どちらの物かわからない汗がじんわりと出てくる頃になると、いつの間にか周囲に展開していた幾何学模様は収まり、足元に黄色い光を放つ魔術陣が現れ2人を転移させた。




  ◆◇◆




「むむっ!今なんか、透の邪念を感じた気がするのだっ!きっと、あたしに隠れて美味しい物を食べてるに違いないのだ」

「無駄口を叩くくらいには余裕なようですね。負荷を上げましょうか」


 そう言って、バインダーを手にした研究員は手を上げる。

 奥にいた別の研究員が機械を操作すると、ツキミの息が先ほどよりもあがり、そのまま後方へと転がっていった。


「うーん、もういいかなぁ。次の段階に移ろうかねぇ。アレを持って来て」

「はいっ」


 遠くからデータを見ていた青年が、フケだからけの頭を掻きながら、指示を出すと慌ただしく研究員達が動き始める。

 別の部屋へと走っていった研究員に絶望の目を向け、ツキミの口から思わず謝罪が零れる。


「ご、ごめんなさいなのだ……。もう、勘弁して欲しいのだ……。これ以上は無理なのだ」


 魔力を封じる枷を付けられ、猫の姿のまま小さく丸まりぷるぷると震える。

 そのまま近くにいた研究員に懇願をするが、嘲笑と共にその願いは打ち砕かれた。


「実験体0580番。拒否権など、実験体には最初から存在していないのですよ」


 冷たく言い放った研究員は、ツキミをカプセルへと戻して台車へ乗せ、部屋を移動し始めた。


「じゃっ、暫く任せたよぉ。ボクは可愛い可愛い実験体に会いに行ってくるからねぇ」


 ニチャァとした笑みを浮かべて、るんるんの様子でツキミが運ばれて行く先とは反対方向へと進んでいく。


「とーる……、早く助けに来て欲しいのだ……」


 ツキミの小さな声は、研究員の耳に届く事無く消えていった。



 一方テディは眠らされ、多くの管が体へと繋がれていた。

 テディの周囲を魔術陣や光る幾何学模様が浮かび上がりは消えてゆく。


 ツキミの実験を助手達に任せ、テディの様子を見に来た青年は、モニターに映し出されていく数字を見て、どんどんと頬が緩んでいく。


「あぁあっ、早くバラしたい!考えるだけで興奮してきちゃうなぁっ!でも、まだ我慢、我慢。こんなにも珍しいデータが揃っているんだもの。しっかり研究して、ボクの子供たちに反映させてあげないとねぇ」


 ねっとりとした視線をテディへと送り、先の未来へと思いをはせる。

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