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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第二章
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怪しい商人

 泣き崩れるリアに何と声を掛けていいのかわからず、2人は立ち尽くしてしまう。

 周囲に染めている程の出血があり、他殺の可能性がかなり高い。


「ジェイクさんって結構強そうだよな……そんな簡単に殺られるのか……?」

「そうとは思えないのだ……でも自分で死んじゃったようにも見えないのだ……」


 リアに聞こえないように小声で確認し合う2人。


 そこに3人の男が現れた。

 数メートル離れていても鼻を衝く強烈な香水の匂いに思わず2人は「うぇっ」と呻き声を上げる。


 透とツキミとは初対面だが、何度もリアに求婚をしすげなく断られているルメジャントップの大商人が、ガラの悪い用心棒を2人左右に引き連れて事務所に向かってやってくる。


「邪魔だ、退け」


 用心棒が2人を退かすと、商人は我が物顔で事務所へと立ち入る。

 事務所から放たれる異臭に一瞬顔を歪ませるが、すぐに表情を戻しリアへと声をかけた。


「リアさんッ!一体どうされたのですか!?お怪我はありませんかッ!?」


 大袈裟なまでに商人は声を上げたが、リアの耳には入っていないのか振り返る事も無く、ただただその口からは小さく「お父さん……どうして」と繰り返し呟かれている。

 リアの反応が無くても商人はそのまま言葉を続けた。


「やっとジェイクさんからお義父さんと呼ぶ許可を頂いたと言うのに……何故こんな事になってしまったのか……」

「お父さん……?」


 ジェイクの名に反応して僅かに顔を上げたリアの前に座り、目線を合わせて再び口を開く。


「えぇ、リアさんがダンジョンに行かれてる間にも何度かこちらを伺ったのですが、前回訪れた時についにリアさんとの婚約を認めて頂いたのです」

「お父さんが……?わた、しの、婚約を……?」


 優しそうに微笑んだ商人はリアの頬に愛おしそうに触れ、目を合わせながら続ける。

 商人が付けている指輪の1つが僅かに怪しく光った事に気が付いた者はいない。


「ジェイクさんは前々からリアさんに命を落とす危険があるような案内業を無理強いしてしまっているのではないか、と悩んでおいででした。十分すぎる程リアさんは働いたから、ゆっくりと自分の幸せを見つけて欲しい、と今回の婚約の話に許可を出して頂いたのです。……なのに、それなのに、まさかこんな……」

「わたしはッ、無理強いなんてされてないわッ、自分からお父さんの跡を継ごうと……それが、幸せだったのに……」


 頬を撫でてた手がリアの頭に回り、ゆっくりと撫でた。


「えぇ、私はリアさんが案内人をやる事に幸せを感じている事も知っています。なので、案内人の仕事を無理に辞めさせたりはしませんよ。勿論、国一番の商人の妻となるのですから、夜会等別の義務は少し増えてしまいますが……。まぁ、今は心を乱されている事でしょう。また明日伺いますので今日はゆっくりとお休みになって下さい」


 ニコッと笑うと商人はそのまま立ち上がり事務所を出た。

 透とツキミの2人とすれ違う時に、ドロッとした瞳を向けたがその中を感情を読み取る事ができず、そのまま去っていった。



「アイツ……すんげぇ怪しくね?」

「とっても怪しいのだ……」


 囁き合う透とツキミ。


 ジェイクが殺されたタイミングで、リアに婚約の許可が出された事と言い、リアが帰って来るのが分かっていたような、そしてジェイクが死んでいるのが分かっていたようなタイミングと口ぶり。

 弱っている女性程落としやすい者は無いと言うように、優しさを振りかざしながらこっそりと決定事項かのように婚約の話を刷り込んでいた。


「リア、えーっと……その……ジェイクさんが亡くなってしまったのは、とても辛いと思うんだけ」

「黙って、分かったような口でお父さんを、私の心を、語らないで」


 透がリアに先ほどの男に気をつけろと注意を促そうと口を開いたが、最後まで話しきる前にリアに拒絶をされる。

 戻ってくる前とは別人のような冷たさに思わず口を噤んだ。


 これ以上声を掛ける事もできないと判断した2人は一度外へと出て、どうするか話し合った。


「このままリアが結婚してしまってもいいと思うか?」

「わかんないのだ……、でも、きっと、今は頭がちゃんと動いてないと思うのだ……。今決めると後悔しちゃう気がするのだ」


「だよなぁ」

「なのだぁ」


 拒絶されお節介になるとは分かっていても、1度仲間と感じた人のピンチになんとかしたくなってしまうお人好しさが覗く2人は真実を暴く為に動き出す。


「なんか過去を映し出すような魔術だったり、道具だったりって存在しないのか?」

「んんん……、聞いた事ないのだ」


 ツキミの返答を聞いて考え込む透は、転生した時に出会った女神の言葉を思い出す。

 この世界はイメージを具現化できると、つまり強くイメージできれば何でも創る事ができるはず。

 当たり前のように具現化しているルドニールだって、銃を見た事も無いこの世界の人々からすれば未知の存在なのだ。


(イメージさえできれば……って思ったけど、ここで何が起こったか知らないからなぁ。知らない物をイメージするって、どうやったらいいんだ……)


 うんうん唸りだす透を見て使えないと思ったのか、ツキミは1人で周囲に聞き込みへと行った。



「とりあえず、さっきの出来事でも映し出せるかやってみるか」


 怪しい商人とリアのやりとりを思い出して、空中に映像として具現化させようと試みる。

 スウッと魔力が放出される感覚が起き、透の目の前にはホログラムのような立体映像が浮かび上がった。


『えぇ、リアさんがダンジョンに行かれてる間にも何度かこちらを伺ったのですが、前回訪れた時についにリアさんとの婚約を認めて頂いたのです』

『お父さんが……?わた、しの、婚約を……?』


 ()()()()()()()()()()()がそのまま音声と共に再生される。

 商人のつけていた指輪が一瞬だけ光る。


 再生できた事に思わず歓喜の声を上げ一度やめようとしたが、違和感を覚え映像を巻き戻す。


「指輪が光った?いくら動揺してても普段からは考えられないリアのあの態度……もしかして魅了的な物にかかってんのか?」


 後でツキミに相談しようと決め、ジェイクが殺された時を再生しようとするが、先ほどのような映像は浮かび上がってこなかった。

 再び透が唸っていると、ツキミが走って戻ってきた。


「透!わかったのだ!」

「お?どした?」


 にっしっしと笑うと、聞き込みして分かった事を話し出す。


 7日程前からルメジャントップの大商人がガラの悪い護衛を2人連れて何回か訪れていた事、そして2日程前に大きな物音や争ったような音がしていた。

 その後周囲の人が様子を見に行こうとしても、常にガラの悪い人たちが周囲をうろついており中の様子がわからんかったそうだ。


「絶対にあの商人がやったのだ!」


 そう言うとツキミは部屋の中に入っていき、リアに今聞いてきた事を話す。

 だが、先ほどの透と同じように全て話しきる前に拒絶された。

 とぼとぼと透の元に戻ってくる。


「リアが聞いてくれないのだ……」

「やっぱりか、多分なんだけどあの商品に洗脳みたいな事をされてるんだと思う。どうにかして解けないかな」


「あっ!気付け薬みたいな薬草を持ってるから、嗅がせてみるのだ!」


 どこからともなく1枚の草を取り出し再びリアの所へ行った。


(俺はこの映像をなんとか出せるようにしたいが……、2日程前って言ってたから少し絞れたと思ったんだけどなぁ。やっぱ俺が見てないから出せないのかな……)


 目撃者を探そうにも周囲の人は近付く事もできなかったという。

 当事者に協力をしてもらう事なんてできるわけがない。

 溜息を吐きながら壁へと手を付き考える。


(そいや日本には付喪神がうんたらって、物が霊になるような話があるんだっけか。とはいえ霊感ねえからなぁ……。なんか魔術使って霊と交信とかできんのかな)


 ダメ元でそのまま壁に魔力を流してみる。

 よくわからないままこの建物全てを覆うように壁の中に魔力を這わせると、もう1度2日前の出来事を再生しようと念じた。


 ブウンという音がして、透の横に映像が浮かびあがってきた。

 それは建物の中で1人店番をしているジェイクの元に、丁度商人が訪れる所だった。

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