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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第二章
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2個目の帰還魔術陣 1

 ギルド内部のとある部屋に数週間前に設置されたばかりの魔術陣が、初めて光を帯びて起動をする。

 その様子を別室で監視していたサブマスターが慌てて部屋へと駆け付けた。


「おかえりなさいませ、マスター。そして、皆様」

「あぁ、今戻った。変わりはないか?」


 無事に中央ギルド本部へと帰ってきた一行は、サブマスターと治癒術師に出迎えられ体調の検査を軽く行われた。

 そのままヒラキは早速溜まっている仕事を消化する為に連行され、残された3人は今回入手した宝を納品する為部屋を移動する。


 懲罰として取得した宝の9割を国へと納める。

 その規定に基づき、宝を1度国が買い取り1割分を3人へと還元する、という方法が取られた。


 見た事もない珍しい武器や希少な薬草、魔石や宝石、そして金貨の山が職員たちに驚愕をもたらした。


「では、金貨以外につきましてはこちらで売却し、次回お戻りになる際にお渡しします。金貨につきましては、この場で分配し1割をお渡しします」


 1割を冒険者の元に残すのは、生きていく為の必要経費であり、装備を整えたり食料を調達する為であるが、下層の宝は極めて高価な物が多く1割しか手元に残らなくてもどんどんプラス収支になっていく。


 その金額の高さに後からもっと国へ納めろ、と言われるのではないかと内心ビクついていた透だったが、特に要求は無いようなのでとりあえず一安心した。

 なんといっても今現在分配された金貨だけで、既に今回のダンジョン攻略に使った金額を優に上回るのだ。


 更にギルドオークションにかけられていた魅了の魔石が落札され、当初の規定通り手数料2割を引いた金額が3人の前へと用意された。


「これは9割を納めなくてもいいんですよね……?」

「えぇ、こちらは罪を犯される前の収入と計算されるので、2割をギルドで引かせて頂いた残りを用意しております。かなりの大金となりますので、ギルドで保管をしておく事も可能となりますが、いかが致しますか?」


 ギルドに預けた金はいつでも引き出す事が可能となるが、国を跨いでしまうと引き出す事ができないという。

 買い付けや販売を行う国がある程度決まっている商人であれば、拠点となる国ごとにある程度の金額を預けている事が多い。


 冒険者の殆どは生活や装備のメンテナンス、そして娯楽費に稼いだ分の殆どが浪費され、ギルドに預ける余剰の大金を持っている人がそもそもあまりいない、とリアが苦笑いしながら説明をする。


「それでも一部金持ちの冒険者もいるんだろ?そいつらはどうしてるんだ?」

「そこまで強くなった冒険者達は拠点を持っている事が多いから、その拠点がある国に大半を預けていると思うわ」


 少し悩んだ透は、とりあえず暫くはルメジャンを出る事はできないので、そのままギルドに暫く預ける事にした。

 今回の買い出しと地上にいる間に必要な分だけ収納魔術へと入れギルドをあとにする。



「次回の探検はいつ頃になるのだー?」

「どうだろうなー、なんかヒラキさん忙しそうだったしな」


「そりゃギルドマスターだもの、本当は1日席を空けるだけでもかなりの仕事が溜まるはずよ!それを何週間も空けていたのだから……きっと数日は缶詰となって徹夜でしょうね」

「リアはなーんでも詳しいのだ!すごいのだ!」


 ツキミの賞賛にでへでへと鼻の下を伸ばしながら照れ笑いを浮かべる。

 このオッサンみたいな反応さえなければ、賢くて強くて頼りになりつつも時折守ってあげたくなるような完璧な美少女なのだが……、ツキミといるとかなりの頻度で現れる残念さが全てを台無しにしてしまっていた。


 先のダンジョンではどう考えてもツキミの所為で悲惨な目にあったというのに、そのツキミに対して怒る事も嫌悪感を抱く事も無く、現在もデレデレしているその精神に呆れつつも一行は久々に地上の食事を取りに出発した。


 美味しい物を食べ、少し値の張る宿屋を3部屋押さえ、それぞれの部屋でゴロゴロとして疲れを癒していると3人の片手首に突如手枷が現れた。

 それから1分もしないうちに透の部屋がノックをされる。


「はいるのだ!大変なのだ!がっしゃーんされたのだ!」


 ノックと同時に扉を開けて入ってきたツキミが手枷が出現した方の手を振りながらワタワタとしている。

 その後ろからリアも現れ、まじまじと手枷を確認している。


「多分これヒラキさんの力だと思うんだけど、リアなんかわかるか?」

「そうね、私もヒラキさんだと思うわ。多分どこにいるかの把握と、使える魔力量の減少が目的じゃないから?一応私達囚人……だから」


 透は確かめるように魔力を放出してみると、確かに出力を上げようとしても普段の半分程までしか上がらず、それ以上はつっかえるような感覚になり一気に出す事が出来なくなっていた。


「んー?それじゃあなんでダンジョンから帰ってきた時じゃなくて今頃なのだ?」


 ツキミの問いに考え込む2人。

 確かに数時間とはいえ枷無しで放置しているとどこかに逃げたり隠れたり、はたまた別の事件を起こしたりする可能性だって捨てきれない。


「久々の地上を楽しめるようにっていう温情か、ただ単に忙しくて忘れていたのか、何にせよいくら考えてもわかんねーな。とりあえず威力は弱くなっちまったけど魔術は使えるし、どうせ街の中ぶらぶらして次に向けての準備するだけだし、ちょっと邪魔ってくらいであんまし問題なくね?」


 透の言葉に頷き2人は部屋へと戻っていった。



 3人はギルド職員から連絡があるまで、数日の休暇をのんびりと過ごした。

 主に美味しい物を食べ、宿でゴロゴロし、街で着る用の服飾類を見て回って、装備類のメンテナンスと次回のダンジョンに籠るようの買い出しをして、それでも尚余った時間はリアの案内で近場の観光を。


 そしてダンジョンへ再び出発する日の朝、ダンジョン前に集合した時にふと透は気付いた。

 この数日ツキミと2人でショッピングをしていたのは、もしかしてデートだったのではないか、と。


(あああああああああああ、またデートのタイミングを逃してしまった……。いや、2人で出掛けてるからそれはもうデートなのでは……!?それなら屋台の買い食いや必要最低限の服だけじゃなくて、洒落た喫茶店に行ったり何かプレゼントすべきだったのでは!洒落た場所があるかも、何を喜ぶのかも全く知らないけどッ!!!あー、やっちまった……)


 1人後悔の念が押し寄せて、悶々と頭を悩ませている。

 その様子を不審がるツキミとリア、そして後からやってきたヒラキとギルド職員の面々。


「なんだ、コイツは。こんな調子でダンジョンに行けるのか?」

「わかんないのだ……、でも多分きっと、うーん……大丈夫のはず、なのだ」

「歯切れの悪すぎる返事ね……」


 3人の声は透には届いていないのか、ちらりと見る事も無くずっと唸っている。

 その間にギルド職員との挨拶を終え、今日の進行予定を確認し、ヒラキが指の鳴らし3人の手枷を消滅させると、後はいざ出発となった。


「あちょー!なのだっ!」

「あだっ!?」


 いまだに自分の世界に入ったまま帰ってこない透の脳天に、いつものお返しとばかりにツキミの鋭いチョップが炸裂する。


「今日は下層の入り口から少し進んだ所の未確認場所までの境目まで走るのよっ!いつまでもうじうじしてないでシャキッとして!」

「あ、はい」


 透とツキミの痴話喧嘩が始まりそうになるが、リアに喝を入れられ気を取り直して4人はダンジョンへと出発していった。


 ほぼ常にダッシュという前回を上回るスピードで、途中で僅かに休憩を取りつつ下層へ向けて走っていく。

 道中ですれ違う冒険者達には異様な目で見られつつも、その迫力に押されサッと左右に分かれ道を作ってくれる。


 上層から中層への階段を数段飛ばしで走り抜け、下層への穴へ躊躇う事なくダイブする。


 小さいけれどムキムキなゴリラ、カラフルで毒々しい色と瘴気を発生させている巨大キノコ、動く廃材の塊に変身した3人。

 そして何故かリアだけはまた大熊に変身していた。


「どうしてリアだけはいつもくまさんなのだ?」

「うーん……私が聞きたいわ……」

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