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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第三章
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モンブール共和国

 ルメジャンの北の端、モンブール共和国との境目となる関所へやってきた3人。

 透達の他に人通りは無く、暇そうな門番と軽く会話を交わしてモンブール共和国へと足を踏み入れた。


 門の外には遮蔽物も無く、ただただ荒れ果てた土地が広がり続けている。

 空気がどんよりと重たさを持って3人に圧し掛かるような雰囲気だ。


「そいやシュループからこっちへ来るのには門を挟んで町があったのに、モンブールへと行くのには門1つなんだな」

「前回はルメジャンに入るまですんごい大変だったのに、今回はすんなりなのだ~」


 2人の呟きに暇を持て余して鍛錬へと打ち込む門番が説明をしてくれた。


 そもそもこの門と高い塀は、国土が小さいが巨大な地下ダンジョンという資源を持ったルメジャンを、他国の侵略から守る為に作られた。

 戦争が殆ど無くなった現在も入国が厳しいのは、小さい国故に大規模な犯罪者集団等によっても簡単に大きな損害を受けてしまうからだ。

 だから冒険者が多く通る国との境目は厳しい監視体制の関所が置かれ、厳重な入国審査が行われている。


「だけど、モンブール共和国との境目のここだけは話が違う」


 先ほどまで得意気に話していた門番の表情が少し曇り、ハハっと乾いた笑いを上げながら続きを話し出した。


 技術大国とも言われているモンブールだが、武器や防具、魔道具を作る職人たちは頑固な者が多い。

 稀に気に入った相手の為に注文を聞き物を作る事もあるが、基本は職人たちが作りたい物しか作らない、といつかここを通った冒険者がぼやいていた。


 その為、冒険者でわざわざ作ってもらえるかわからない装備の為に、時間と労力をかけて首都へと向かうより、商人が運んできた物を買って、ダンジョンの中でよりよい装備を手に入れる方が良いという結論に至る者達が多くなっていった。

 いつしかその価値観は冒険者達の中で常識となり、ここの関所を通るのは顔馴染みの商会のみとなった。


「最近は今まで偶に通っていた商人達の顔も見なくなって、暫く誰も通ってなかってわけだ。だから久々に身内以外と話せてうれしいよ」


「それは……なんか、こう、大変ですね……」


 透の下手くそな労いに、門番は気を悪くする事も無く笑顔を返した。


「因みに俺達モンブールへ行くのは今回が初めてなんですけど、首都?っていうのかな?一番栄えてる街には、どの方向へ行ったらいいんですかね?」


 モンブール共和国側は見渡す限り荒野が広がっており、街どころか村すら見当たらない。

 果てなく続くように見える地平線を前に困っていた。


「あー……、多分正面を真っすぐに行ったらいいと思うんだけど、何せ商人達は色々迂回して村々を回ってたみたいでね、色々な方角から来てたんだよ。私も実はモンブール共和国はちゃんと訪れた事がないもんで、力になれなくてすまないね」


「とんでもないです、ありがとうございますっ」

「大丈夫なのだ!なんとかなるのだ!」


 礼を伝え一行はとりあえず正面へと向かって歩き出した。



「それにしても果てしないのだ……、歩くのしんどいのだー」

「そうね、気が滅入ってしまうわね」


 眠るテディを代わる代わる抱きしめて、もふもふを堪能しながらため息交じりに不満を溢す2人。

 なんとかしてくれとばかりに2人の物言いたげな視線が透を貫く。


「確かにな……これじゃどっかの村に辿り着く前に餓死しちまうか。車が欲しいけど、あれは一体どうやって動いてたんだろうなあ」

「くるま?ってなんなのだ?」


「あー……馬車の馬がいないやつみたいな?」

「馬がいないって、それってどうやって動くのかしら?魔力?」


 リアの疑問を受けて、透は閃いた。

 足を止めてイメージを固め手を前に差し出すと、そこから青い魔力が流れ出て形を創り出す。


 3人が立っても横になっても余裕がある大きさの木製の箱が出現し、その箱の底面には同じく木製の車輪が4つついている。

 箱の側面3つには座った時の目線の高さに小さな穴があけられており、進行方向の1面には壁が無く開放感が溢れていた。


「うっし!完成!別に小難しい事を考えなくてよかったんだ、どうせ魔力で動かすんだから動かしやすく休めりゃそれで問題ないだろ!」


 透は意気揚々と車もどきに乗り込み2人を呼ぶ。

 周囲をぐるっと観察してから車もどきに乗ってきた2人は何とも言えない表情を浮かべていた。


「確かに楽になるし、ありがたいわ。……けど、ねぇ……?」

「ださいのだ」


 言葉を濁していたリアとは違い、バッサリと外観への文句を口にするツキミ。

 リアも「あはは……」と苦笑いを浮かべている。


「う、うるせーなっ!見た目に文句あるなら、なんか自分達で絵でも書いておけよっ!」


 センスに駄目だしを受け、照れたように顔を赤くさせながら、ペンキとハケを具現化させ2人へ差し出す。

 それを受け取った2人はワクワクした様子で、それぞれ別の面に向けて駆け出した。



「……それで?何か言いたい事は?」


「バカにして、ごめんなさいなのだ」

「申し訳ないと思っています」


 2人が描いた面はどちらも地獄絵図を描いたのか、という程おどろおどろしい風景や異形の怪物が描かれていた。


「絵なんか描いた事なかったのだ……」

「私もまさか、ここまで下手だとは思わなかったわ……」


 消してくださいと頼む2人をスルーして、戒めの為に地獄絵図はそのまま残され、車もどきは走り出した。


 何もない荒野で生きて行くのが難しいのは人間だけではない。

 動物やモンスター達も生命活動が必要なのだ、水も無ければ食料も無い場所では生存が難しく動くものは殆ど見当たらない。


 だがそれは昼間だけだった。

 1日走っても人影どころか建物の姿は見えず仕方なく野営を始めた所、それらは音も無く忍び寄ってくる。


 周囲を警戒していた3人に気付かれる事なくすぐそばまでやってきていた。

 鋼で出来た身体で地中を泳ぎ3人の真下まで移動してきた10を超えるそれらは、何かをする事無くただただ真っ赤な光を宿した瞳で地中から3人を見上げている。


 それらが通る時だけ地中の土はドロリと液体のように変質し、それらの視線の先のみ土は色を失ったかのように無色透明となり地上の様子をその瞳に映しだす。


「ん?どうしたんだ?」

「がぅ……?」


 美味しそうに肉をガツガツと頬張っていたテディがピタッと動きを止め地面を見つめる様子を疑問に思い透は問いかける。

 地中に何かいる事はなんとなく感じ取れても殺気を感じられないそれらが一体何なのかわからず、結局テディは首を傾げたまま再び地面を見つめつつゆっくり肉を食べ始めた。


 ツキミとリアが透を確認すると、フルフルと首を振る。


「念のため魔力絨毯を展開してるけど特に何も」

「モンスターの雰囲気とか臭いとか殺気も感じないのだ」


「もしかしてオンハルトさん……?」


 リアの発言に2人はバッと慌てて周囲を見渡すが、そこに広がるのは闇以外何もない。


「オンハルトはニーシューに行ってるだろ?まさかこんな所にいるわけ……」

「でもオンハルトならあり得ない事も無い気がしてくるのだ……」


 闇に向かってオンハルトの名を呼び掛けたり悪口を言ってみたり助けを求めてみたりしたが、オンハルトは現れず何か動く気配もしない。

 とりあえずオンハルトではないと結論付け、緊張したり警戒したりする様子も無くただ地面を見つめながら静かに肉を食べるテディを見て、危ない状況ではないと判断し食事の続きを始めた。




『あの熊はボクの可愛い発明品に気が付いているのかぁ。実に実に興味深いねぇ……。是非とも解剖して色々と繋ぎ合わせ実験してみたい物だねぇ』


 遠く離れた地で地中から送られてくる映像を見てニヤニヤとした表情を浮かべる人物がいるとは、夢にも思わず3人は仲良く車もどきの中で睡眠を取った。

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