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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第二章
52/87

2度目の 1

 朝早くに3人がギルドマスターの部屋へと集められた。

 手には勿論ヒラキ特製の魔力封じの手枷が取り付けられている。


「お前らへの懲罰内容が確定した」


 誰のかわからないが、ゴクリを生唾を飲み込む音が響く。


「ダンジョン下層の大まかな全域マップの制作、下層帰還用魔術陣設置の手伝い、下層探索で入手した物の販売利益9割を収める。期間は無期限とし、この3点をクリアすれば釈放とする」


 ヒラキの言葉を噛み締めた3人はバラバラの反応を返す。

 透は死刑にならない事に安堵し、ツキミはよくわからず首を傾げたまま。

 そしてリアは、ヒラキの告げた懲罰内容の重さに驚愕し硬直している。


「それって……私達は実質死刑という事ですか……」


 リアの恐る恐る口に出した言葉に、事の重大さを理解していなかった透とツキミは驚きの声を上げる。

 ガタガタと震える透に、ヒラキに詰め寄るツキミ。

 そんな3人を宥めるようにヒラキは口を開いた。


「今回は俺が同行者として一緒にダンジョンへと潜る」

「…えっ!?」


 ルメジャン国中央にあるギルド本部のマスターが直々に付き添いとなり、攻略に何年かかるかわからないダンジョンへ一緒に入るというのは、異例中の異例だ。

 尚且つ今回の懲罰は生きて帰る事ができないと思われている内容なだけに、その言葉が与える衝撃はかなりの物になる。


「お前たちが初めてのダンジョンで最長記録を更新して帰ってきた。その事を俺は高く評価をしている。つまり、お前たちはこの懲罰を乗り越え必ず生きて帰ってくると確信している」

「ヒラキさん……。でも、ギルドの運営等は大丈夫なのでしょうか?いつもお忙しくされていたと思いますが……」


 リアの心配にサブマスターが苦笑いしながら更に条件を付け加えた。


「日常業務はなんとか私を含めなんとか回します。食料等もありますので、帰還魔術陣を設置したらその時点で一度地上へと帰還、物資の補給等をお三方にはして頂きます。その際にマスターにしかできない仕事を消化してもらう予定です」


 かなり忙しいにも関わらず、ヒラキだけでなくギルド全体で3人の懲罰執行をバックアップしようと言うのだ。

 本来囚人に対してあり得ない程の好待遇に、それを受け入れてくれたギルド職員の優しさを感じ思わずリアの目に涙が浮かぶ。


 ただそれと同時に国の最重要人物であるヒラキの命を散らすような事態に陥ってしまう事は許されない。


「この命に代えても、全力を尽くし、ヒラキ様を守り通し罪を償いきります」


 リアの誓いに透とツキミは置いてけぼりな感じのまま一応頷き、ヒラキはッハと鼻を鳴らし獰猛な笑みを浮かべた。


「まだまだ子供に守って貰う程、落ちぶれちゃいねぇよ。寧ろ腕1本で生き抜かなきゃならねぇ自分の心配でもしておけ」

「……っ!はいっ!」


 笑顔を浮かべ今後の予定についてリアとヒラキ、そしてサブマスターが話し合いを始める。

 当事者の筈なのに会話に入る事もできず取り残された透とツキミは、こっそりと囁き合った。


「なんかいい雰囲気になってるのだ」

「そうだな……、まぁよくわかんないけど超強い人が助っ人に入ってくれて、それで下層を攻略してくればいいだけなんだろ?そんなに感動的な話か?」


「透は鈍感なのだー、あれはきっと惚れたのだ」

「え……?親と同い年位だろ……?」


 2人の頓珍漢な会話を誰も拾う事は無かった。


 今後についての話し合いを終えたヒラキやギルド職員とリアは、決定事項を透とツキミへと伝える。


「ダンジョンに行くまでに父の葬儀を挙げるわ。派手な事が好きな人ではなかったから、小さく身内だけで挙げようと思うの、もし迷惑じゃなければ……2人も来てくれるかしら?」

「家族じゃないけどいいのだ?」


 ツキミの問いに優しい笑顔で「勿論!2人がいなかったら私は今頃こうして生きていられなかったもの」と返した。

 照れるように2人は承諾の返事をする。


「私が葬儀の準備をしている間に、2人にはダンジョンに行くための食材や装備の準備をお願いしてもいいかしら」

「あぁ、任せとけ!」

「のだ!」




 そして数日が過ぎ、ジェイクの葬儀が執り行われる事は大勢の人に知られ渡ってしまっていた。

 誰が話したわけでもないが、リアが準備に奔走している姿を見ていた人々から、次々に噂として広まってしまったのだ。


 結局当日は身内だけで静かに執り行うはずだったのが、冒険者時代や案内人としてお世話になったからお別れを、といった人が長蛇の列を作ってしまった。

 父の偉大さを感じリアは僅かに涙ぐみながらも、訪れてくれた人々に笑顔で案内をする。


 聖職者が祈りを与えながら棺に入れられた遺体は燃え盛る炎の中へと入れられる。

 そして参列した人々が聖職者と共に祈りを口にすると、炎の中に煌びやかな光が混ざり祝福を与えられる。


 炎が消えると僅かに光り輝く骨が残され、それを聖職者が祈り続ける中喪主であるリアが粉々になるまで磨り潰した。

 この時、思わず止めようと体が動くくらいには、透に与えた衝撃は大きい。


 中央ギルド本部の天辺にある小さな物見台から、ジェイクの粉々に磨り潰した遺骨を振りまく。

 それをギルド職員が風魔法で巻き上げ、より遠くへ飛ばすように風に乗せる。


 ルメジャンの空をキラキラと輝く光が煌き、見守る人々が揃って祈りを捧げる光景はとても幻想的な風景を創り上げていた。


 死者は現世を解き放たれ、世界の果てまでも風に乗って自由に飛び立てるように。

 砂漠の真ん中に作られた小さな国の願いを込めて、ルメジャン式の葬儀は幕を下ろしたのだった。



 そして更に数日が過ぎ、ヒラキが大方仕事を片付け3人の元へと合流する。

 ギルド職員の面々に見送られ4人はダンジョン下層へと向けて出発をした。


「そういえば、なんとかっていう商人はどうなったのだー?」


 ヒラキの醸し出す空気になんとなく会話ができなかった透とリアだが、能天気なツキミはそんな空気をもろともせず2人が聞きたくても聞けなかった事を切り込んだ。


 詳細を教えてくれる事は無かったが、しっかりと捕獲され透達が収容されていた場所から毎日働きに出ているらしい。

 終身刑となっているので一生奴隷のように働かされる、という事を聞いてリアの顔に少し笑顔が浮かんだ。


 収容所に入れられてからは大人しくしていたが、やはりジェイクを殺された恨みは忘れてなどいなかったのだろう。

 ツキミもざまあみろ!といった様子で鼻を鳴らした。


 前回と同じルートで下層へ向けて一直線に降りていく為、透とツキミにも余裕が出来サクサクと進んでいく。

 暫く現役の冒険者を離れてダンジョンに入っていなかったとはいえ、元一流の冒険者であるヒラキも問題なく3人に付いて速足で歩いていた。


「凄い速さでここまで来たわね!ここの穴を落ちれば下層へ辿りつくけど、ここで野営しますか?それとも下層まで降りますか?」


 目の前には以前飲み込まれた巨大な穴が姿を変えず、もわぁもわぁとまた黒い何かを吐き出している。

 異臭がするがここが中層の最終地点、下層に降りると安全地帯が無くなる為ここで一晩身体を休めていくか、というリアの提案も頷ける。


 だが、やはりこの光景と異臭を前にここで休んでいくと言える程、透もツキミも我慢強くない。


「降りようぜ。また前みたいに壁作って結界張れば下層でも休めるだろ」

「透に賛成なのだ!」


 ちらっとリアがヒラキを見て判断を促す。


「俺の事は気にしなくていい。どちらでも問題は無い、お前たちに合わせよう」

「わかりました、じゃあ下層へ降りましょう。多分またモンスターになると思うけど気を付けてね」


 リアの決定に承諾をし、4人は穴の中へ飛び込んだ。


 下層へと降り立つと、サイクロプスと巨大ミミズ、誰よりも大きいイソギンチャクに、片腕の無い大熊がいた。

 暫くお互いを観察していると、体から黒いもやが抜け元の姿へと戻る。


「リア……また熊になったのか。皆違うモンスターになってたのにリアだけ捻りがねえな」

「私の所為じゃないわよっ!」

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