オンハルトと 1
下層へと駆け降りるスピードに苦も無くしっかりと付いてくるオンハルト。
自分の脚で駆けながら無駄にターンを決めてみたり、マントを翻してみたり、包帯を風に乗せ躍らせていたかと思えば、いつの間にか骸骨の群れと骨の椅子を具現化し、悠々と座りながら骸骨に担がせ走らせている。
ずるいと喚くツキミを骸骨に肩車させスピードを上げると、「ひゃっほおおおおおおおおおなのだああああああああああ!!!」と雄叫びを上げながら楽しそうに笑っている。
更に透までもがずるいと言い出し、いつの日かシュループの王都から抜けるのに大自然の中を駆けた四つ足の骨の獣を出し乗せて走る。
道も罠も分かりきっている下層までの道はオンハルトの合流により、約3名が遠足モード全開となって楽しんでいた。
溜息を吐きながらもヒラキとリアは己の脚で駆け降りる。
リアの羨ましそうな視線に気が付いたオンハルトが、2人用の骨獣を出すがヒラキを見てグッと欲望を堪え首を振った。
ヒラキは見向きもせず速度を上げるが、3人を乗せた骸骨達は振り切られる事無く後ろにぴったりと付いて速度を上げた。
下層に続く穴へと飛び込み着地すると、骸骨達は消えていた。
代わりに頭部が無い巨大な骸骨、足元に涎の池を作っている豚、七色に光り輝きドクドクと波打つスライム、人の大きさ程ある目玉が1つ、そしてやはり片腕を失った大熊がいた。
「やっぱりリアはどうしても熊になるのだ」
「まぁ、オンハルトの骸骨ってのも代り映えがないっつーか……」
ツキミと透の理不尽な文句を3人はスルーして、今回の行先を確認している。
無事に遅れる事無く下層へと辿りついたオンハルトは、同行を正式に認められた。
「踊り狂う骸骨行進」
オンハルトの決め台詞に合わせて、オンハルトの倍程背丈のある骸骨の群れが前方へと出現した。
何層にもなった骸骨の集団が前方の罠を踏み抜き、穴に落ち、溶液に溶かされ、炎に焼かれ、重石に潰され粉々になって数を減らしていった。
その度に無駄にターンをし髪をかきあげポーズをしながら、骸骨を追加していく。
5人は骸骨の後ろを歩いていくだけで問題無いのだ。
落とし穴には骸骨が埋まり足場を作っており、溶液と一体になってドロドロになった骨は他の骸骨によって端に寄せられている。
そんなこんなで比較的安全なまま下層探索が開始されたが、素直に喜べない者が約1名。
「ひーまーなーのーだー」
最初こそ骸骨の上を猫モードでぴょんぴょん飛び移り、肋骨の中に入ってみたりと骸骨で遊んでいたが、数日も同じ状態だと飽きがやってくる。
ヒラキとリアは安全な状態でもある程度の緊張感を切らさず維持しているのだが、ツキミと透は飽き始めているのがわかる。
オンハルトだけは、数歩進んではキメポーズ、数歩進んではキメ顔と1人とても忙しそうだが。
「こんな時の為に!」
透はへっへっへと笑うと、街の雑貨屋で売っていた子供の玩具を取り出した。
オンハルトに骨の絨毯と、それを運ぶ用の骸骨を出すように頼み、絨毯の上にモンスターの絵や薬草の絵が描かれているカードを広げた。
ルメジャンの子供たちは引退した冒険者に連れられダンジョンで実戦を経験するだけでなく、僅かな時間でもモンスターや薬草について遊びながら勉強を重ねていく。
その為の道具がルメジャンの雑貨屋ならどこにでも置いているこのカードだ。
「これはなんなのだ?」
早速興味を示したツキミとオンハルトがひょっこりと顔を出す。
透の手元にある札には説明文が記載されており、読み上げられたらそれに対応している絵札を広がっている所から取っていく。
モンスター用の説明文であれば、弱点の場所や相性の良い武器や属性魔術から始まり、そのモンスターの大きさや特徴等が続いて読み上げられる。
薬草用の説明文であれば、効果効能から始まり、処理の方法、主な生息地と続いていく。
「ちょっとやってみるか?俺が読み上げるからそっちに2人は座ってくれ」
透が札を読み上げようとした時、オンハルトが異変を感じて制した。
「しばし待たれよ」
オンハルトの様子に4人はすぐさま武器に手をかけ、いつでも戦えるよう集中した。
行き止まりへと辿りついた骸骨の足元から、魔術陣が起動する光が溢れ骸骨達が消えていく。
「何かの罠のようだけど、どうなっているかわかるかしら?」
「転移の魔術陣のようだな。闇のしもべ達が転移した先でどんどん殺されている。モンスターか罠かわからぬが、行くのであれば十分警戒して進むがよい」
顔を見合わせた一行だったが、ダンジョンのマッピングや調査も懲罰の内容に含まれるのだ。
ここで危険だから戻るという選択肢は無い。
武器を構え臨戦態勢で転移の魔術陣へと乗った。
眩い光が収まったかと思うと、周囲から殺意に滾った鋭い視線と獣たちの咆哮が聞こえてくる。
オンハルトが大量に出していた骸骨が吹き飛び、バラバラになっていく。
すぐさま背中合わせになり近付いてくる敵を屠っていく5人。
「随分歓迎されておるではないか。ッフ、お前たちも私の深淵が見てみたいのか?よかr「長々と喋ってる場合じゃないのよっ!」」
こんな時もブレずにポーズをキメ、長ったらしい口上をモンスター相手に喋っていたオンハルトをリアが一蹴する。
言葉を遮られて若干ムッとした様子のオンハルトだったが、すぐにやれやれといった様子で髪をかきあげ包帯とマントをバサっと翻し骸骨達を追加した。
「啼き叫べ、全てを飲み込む常闇の狂想曲」
骸骨達がカカカカカッと嗤ったと思いきや、目元に赤い光が宿った。
大量にいる骸骨達から黒い瘴気が漂いモンスター達を飲み込み、その瘴気の中へ骸骨達も狂ったように腕を振り上げ突っ込んでいく。
透は久々の戦闘に張り切り湯水の如く魔力を流し込み、マシンガンモードで敵を一掃していく。
ツキミも得意の雷撃を多重展開し打ち込みモンスター達を黒焦げにしていた。
ヒラキが手にしている巨大な斧の刀身が炎を纏い2回りほど大きくなっており、それを振り下ろすだけで爆炎がモンスターを焼き尽くさん飲み込んでいる。
オンハルトと透の間にいたリアは身体強化しか魔術を使えない。
つまり、愛剣で直接敵を斬り殺していかなければならないのだ。
本来近接戦闘であるヒラキでさえ、その斧に纏う炎と衝撃、風魔術を駆使して近づかないで戦闘をこなしているのだ。
味方の攻撃に巻き込まれそうになる為、敵に近づく事すらできないリアは迫りくる大量のモンスターを前にただ1人何をする事もできず、とりあえず剣を握りしめたまま何とも言えない表情で立ち尽くしていた。
以前透達3人が初めて下層探索に来た際に飛ばされたモンスタートラップの小部屋と同じく、徐々に敵の数は減り強さが増していく。
それでも4人を前にモンスターはその牙や爪を使う事は無かった。
危なげなく最後の1匹をツキミが倒すと、目の前に宝箱が現れた。
「ふぅぅ、いっぱーい一気に沸いてくるのは疲れるのだぁ」
「結構魔力使っちまったし、ちょっと腹減ったな」
宝箱の確認を人に任せ早速ご飯の準備をしていく透とツキミ。
オンハルトが骸骨を出し宝箱に罠が無いか突き回しながら開けている。
中から出てきた巨大な輝く石を鑑定するのは多方面に知識が広く深いヒラキ。
またしても何もやる事がなく手持ち無沙汰となったリアは、部屋に異常が無いかを見て回っていた。
(べっべつに寂しくなんてないわよっ……。でもなんか、命を懸けるようなはずの場面で何も出来ない不甲斐無さに嫌気がさすわ……。今回のダンジョン攻略はオンハルトさんのおかげで確かにとても楽にはなったけど……、その代わり私はただのお荷物でしかない。どうして私は魔術を使えないのかしら……)
指先から何か出せないかと炎をや水をイメージするが、身体が上手く答えてくれる気がしない。
魔力が指先まで集まるのに、身体の中から外へ放出しようとすると何かが邪魔して少したりとも出ていかないのだ。
ルメジャン最強のパーティの1人、鉄壁の闘拳士と言われていた父のジェイクですら、自分の身体の外に魔力を放出し何かを出したり創ったりする事はできなかったのだ。
その血を色濃く受け継いでいるリアが身体強化以外使えないとしても不思議ではないのだが、頭では解っていても心の中で悔しいと叫んでしまうのは仕方の無い事であった。
今回新しく使ったオンハルトの【全てを飲み込む常闇の狂想曲】ですが、
狂想曲のるびをカプリッチオにするかフレンジーソングにするか少し悩んだ結果、
闇が歌う骸骨達や相手を狂わせる歌、といった意味を入れたかったのでフレンジーソング(Frenzy song)としました。
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