2度目の 2
前回は下層に入ってからかなり慎重に歩みを進めていたが、まだ最近来た為罠の位置も記憶している。
4人は前回野営を行った所までサクサクと進んでいく。
「何も知らないとここまで来るだけでも相当時間かかったのにな……、今回はかなりスムーズに辿りつけたな」
「なのだ!」
そして透とツキミは前回と同じように土ドームと土壁を作り、その外側に多重結界で守りを万全にする。
その様子を初めて見たヒラキは内心かなり驚愕をしていたが、なんとか僅かに眉を顰めるだけで表情の変化を止めた。
そして収納魔術から新鮮な肉と野菜とパンを取り出し、魔術を使って調理を始めた。
流石に今度はヒラキの開いた口が塞がらない。
「はい!どーぞ、なのだ!」
「……あ?あぁ」
思考が停止している間に目の前に差し出されたので思わず受け取ってしまったが、確認を取らずにはいられない。
リアは当たり前のように受け取って美味しそうに頬張っているが……。
「食料は貴重だろう、俺の分もあるのか……?」
「ん?気にしないで下さい、帰還魔術陣を置いたら帰れるって聞いてるので、また補充できますし。とりあえず、4人が普通に3食1ヵ月食べれる分くらいは食料持ってきてるので」
問題は無いと言う透の収納魔術の容量に更に驚愕をする。
サササッとリアがパンを持ったまま寄ってきて小さな声で囁いた。
「私も最初はヒラキさんと同じ感じでした。すぐにこの人の異常性には慣れますよ……。それに美味しいですよ」
ニッと笑うとそのまま美味しそうにパンを頬張り出す。
その姿を見て呆然としたまま、ヒラキもパンを口に入れた。
「あ、あぁ、美味いな」
「ですよねっ!」
その後壁の中で軽く鍛錬をして3人は就寝準備に入る。
不寝番についての確認が一切無かった為、ヒラキが確認をするが3人共に首を振り不寝番は立てないと言う。
「私も最初は不安だったんですけど、一緒に何度も夜を明かしていると大きな物音がしたら起きるくらいで、基本はぐっすり寝れるっていうダンジョン生活はとても幸福だって事に気が付いたんです。数日過ごせばヒラキさんも同じようになると思いますよ」
ダンジョン内ではモンスターや他の冒険者だけではなく、一緒に行動している冒険者すらも敵になってしまう事が多々ある。
特にリアのような女性は尚更肉欲を発散させる標的にされてしまうのだ。
不寝番として起きている間だけではなく、仮眠を取っている間もそんな冒険者達から身を守る為、僅かな気配で起きるように訓練され警戒をし続けているリアが、その警戒心の殆どを解き寝てると言った。
ヒラキはその異常性を指摘はしなかったが、鵜呑みにして眠りこけるわけにもいかず、警戒を保ったまま剣を抱き座ったまま朝まで仮眠を取る事にした。
全員が眠っている間に何度か襲撃を受けた。
近づく足音が聞こえてきた段階でヒラキが目を覚まし剣を構えるが、その後攻撃が結界に触れた瞬間にツキミが飛び起き結界の強化と補修を行っていく。
ツキミの結界が全て割られ土壁に攻撃が届くと、透が飛び起き土壁の強化を行いつつ、壁の外側に左右から土弾が発射され襲撃者を襲う。
暫くすると諦めて撤退していく襲撃者たち。同じ光景が何度もヒラキの目の前で繰り広げられた。
壁が破壊された時の為に毎回臨戦態勢になるが、結局その日壁が壊される事は無かった。
そして、リアが起きてくる事も1度も無かった。
ギルドで発行されている最新版のダンジョンマップを開くと、下層にはつい先日3人が突破した場所の情報が更新されている。
「前回飛ばされたミノタウロスがいる場所に行って倒したとしても、どこの位置に転移したかわからないので、今回はスルーして道を虱潰しに探索していってマッピングを進めていこうと思いますがいかがですか?」
リアの提案に全員が頷き同意を示す。
帰還魔術陣はダンジョンの魔力をエネルギーとして起動するため、距離が近いとお互いの魔術陣に干渉してしまい発動がしなくなってしまうので、まずは全域マップの作製を優先させようという事だ。
そして2日目が始まる。
2日目からは知らない場所を探索していく事となる為、必然的に歩みが遅くなる。
「常に気を張ってるのは疲れちゃうのだぁ」
「その気持ちはすんげぇわかるけど、死ぬぞ?多分」
先ほどから集中力が切れてきたツキミが、宝箱に擬態したミミックに襲われ、尖った岩が敷き詰められた落とし穴に落ちたりしている。
ミミックは比較的弱く、そのままツキミの雷撃に瞬殺され、落とし穴は岩に刺さる前に結界の足場を作り1人で上がってきた。
罠に嵌ってはいるが命の危機ににまで陥らない温さに、段々とツキミと透の気持ちが緩んできている。
「お?なんかそこの曲がり角広そうじゃね?」
「壁の雰囲気も変わっているのだ」
周囲の壁がただの土から煉瓦のような物へと変化している。
そして曲がり角の先には、ブオンブオンと風を斬りながら大量の回転刃が振り子のように揺れている。
刃の間からちらりと最奥に設置されている宝箱が見える。
「こ、れは……、どうやって行けばいいんだ?」
「そうね……、例えばー、氷とかで刃を止める事はできないかしら?」
リアの発案に「なるほど」と呟き透はルドニールを具現化する。一緒にイメージするのは着弾した場所から凍らせるような絶対零度の氷の弾。
銃口に青い光が収束し、氷の弾が6発連射された。
弾の半分が回転刃が吊るされている所に着弾し僅かに動きを鈍らせるが、すぐに元通りに動いてしまった。
「うーん……、良いアイディアだと思ったんだけどなあ。ヒラキさんは何か閃きませんか?」
「刃を破壊してしまえばいいんじゃねぇか?」
そう言って収納魔術から両側に刃がついた巨大な斧を取り出し、腰だめに構えると刀身に炎が纏わり付いた。
斜めに切り上げた斬撃で火災旋風が生じ回転刃を襲うと、そのままヒラキは踏み込み返し刀で叩きつける。
ガゴンッといった大きな音と共に爆炎が上がり、周囲を熱風が包み込んだ。
炎が落ち着いた所で一行が回転刃を見ると、先ほどと変わらない姿で空を切り刻む刃があった。
唖然とする3人の元へお手上げといった様子のヒラキが戻ってきた。
「ヒラキさんのパワーでも壊れないって……」
「あれだけの衝撃でも壊れないって……一体これどうやって止めるんだ……」
ここで引き返すかという話も持ち上がったが、目の前に宝があるのがわかっているのに引き返すのは躊躇われその場から動けない4人。
ふと何を思ったのか猫モードに変身したツキミ、がこの場には似合わない要求をする。
「透!お肉!お肉を出してほしいのだ!それもあたし位の大きさのやつがいいのだ!」
「肉?まだ飯には早くないか?」
透の言葉を聞くことなく早く肉を出せとせっついてくる。
仕方なく猫モードのツキミ程の大きさがある肉塊を出し焼こうとすると。
「あ、焼かなくていいのだ!ありがとうなのだ!」
「え?あっ、おい」
ひったくるようにして肉を奪ったツキミはずるずると地面を引きずって回転刃へと近付いていく。
危険だからと止めようとするリアを制止して、ツキミは壁際を伝い揺れる刃ギリギリの所へとやってきた。
3人が見守る中、刃が反対側へ振れた時を見計らい先ほどの肉塊をスッと前に押し出す。
そして後ろへと引き距離を取って刃が戻ってくるのを待つ。
肉塊を置いた場所に回転刃は届かず、再び反対側へと振れて行く。
それを確認したツキミは満足そうに肉塊を引っ張り、透に土にまみれた肉塊をしまって置いてと差し出す。
「んで?何だったの今の」
「もしあの刃から何か出てたら肉塊はバラバラになってたのだ。それが無かったって事はあの刃からは何も出てないのだ!つまり、こうなのだーーーーー!!!」
いきなり叫び先ほど肉塊を置いた場所に向けて走り出すツキミ。
刃が届く前にピタッと静止し、壁に張り付きながら床に伏せ匍匐前進のように歩き出した。
ブオンブオンと風を斬る刃が迫るが、ツキミの元には届かない。
そのままゆっくりと宝箱へ向かって前進を続けた。
「確かに振り子って左右に隙間があるけど……」
「私達じゃ通れる程の隙間じゃなかったから、その手は思いつかなかったわね」
関心する3人を置き去りにして、無事ツキミは宝箱の元へと辿り着いた。
中身を収納魔術にぽいっとしまい、同じようにして3人の元へと戻ってくる。
「宝箱の中身は?何だった?」
「んー、よくわかんなかったのだ」
ツキミが取り出したのは、巨大なピザカッターのような武器。
透が手に取り魔力を流すと、先端の刃が高速回転をし始める。
まるで、今も目の前にある振り子の回転刃のように。
「よく切れそうだな……」
「剣……みたいな物?なのかな?武器ってことでいいんだよね?」
確信を持てないまま武器だと思われる巨大ピザカッターを収納魔術へとしまい、次の場所へ向けて踵を返した。
戻る最中にリアがでれっとした様子でツキミの事を褒め称え、まんざらでも無いツキミも嬉しさを隠さずスキップをして……、先ほど嵌った罠に再度嵌ったのだった。
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