村
稀に襲ってくるサボテンに出会う度テディが目を輝かせ、透がそれを具現化した火炎瓶で焼き払い、テディが悲しみに包まれしょんぼりと鳴くのを繰り返し進んでいく。
「そんだけ悲しそうに鳴かれると罪悪感がすごいな……」
「でも毎回毎回食べれるように倒すのは結構大変よ?私もあの体液まみれになるのはこりご……でも、テディちゃんに舐められるのは中々快感だったわね」
目がトロンと甘い光を帯び、「はぁ」と熱い息を漏らす。
そんなリアから物理的に距離を取った透とツキミが囁き合った。
「なんか変態が加速してねえか?」
「やっぱりそう思うのだ?前はなんとなく薄っすらと感じていた変態度が、最近は皮を破って出てきてる感じがするのだ」
2人の声等耳に入らないといった様子で、昨日の事を思い出し身悶えるリア。
車もどきの隅っこで、しょんぼりと項垂れるテディ。
2人は頷き合い、リアを放置する事に決めた。
昨日収納魔術に入れた触手の塊を1つ取り出すと、匂いで気が付いたのか壁に向かっていたテディの顔がぐるりと勢いよく2人の方へ向き嬉しそうに飛びついてくる。
そして触手の塊を奪うと、再び隅っこへと行きガツガツと食べ始めた。
リアと同じ空間にいるのは危ないと判断した透は、壁の無い進行方向の床を伸ばし縁側のような場所を作った。
そこに腰掛け、今日も相変わらずどんよりと重たい空気を吸い込みながら、速度を上げて行く。
暫く進むと今まで永遠とも思える程続いていた荒れ果てた大地に、ぽっかりと巨大な穴が開いていた。
車もどきから降りた透は、その断崖絶壁の淵から恐る恐る下を覗き込む。
「んっ!?お、おい!2人とも見てくれっ」
穴の中には明りがいくつも灯っており、家が数件あって作物が育てられ、牛や鶏等の家畜いるのが見えた。
人数は少ないが生活している人々の姿も捉える事ができる。
まさに村と呼べるような光景が、巨大な穴の中にはあった。
「すごいのだ!」
「まさかこんな大きい穴の中に村があるなんて思わなかったわ」
早速村に降りようとするが、周囲を見渡しても降りれるような坂や階段は存在しない。
とりあえず大きな声を上げて村人に存在をアピールをするが、聞こえていないのか誰一人として上を向いてくれない。
「どうするのだ?」
「んー……でも村で全てを賄うってできないだろうから、商人とかが来るはずなんだよな。となると、その商人が村に入る為の仕掛けが何かしらあると思うんだが……」
いくら声を張り上げても反応が無いので、仕方なく何か無いかと穴の周囲をぐるりと歩いて回ってみる。
暫く地面に注意しながら歩いていると、地面と同化する色合いで作られた不自然な突起を発見した。
「これ凄く怪しくないかしら」
「きっとこれなのだ!ぽちーっなのだ!」
ツキミが躊躇いなく突起を押す。
だがしかし、何も起こらない。
確かに、カチッという音が小さくなり、突起が凹んでいるのだ、自然が作った大地では無い事は確かだろう。
けれども、待っても待っても何も起こらない。
「あれ?なのだ」
「これじゃなかったのか?」
首を捻る3人の前に、穴の中から手の平位の大きさをした漆黒の球体が、中央より少し上に小さな赤い光を灯して浮き上がってきた。
それと同時に、どこからともなく声が聞こえてくる。
『……誰だ』
「んにゃっ!?」
「えっえっ」
慌てふためく2人とは別に、透だけは冷静に分析をしていた。
何せその漆黒の球体には、見覚えがあるから。
(少し見難いけど中央にあるのはレンズみたいな……。それに下にある小さな穴、上の赤い光。それに誰だって聞く声ってことは、これ監視カメラっていうかインターホン的な物なんじゃねえのか?)
「えーーっと、俺達怪しい者じゃなくてですね!首都っていうのかな?1番栄えてる街を目指してる旅の者なんですけど、やっと村があるのを見つけたので、お話し聞かせてもらえたりとかできないかなーって思いまして!」
球体に向かって身振り手振りを加えながら、精一杯怪しくないアピールをする透。
2人は何してるんだと不思議そうな顔を透へ向け、本命の球体からは何も応答がない。
暫しの沈黙の末、球体から聞こえてきた返答は、拒絶だった。
怪しい者を入れる事はできない、と。
「そ、そしたら、村の中に入れて貰わなくても大丈夫なので……!一番大きな街がどの方角にどのくらい行ったらあるのかだけでも教えて下さい!勿論タダでとは言いませんので!」
このまま通信を切られてしまうと、また合っているかもわからないまま広く何もない荒野を走り続けなければいけない。
本当は村の様子を見たり、日数によっては補給などもしたかったのだが、怪しいから駄目だと言われるのであれば、せめて話だけでもこのまま聞きたい。
(こういう村では多分作ってても食べる物ばかりで、調味料とかは高級品ってのがお約束なんだろうけど……。インターホンもどきといい、なんか妙にハイテクっぽそうだからなぁ……、小さな村でも色々と事足りてる可能性もあるよなぁ)
とりあえずシュループで入手した香草と、ルメジャンで入手したスパイス、それから道中肉を食べ飽きた3人で意見を出し合って何度も試行を重ねて配合した肉に合うふりかけを取り出す。
テレビショッピングのように調味料達のアピールをしていると、足場が岸壁を登ってきた。
その足場の中央にはモグラの形をした金属製ロボットが乗っている。
『契約書に同意の血判を。村に入る許可を与える代わりに、器物や人に危害を一切加えないという魔術契約書だ。契約が破られた際には村から強制転移させ、2度と村に入れないようにする術式が組み込まれている』
モグラロボットが3人の前にてこてこと歩いてきて、契約書を差し出す。
内容を確認した一行は、テディも含めて4つの血判を紙へと押してモグラロボットへと返し、モグラロボットは宙に浮いたままの球体に向かって返された契約書を見せた。
それを確認したであろう人物から、別の要求が告げられる。
『その契約書では村への侵入許可のみだ。それ以外の情報が欲しければ、その香辛料と共に再び交渉を。物によっては購入も考えている』
「わかりました!物は全然あるので多分大丈夫です」
球体越しの人物は透の答えに満足そうな声色で、『その足場へと乗れ』と指示を告げた。
車もどきの具現化を解除してテディを抱えると、恐る恐る足場へと乗り移る。
3人がしっかり乗ったのを確認したモグラロボットが自身の腹にあるスイッチを押すと、足場はゆっくりと岸壁を下り始めた。
いつの間にか球体は消滅しており、モグラロボットは微動だにする事無く足場の外を見つめている。
足場ごと落ちてしまわないかビクビクとしながら、透とリアはできる限り足場の中央に寄っていたが、ツキミだけは興味深々な様子で足場の上を動き回り下を覗き込んでいる。
テディもその後ろについて行きたそうにじたばたとするが、透にしっかりと抱きかかえられたままで、やがてしょぼんと諦めたようだ。
「ツキミちゃんは本当に怖いもの知らずよね」
「好奇心は猫を殺すって言葉が俺のいた所にはあったんだが、まさにそんな感じだな」
呆れたようにツキミを見ながら話す2人を尻目に、足場の下を見ようと這いつくばって上半身を乗り出す。
「この板は本当に不思議なのだ!あっ、なんかあるのだ!」
板の下に何かがへばりついてるのを見つけたツキミが、更に身体を乗り出して手を伸ばす。
すると、案の定手を滑らせ「んっにゃああああぁぁぁぁぁぁぁ……」と声を上げながら、村に向かって落下していった。
「ああああああッ!ツキミちゃああああああああああああん」
慌てふためき今にも飛び降りて追いかけそうなリアを片手で抑え、透は半眼となり更に呆れた表情を浮かべ冷たく言い放った。
「自業自得だ、それに自分で結界出して足場作れるし大丈夫だろ」
村に降り立った2人は、地面に軽く埋まった猫状態のツキミを1番最初に発見したのだった。
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