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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第三章
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禍々しさを放つ首都

 その後の村は通り越し、ただひたすらに首都を目指す。

 透は車もどきに注ぎ込む魔力を増やして速度を上げ、リアとツキミとテディは夜しっかりと休養を取る透を守るように、2人ずつローテーションを組み不寝番を行った。


 そんな生活が10日程続いたころ、地平線の向こうに物々しい雰囲気の建物が微かに見えてくる。

 近づくにつれてハッキリと認識できるようになったそれは、鉄の迎撃型機械要塞と呼ばれそうな街だった。


「うわ……すげえなこりゃ……」


 どんな攻撃にも屈しないような金属でできた分厚い防壁には、何かの血が多数こびりついて黒く濁り怪しい輝きを放っている。

 防壁の上には大砲と思わしきものがずらりと並べられ、上空には戦闘機のような物が数台飛んでいる。

 金属製の棘がびっしりと付けられている門にも防壁と同じように血がこびりついており、来るもの全てを拒んでいるようだ。


 そんなまさしく鉄壁の防御に守られている街の中は、そびえ立つ防壁よりも遥かに高いビルが並んでいる。

 ビルとビルの間を数階ごとに何本もの連絡通路が渡されており、ビルの中の人々はわざわざ地上に降りなくても生活する事ができそうだ。


 透は休んでいる3人を起こし、車もどきの速度を落としながら門へと向かっていく。


 血や何かが腐敗したような臭いと、どことなく甘い臭いや油や金属の匂いが混ざり合い、なんとも言えない悪臭が近づくほどに漂ってきて、思わず全員は鼻を抑えた。

 特に嗅覚が鋭いツキミとテディは、鼻を抑えていてもかなり辛そうだ。


「これは……どうしたらいいんだ?」

「こんな大きな所なのに、門番の方が外を見てないのね」


 目の前には透の身長の4倍はありそうな大きいトゲトゲの門。

 今までは門があるところには必ず門番がいたので、門の前に呆然と立ち尽くす事など無かったのだが、今回は門番どころか商人達の往来も無く門は固く閉ざされたままだ。


「あっ!なんかあるのだ!」


 どうしたらいいのかわからず一行は困り果てていると、ツキミが門の隣にある四角い突起物を見つけたと思ったら、即ダッシュで駆け寄り透やリアに止められる前にぽちーっと押した。

 すると、地響きをたてながらゆっくりと門が開いていく。


「見るのだ!開いたのだ!」


 ツキミは両手を腰に当て鼻の穴を広げて大きく息を吸い込み、ふんすっと息を吐きながらドヤ顔で透を見る。

 そしてドヤ顔をした直後、悪臭を思い出したかのように、おえええええと吐き出した。


 透は呆れたように首を振りながら小さく息を溢し、すぐに気を取り直して街の中へ入った。

 門のすぐ内側には関所が設置されており、その中にいた人がのっそりとした動きで一行の元にやってくる。


「……なんだ。久々の人間だな。招待状は?」

「あっ、いえ、特に何も持ってないです。俺達冒険者をやっていて、この国には凄腕の鍛冶師が沢山いるって聞いたので、作って欲しい物があってきました」


 透の言葉を聞き流した門番の虚ろで濁った瞳に生気は無く、表情も抜け落ちていて不気味さが溢れている。

 門番の表情に何も変化が起こらないまま、のっそのっそとした動きでタブレットのような物と全員の顔を見比べていく。


「大丈夫なのかしら……?」

「……わかんねえけど、不気味だからって可能性が目の前にあるのにここで引き返すのもなあ」


 門の中は悪臭が漂い、金属片やガラクタのような物が地面に山積みになっており、巨大なビル群の外壁には錆が出ている。

 だが、関所の中や目の前のよくわかない施設のガラス扉の中等、屋内をぱっと見る限りは汚れが見当たらずかなり清潔そうだ。


 透は全て屋内で完結しており、外に出ないからこそ悪臭に気が付かないだけなんだと結論を出し、「臭いは多分もう少しの辛抱だから頑張れ」と皆を励ました。


 門番の目の前でコソコソと会話をしている間に、仕事は終わったのかタブレットを関所の横に設置されていた何も置かれていない真っ白で小さな個室へと取り付けた。

 個室の外につけられているボタンを押すと、中は青白い光で満たされ壁には幾何学模様が浮かび上がりは消えを繰り返し始める。


「身体検査だ、1人ずつ中に入れ。検査が終わり次第、建物の内部に自動で転移する」


「最初は任せるのだ!」


 ツキミが意気揚々と進むのを1回止めて、転移したら面白そうな物があっても絶対にその場を動かないで何にも触らないように、と透とリアは強く念を押す。

 その忠告にへらりと笑って、「わかってるのだ~、全く2人はしつこいのだ!」と軽くあしらったツキミは個室の中へと入っていった。


「全然聞いてねえ……」

「心配ね……」

「がうぅ」


 全員の心配をよそにウキウキと個室の中を見渡していると、壁から発せられたレーザーのようなものが身体中にあたり、ツキミの周辺に浮かび上がった幾何学模様が大きさを変えながら包み込むように回転し始めた。

 一同が感嘆の声を上げているうちに、ツキミの足元には黄色い光を放つ魔術陣が浮かびあがり、ツキミの姿と共に消えた。


「次だ」


 ツキミは屋内のどこかに転移したようで、目の前の施設の中に現れるわけではなかった。

 テンションが上がり1人でフラフラと歩き出さないように祈りながら、透は心配そうにビルを見上げ、どこからかツキミがひょっこりと顔を出していないか探しだした。


 その間にリアが恐る恐るといった様子で個室に入ると、先ほどと同じように幾何学模様がリアを包みながら回転し、足元に魔術陣が現れ転移をした。


「次」


 門番の声にハッと我に返った透はテディを抱きつつ個室に入ろうとしたが、あと1歩の所で門番の太い腕に阻まれる。


「1人ずつと言っただろう、お前とその熊は別々に入れ」


 面倒くさそうに睨まれ、慌てて平謝りをしながらテディに個室に入るように促した。

 同じように黄色い魔術陣と共に消える。


 最後に透が個室へと入るのを見届けた門番は、仕事が終わったとでも言うように関所へと戻り、門を閉めるボタンを押して昼寝を始めた。


 機械が放熱するような温かさに包まれながら、周囲を回る幾何学模様を不思議そうに見つめ、腕を上げると模様も分裂して腕を包むように回転する。

 足元に()()()()の魔術陣が現れ、「ん?」と疑問の声が小さく漏れ出たと同時に周囲の景色が切り替わった。



 薄く靄がかかった白い廊下にいたのは、不安そうな表情を浮かべたリアが1人だけで、ツキミとテディの姿はなかった。


「よかったッ!先に転移したはずのツキミちゃんはいないし、後からも誰も来なかったから不安で不安で……」


 ツキミがいない事に関しては、性格を考えると十分に可能性があるが、透の前に転移したはずのテディがリアの前に現れてないとなると意図的に転移場所が変えられた可能性が出てくる。


「リアの足元に現れた魔術陣の色って覚えてるか?」

「えぇっと、確か濃い目の青だったかな」


 リアの足元に現れていたのも透と同じ深い青色の魔術陣、そしてツキミとテディの時に現れた魔術陣は黄色。

 ツキミが転移した後心配になってビルを見上げていて、リアの転移の瞬間を見ていなかった事を悔いつつも、結局色の違いに気が付いたからといって何ができていたわけでもない、と思考を遮断する。


「とりあえず後ろは壁だし、前に進むしかねぇか。どっか違う廊下に出てるかもしんねえし、ツキミが問題を起こす前に合流できるように頑張るか」

「そうね……。テディちゃんだけじゃツキミちゃんを止められないでしょうし、のんびりしてる場合じゃないわねっ!」


 気合を入れた2人は速足で廊下を進みだした。

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