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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第二章
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懲罰

 透の映像を確認した職員たちは、リアの提出したレポートと共にその事実確認の為に奔走していた。

 ジェイクの遺体の外傷と映像の中の戦闘で負っていた傷の場所が一致するのか、ジェイクの所に卸していた商人達へベネットから圧力をかけられていたのは本当なのか等、調べれば調べていく程、透の映像と聞き込みの証言が一致していく。


「あの魔術すごいっすね!本当に映像で見た通りに事件は起こってて真実みたいだ」

「あれが俺達にも使えたらなー、事件が起きた時の調査がこんな風に凄く捗るんだが」


 最初は映像の内容を疑っていた職員たちも、調査を進めていくうちに真実だと信じ、その魔術の利便性を羨むようになってきた。

 魔術を作り上げた所すら映像に写っていたので、同じ様に自分達も出せないかこっそり練習していた職員たちだが、まだ1度も成功はしていない。


「いくら最近に起きた衝撃的な出来事だからって、あんなに最初から最後までしっかりと覚えているもんなんすかね?」

「どうなんだろうなー。そもそもあの魔術が記憶を思い出しながら可視化させているのか、自分が見た事なら思い出さなくても映像化できるのかがわからん。前者ならまだしも後者なら一体どうやっているのかすら見当もつかん」


「あー、なるほどっすねー。特に俺達の仕事じゃ、物が記憶してる過去?を引きずり出さないといけないっぽいですし、ますますわけわかんないっすね」

「そうだな。地道に足で追いかけて証拠を集めろっつー事か」


 サンサンと太陽が照り付ける中、汗を拭いて職員2人は再び歩き出した。



 数日後、ヒラキが再び収容所へと訪れていた。

 透が収容されている部屋の隣をノックして、返事を待たずに扉を開ける。


 そこには苛立ちを募らせ室内を歩き回っているベネットがいた。


「ヒラキ殿!私をこんな所へ閉じ込めるなんて、一体どういう事なのですかッ!忙しい身なので早く出してもらえませんかねェ!」


 キャンキャンと騒ぐベネットを視線で黙らせ、要件を告げる。


「お前にはジェイク龍河の殺害と、リア龍河・ツキミ・長瀬透の殺人未遂の容疑がかかっている。他にも商業部の奴らに金握らせて随分色々とやってたみたいじゃねぇか」

「なッ……!言い掛かりも甚だしいですねェ!」


「そう焦んなよ、ゆっくり()()()()をしていこうじゃねぇか」


 そう言ってヒラキはベネットの腹に拳を叩きこんだ。

 身体をくの字に曲げ吹っ飛ばされるベネット。


 慌ててサブマスターがヒラキを宥めにかかるが、簡単に振り払われてしまう。


「ッッ!はな……しあ……いじゃ、ない、のかッッ!」

「あぁ?これも話し合いだ。お前の身体に直接話を聞いてんだよ」


 どこぞのチンピラのような返答をするヒラキ。

 魔力が出せないように魔術陣が働いてる中では、ベネットが頼りにしている指輪達も何の効力も持たない。


 種族的にも、鍛錬的にも、この部屋の中でヒラキに敵う者は誰もいなかった。

 口角を上げ悪魔的な笑みを浮かべたヒラキがゆっくりとベネットへ近づく。


 呼吸がままならないまま震えつつ壁に沿って距離を取ろうとするが、狭い室内で亀のような遅さで移動するベネットに追いつかないわけがない。


「なぁに、別に痛めつけに来たわけじゃねぇ。ちゃんと裏取って調べてあるからよ、とりあえず話してやるから反論があるなら後で聞こうじゃねぇか」


 ヒラキの大きな尻尾が不機嫌そうにブンッと音を立てて振るわれた。

 手元のレポートを読み上げている間に、先ほどの痛みが治まってきたが、今度は読み上げられる内容に血の気が引いていく。


 普段のギルドが調べる内容よりも更に詳しく、ベネットの悪事が暴かれていた。

 ベネットや商会の幹部達しかしらないような汚職も出てくる事に恐怖を覚える。


 ぽんっと目の前に投げ渡されたのは、厳重に保管されていたはずの裏帳簿だ。


 一連の事件の裏付けが終わった後に、ギルド職員に透が連れまわされ幹部達の目の前で過去を映しだし、映像を元に帳簿を探し出し幹部達に白状させて拘束しているのをベネットは知らない。


「か、金ならいくらでもある!いくら欲しい!?」

「ッハ、別にいらねぇよ。死で償えと言いたい所だがな、国の為にならない命の使い方はしねぇんだ。私財の全没収、更に今後死ぬまで監視付きで稼げ。その稼いだ金の7割を国へ納めて貰う、手を抜けるなんてできないと思え、毎月のノルマが稼げなきゃきついお仕置きが待ってるぜ」


 ヒラキが指を鳴らすとベネットの首に重い鎖がかかった。


 絶望に染まった顔を一瞥するとヒラキは扉に向かっていく、「つまり終身刑だな、準備ができたら迎えに来る。簡単に死ねるとも思うなよ」とだけ言い残し去っていった。


 残されたベネットが舌を噛み切ろうとするが、己を傷つける行為に踏み切る手前で首の鎖が絞まり自殺を阻止してくる。

 どんなに苦しくても絞め殺す程の力ではなく、魔術の所為で意識を手放す事もできない。



「殺してしまうかと思ってヒヤヒヤしましたよ……」

「殺しはしねぇよ、勿体ない。死んで楽になるより死ねずに永遠働き続ける方が辛いだろう?それに人間は資源だからな、国の為になるのであれば最後の搾りかすまで搾り取ってやるよ。だが、あの真実を見てしまうと1発くらい拳が動いてしまっても仕方がないだろう?」


 ヒラキの問いに苦笑いだけで返答をするサブマスター。

 返事が来ない事を予めわかっていたかのように、それ以上同意を得ようとはヒラキもしなかった。


 砂漠の中央に出来た小さな国では自国で作物を育てることが出来ない。

 幸いにも広大な地下ダンジョンが存在しているため資源はあるのだが、当たり前だがダンジョンでは数多くの者が亡くなっていく。


 商人にしろ、冒険者にしろ、ダンジョンで稼ぐ者や外国との交易で利益を産む者、外国に頼りきった食生活を支える者、そういった人々は逃したくない資源である。

 犯罪者ですら無駄に養える余裕も無ければ、殺してしまうのも勿体ない。


 なので、大なり小なり仕事をさせ、規定の年数や功績を上げれば釈放するといった形で運営されていた。

 貴重な人財を殺してしまうのは、国が得られる利益を大幅に損失されたと看做し重罪になるのだ。


 死んだ方がましと言うほど過酷な状況で、監視されながら生涯働き潰されるのが、殺人を侵した者への懲罰であるのが従来の規定とされている。


「ベネットの差し金で仕方なかったリアさんには同情はしますが……、かといってあの3人で10人を殺してますからね。終身刑は免れないですよ。どうされるおつもりですか?」

「そうだな……」


 ギルドマスタールームへと戻ったヒラキは、職員の中でも立場が上の者たちを集め会議を開いた。

 リア、ツキミ、透の懲罰の内容を審議しているのだが、中々話は進んでいかない。


「まさか、あのリアさんが殺人を犯してしまうとは……」

「いやでも、敬愛するジェイク殿を殺されてしまえば仕方ない気がしなくもないですよね」

「だからって懲罰を軽くすると周りに示しがつかないぞ?」


「「「そうなんだよな~」」」


 ギルドの職員は皆ジェイクを尊敬しており、その娘であるリアの実力を認め好感を抱いている。

 私情を挟んではいけないと誰もが理解してはいるのだが、幼い頃からジェイクの後を追いかけ血の滲むような鍛錬を欠かさずに過ごしているのを知っている。

 今では国内トップクラスの戦闘力と、膨大なダンジョン知識を有してる為、ジェイクの娘という事だけではなく一個人としてギルドの信頼を勝ち取っているのだ。


「今回は最長到達記録まで更新してきちまうしなぁ、しかもあの魅了の魔石!あれだけで罪を軽減させる説得力があるくらい国に貢献してるよな」

「確かに凄いけど、でもリアさんにギルドマスターやジェイクさんのパーティを超える能力は無かったような……?」


「……つまり?あの2人も化け物級って事か?」

「まぁ、長瀬透でしたっけ?あの男の子は我々でも再現できない新しい魔術作ったり、見たこともない武器を具現化したりしてましたしね……」


 職員たちの話を聞いていたヒラキは透のステータスを思い出した。

 人間の限界を超えた数値を叩き出しており、あの勇者と同じ女神の加護というものも持っている。

 いくら囚人としての扱いだとは言え、人のステータスをペラペラと喋るわけにもいかないので、職員たちに事実を告げる事はできないのだが。


「わかった。では、あの3人にはこの懲罰を科す」


 ヒラキの話を聞いた一同は、その内容に驚愕した。

 確かにヒラキが提案した懲罰をクリアできれば、この国への利益は10人殺害の損害を優に上回るし、尚且つ3人を一生拘束しなくてもよくなる。


 だがしかし、問題は()()()()()()()という事。

 常識的に考えると生きて帰れる可能性は無い内容だった。


 そして、その懲罰を科す為には上位のギルド職員が1名以上同行しなければならないのだが……。


「一体誰がこんな内容に同行できるんですかっ!?!無駄死にするだけですよ!?!?」

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