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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第三章
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屋敷の中

 内臓を震わす鐘が全ての建物に鳴り響いた。

 2人は人影が現れないかを注意しながら、身支度を済ませ朝食をとる。


「早くこのガスマスクを外して、口いっぱいにご飯を頬張りたいわね……」


 朝食も昨晩と同じように、ガスマスクの中に展開した収納魔術から1口ずつ口の中へと落としていた。


「食い……んんっ。その為にも早くツキミとテディを助け出して、とっととこの国からおさらばしてえな」

「ねえ、今、食い意地って、言おうとしたよね?ねえ?ねえっ!」


 迫りくるリアを華麗に避けて、リアの言葉もスルーして透は続ける。


「んでも住民達がずっとこの様子なら、当初の目的の義手は諦めなきゃいけねえかもなあ」

「あっ……、そうね、私の為に来てくれたのよね……」


 話題を変えると、先ほどまでの勢いは嘘だったかのように、急にしおらしくなる。

 落ち込むリアを宥めて、義手についてはツキミとテディを助けた後に考える事にした。



「おいっ、あれ!こっちに来るのって人じゃないか?」


 透の指差す先には、フラフラとしながらゆっくりと近付いてくる人影があった。

 その人影が真っすぐ見える所まで移動し、近付いてくるのを待つ。


「どうやってこの鉄柵を通り抜けるのかわかんねえけど、その時に中に入れるかもしれねえな」


 暫くして鉄柵へと人が辿り着いた。

 服がボロボロになってはいるが、元は執事服のような物だったと推測できる。


 その執事と思われる人が鉄柵へと触れると、折りたたまれるようにして柵が左右へと除け、人が5人通れる程の幅が開いた。

 執事は昇降場へと向かって進んでいく。


 警戒しながら2人は開いた鉄柵の間から、庭の敷地内へと足を踏み入れた。

 どこからかいきなり攻撃を受ける事も、結界に阻まれることも、執事が急に襲ってくる事もない。


「大丈夫、そうだな。とりあえず屋敷へと向かうか」

「ええ、そうね」


 時間が惜しいとばかりに、走って屋敷へと向かう。

 途中左右の庭を見渡しても誰もおらず、噴水の水は枯渇し、枯れた草木と、所々に錆びついた銅像が置かれているだけだった。


 念のため屋敷の扉をノックし、大きめの声をかけるが勿論反応は無い。

 そっと扉を開けると、そこには薄暗く寂れた玄関ホールが広がっていた。


 元は幾重にも重なるシャンデリアに輝きが溢れ、白い床が眩しかったはずだ。

 点在している調度品も、今では錆が出て曇っているが、本来はシャンデリアの光を受けてキラキラと瞬き、訪れた人々の心を虜にしていただろう。


「そういえば、他の建物は皆こんな感じで寂れてきているのに、ギルド本部だけは綺麗な状態のままだったんだろうね?」

「言われてみれば確かにな。本当だったらかなりの人が土足で歩き回ってるだろうし、なんか綺麗さを保つ特別な魔術でも使われてるんじゃないか?」


 雑談をしながらも、透は魔力絨毯を展開し、屋敷の中を簡単に調べていく。

 リアは愛刀に手を添え、周囲を観察しながら、いつでも奇襲に対応できるようにしていた。


 屋敷はかなり広く、ほぼフロアの横幅全てを埋めているのではないかと思う程だ。

 誰かいないかを探る為に、床だけに薄く魔力絨毯を延ばしていっているが、魔力がゴリゴリと削られていく。


 暫くして、とある部屋のそのまた奥の部屋の、更にその奥。

 人の目から隠すように作られた部屋に、1つの生命反応を感知した。

 その時には莫大な量を誇る透の魔力が半分を下回っていたのだから、この屋敷がどれ程広いかが計り知れる。


「誰かいたぞ」

「行ってみましょう」


 2人は頷き合い、その生命反応に向かって歩き出した。


 正面の廊下を突き当りの直前まで進み、奥から2番目の扉を開け中へと入る。

 そこはどうやら誰かの私室のようで、成金が好みそうなセンスの悪いギラギラ光る調度品が置かれていた。


 今はくすんで光が抑えられているが、これが磨かれていたら、部屋に入るだけで眩しくて扉を閉めてしまいそうな部屋だ。


「こんな部屋じゃ、疲れて帰ってきても心が休まらないわね……」

「目が痛そうな部屋だよな」


 苦笑いを浮かべつつ、部屋の奥に設置されている扉を開ける。

 そこは寝室になっていた。


 ここの家主がとにかく派手に光る物が好きでセンスが無い、という事がどの部屋からも手に取るようにわかる。

 寝室は先ほどの部屋に比べてれば少しマシではあるが、私室と同様に宝石が並べられており、ベッドカバーや天蓋には金糸や銀糸で刺繍が施されている。


「私、加工された貴金属の価値ってあまりわからないけど、錆びついてたりするし安物っぽそうよね」


 リアの言葉に少し興味を持った透は、手近にあるネックレスを1つ鑑定してみた。

 すると、金のチェーンと思われた所は真鍮と書かれており、ルビーと思われたところはガーネットと書かれていた。


「あ、あぁ。もしここの家主がこのネックレスを本物の金とルビーだと思ってるなら、見る目が無いし、絶対に良いカモにされてんな」

「お屋敷に入る前は凄い所だなって思ったけど、なんか結構残念な感じね……」


 生暖かい視線で貴金属を見渡し、気を取り直して更に奥の部屋を探し始めた。

 そして、違和感に気が付く。


 寝室の中には、天蓋付きのベッド、ベッドサイドのテーブルと照明、貴金属が並べられた棚、宝石が埋め込まれた煌びやかな本がぎっしりと並ぶ本棚、その近くにテーブルセットと照明が置かれているだけだ。

 唯一扉があるとすればクローゼットだが、そのの中には室内着と思われる物が並んでいるだけで、どこかの部屋に続く扉はありそうもない。


「あれ?この部屋の奥に更に部屋があるのよね?扉なんて見当たらないのだけれど」

「さっきはとにかく床に魔力を延ばしてたから、どこが入口かまではわかんなかったんだよなあ。隠し部屋って言えば、大半は本棚が動くとかだと思うが、ちょっと待ってくれ、詳しく調べてみる」


 透は魔力絨毯を展開し、床と壁に沿って広げていく。

 魔力は小さな隙間にも入り込み、部屋の全体像を透へと伝える。

 1番可能性が高いと睨んでいた本棚には、どうやら何も仕掛けは無いようだ。


「お、あったぞ」


 透の指差す先にはあるのはベッド。


「ベッド……?そんな所に隠し扉を作ったの?」

「このベッドの真ん中あたりの床部分から、下に行く階段が感じ取れたんだけど……」


 ベッドシーツを捲り、床を見渡してもそれらしい場所は無い。

 少し余裕があるとは言え、這いつくばってしか進めない狭さのベッド下に透が潜りこむ。


 そのままずりずりと階段があるはずの場所まできたが、何の仕掛けも見当たらず、そこには他と変わらない床があるだけだ。


「おーい、リアー。部屋の中になんか仕掛けを動かすような物無いかー?」

「えー……っと」


 リアが部屋の中にあったボタンを片っ端から押していくが、床に変化は無い。

 今度は色々な棚を開けて中を物色するが、それらしい仕掛けは見つからなかった。


「なんか泥棒してるみたいで心が苦しくなるわね……。透くん、全然見つからないわっ」


 リアはそれでも諦めず、今度は本棚から本を全て出していく。

 透はどうしたものかと唸りながら、ごろりと仰向けに転がった。


「あ?あぁ!」

「どうしたの!?」


 ベッドの底板部分に、分かりずらいが小さな突起がつけられていた。

 それを押してみると、殆ど音を立てず床がスライドし、下へと続く階段が現れる。


「リア!あった!でもって、開いた!」


 すぐにリアもベッドの下へと潜り込み、2人で薄暗い階段を下りていく。

 階段を下りきったと思ったら、今度はまたすぐに上りへと変わった。


 少し上ると扉が3つあった。

 魔力絨毯で簡単に中を調べて、人がいない扉から開けてみると、1つは中に簡易ベッドと保存食が置かれていたであろうシンプルな小部屋、もう1つは何本も道が分かれているような通路が続いていた。


「休む所と逃げる所、みたいな感じかしらね?」

「そうかもしれないな。さて、いよいよ開けるぞ」


 2人は顔を見合わせて頷き合うと、人の反応が感じられる部屋の扉を開いた。

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