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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第二章
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一難去ってまた一難

 ルメジャン中央ギルド本部に設置されているとある魔術陣が光を放つ。

 その魔術陣が設置されている部屋には1人の治癒術師がおり、急いで起動された魔術陣の前へと駆け寄った。


 その魔術陣から現れたのは、2人の美女と1人の青年。

 見るからに疲労が溜まっているのがわかり、血こそ止まっているが至る所に傷が多くある。


 だがしかし、普段転移してくる生か死か一刻を争うような人達に比べれば、急を要して無い事は明らかだ。

 休養を取れば自力で帰還魔術陣まで辿り着く事ができそうな程には。


「いやぁ、死ぬかと思ったのだ~」

「最後のはもう無理だったな」


 呑気そうなその声に治癒術師の眉間に皺が寄ってしまうのは仕方の無い事ではあった。

 そんな治癒術師の様子にとても申し訳なさそうに苦笑いを浮かべるリア。


「すみません、自力では帰れなさそうな未開拓の地に強制転移させられまして……、緊急帰還を使わせてもらっちゃいました……」

「あ、あぁ、それなら仕方ないですね。もうすぐ職員の方が来るでしょうから詳しくはそちらへ、皆様も結構怪我をされてるようなので治癒させて頂きますね」


 そう言いながら3人に手をかざすと、温かな光が3人を包んだ。

 目に見える速さで傷が塞がり、痛みが引き、疲労が薄れていく。


「おおっ!ファンタジー!」


 透は自分の身体の変化を見つつ、つい声が漏れてしまう。

 治癒術師だけは透の言った意味が理解できず疑問符を浮かべているが、ツキミとリアは訳の分からない事を言うのはいつもの事だと言わんばかりにスルーする。


 治癒が終わる頃にギルド職員が緊急転移部屋にやってきた。

 3人は治癒術師へ礼を言うと、職員に個室へと案内された。



「おかえりなさいませ、リア龍河様のパーティーですね。治癒術によって回復されたかと存じますが、このままご報告を頂く形でもよろしいでしょうか?」

「えぇ、問題ないです。今回は下層の最終地点の更新や貴重品の清算等、色々と報告がありますので……」


 リアが告げると職員はニッコリと微笑み、「上の者を呼んできますね、少々お待ちください」と言い退室していった。

 暫くすると同じ職員が戻ってきて部屋の移動を告げる。


 3人が案内された場所はギルドマスターの部屋だった。

 ノックの音と同時に「入れ」と声がかかる。


 奥の椅子には2週間ほど前に出会ったケモ耳と尻尾をもっふもふさせたオッサン(ギルドマスター)、ヒラキが座っていた。

 その鋭い眼光に自然と背筋が伸びる3人はヒラキに促され、ソファへと腰を下ろした。


「案内人リア龍河、報告を」

「はいッ!」


 今回のダンジョンでの行程を大まかに説明し、最長到達地点から先の大きな扉との戦闘とその横にあった小さな扉から転移させられたモンスタートラップ部屋についてを詳しく話す。

 ヒラキは厳しい表情を変える事なくただ頷いており、側に控えていた職員が記録を取っていた。


「大量のモンスターとの戦闘が終わると、魅了の魔術を放つ大きな魔石が出現しました。それを収納魔術へ納めると部屋の様子が変わり、出口から先には巨大なボスと思われるミノタウロスがおり、戦闘を断念し緊急帰還を致しました」

「ふむ、報告感謝する。その魔石を含め今回の収集物の実物を確認したい、場を整えるのでしばし待たれよ」


 3人が頷くのを確認すると、ヒラキは記録を取っていた職員へ指示を出す。

 別部屋と対応可能な職員を集める為に、速足で退室していった。


 4人の間に何とも言えない無言の気まずい空気が流れる。

 ヒラキは目を閉じ何かを考えているようで、3人で何かお喋りをする雰囲気でも無い。

 再びノックの音が鳴るまでの数分が数時間にも感じられる程だった。


「失礼致します、用意が整いました」


 案内された部屋には、鑑定士が3名と治癒術師が控えていた。

 通常は鑑定士1名のみでダンジョンから持ち帰った物を査定すると考えると、かなり厳重な体制になっているのがわかる。


「魅了の魔石があると聞きました、まずは皆さまに状態異常への抵抗力を上げる魔術をかけさせて頂きます。その後こちらの台の上に魔石をお出し下さい」


 治癒術師が説明をし、透達3人が頷くのを確認してから魔術をかけはじめる。

 その場にいる全員の身体に光りの粒子が降り注いだ。


 治癒術師が頷くのを確認してから、透は台の上に宝箱ごと収納魔術から取り出した。

 手を触れるだけで宝箱が開く。


 魔石の美しさに「ほう」といった溜息が漏れるが、魅了の魔術にはかかっていないのか誰も手を伸ばそうとはしなかった。

 鑑定士3人が眼鏡のような魔道具を取り出し、魔石の前に集まった。


「この大きさの魔石は稀に見ますが、なにより中で黒い靄が蠢いてるような不思議な感覚を与えてくる物は今まで見たことが無いですね」

「えぇ、それに魅了の魔術を放っているのは本当みたいですな、治癒の加護や戦闘力の加護等は稀に見ますが、加護を与えるのではなく魔石が乗っ取ってくるような感じですな」

「これは我々には値をつける事ができませぬぞ……」


 魔石の有用性や加工の仕方、活かし方を鑑定士が話し合い目安の金額を出そうとするが、結局結論は出なかった。

 最終的にギルドオークションへと出品をし、その売り上げの8割を案内人を冒険者で分配するという結論へ至った。


 その他のアイテムについてはリアのメモと透が出した物の相違等も無く、問題無く規定通りに買取を行い即金で用意された物を分配した。


「では、ギルドオークションへの出品手続きを行い次第、ご帰宅頂いて問題ありません。ご提供頂きます魔石は、オークションの目玉になる事間違いなしですので、宣伝期間を設け10日後のオークションへと出品させて頂ければと存じます」


 少しでも高くなるなら問題は無いと、ギルド職員の提案を受け入れる3人。

 その間はルメジャン国から出てはいけない旨や、オークション終了後支払い手続き等もある為ギルド本部に必ず顔を出す旨を伝えられた。


 手続きを終えギルド本部を出るとギラギラと照らす太陽の光に思わず顔を顰める透。


「久々のお外なのだー!暫くはダンジョンに入る事もせずに遊ぶのだ?」

「あぁー、そうだな……魔石以外の換金でもぼちぼち金は入ったしのんびり国内を観光してもいいな」


「リアはどうするのだ?」

「……えっ?」


 ツキミの中ではリアはもう仲間の1人であり、この後も一緒にいるものだと思っており何気なく声を掛けたのが、話を振られるとは思っていなかったリアが狼狽える。

 リアの反応から案内人という事を思い出し「あっ」と声を小さくあげた。


 お互いに何も言えない気まずい空気が流れるのを見て、透が口を出す。


「なんか腹減ったなー、どっか美味い店とか知ってる奴がいれば案内して欲しいぜー」

「あぁ、それなら……お肉ならこの道を真っすぐ行って3本目を右に曲がった所がいいわよ、野菜や果物が美味しいのはこの1本左の道沿いにある赤い店ね」


「流石案内人ってだけあるな、ついでに一緒に飯でも食いながらこの国の観光できる場所とか美味い物とか教えてくんね?」


 少し考えた様子のリアだったが、ツキミのキラキラとした瞳を見て快諾した。


「全く……ダンジョンの案内人をこんな風に使う人達なんて貴方達が初めてなんじゃないかしら」


 笑いながらリアが告げ、リアお勧めの肉料理の店でご飯を食べながら、ダンジョン内の思い出やオークションまでの日程で回れる観光スポットを話し合った。


「じゃぁ、また縁があればよろしくねっ!別料金にはなっちゃうけど、指名もできるのよ」

「またリアと一緒にダンジョンに行けるのだ?オークション終わったらまた行こうなのだ!」


 ツキミがノリノリですぐにダンジョンへ行こうと提案をする。

 透も急ぐ予定も無いので、特に否定もせずどうせならもっと稼いで行こうといった感じで同意した。


「ありがとうっ、ちょっと指名の際に使う書類とかあるから少しだけお店に寄ってもらってもいい?」

「もちろんなのだ!」



 3人がリアとジェイクが経営している店へと辿り着きドアを開けると──もわっと鼻を衝く異臭が漂った。

 店の中が血の海となっており、その中心にジェイクが倒れている。


「おとう……さん?……え?おとうさん?ねぇッ!お父さんッ!!!!」


 リアが駆け寄ってジェイクの身体を起こすも、既に事切れたジェイクは何の反応も返さなかった。

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