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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第二章
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中層探索

「なんか嵐のような人だったわね……」


 少し疲れた様子でリアが呟くと、透とツキミが頷きながら声を揃えて「「いつも神出鬼没だから(なのだ)」」と答える。

 まだ1日目が終わり14日間の行程が始まったばかりのダンジョン生活だが、オンハルトを含めた3人によって既に理解の範疇を超えているリアは、思考を若干停止させながら気持ちを切り替えた。


「今日から数日は下層へと続く場所へと向かいながら、その周辺のお宝を狙っていくわ。その間に2人の能力を見ていつ頃下層に入るかを決めていくからよろしくね」

「あいなのだ~!」


 元気の良いツキミの返事に被せて透が頷きで返す。

 3人は早速安全地帯を出発した。



 迷路のように入り組んでるダンジョンをリアは迷いもなく進んでいく。

 前日と同じように所々でリアからの指示が飛び、それに従って端を歩いたりダッシュで駆け抜けたりして進んでいく一行。


 上層から近い所の宝は既に他の冒険者に取りつくされてしまっており、3人はより内部へと進んでいく。

 2日目は罠にかかる事も無ければ宝に巡り合う事もなく移動だけで1日が終了した。

 また安全地帯で前日同様魔力で調理し、ダンジョンの土でかまくらを作り周囲にいた他の冒険者を驚かせていた。



「あ!あれはお宝なのだ!」

「ちょっ、ツキミちゃん!ちょっと待って!」


 3日目に入ってやっと自分たちが取ってもいい宝箱を発見したツキミは、リアの制止も聞かずお宝に向けてすっ飛んでいった。

 慌てて追いかける2人だが獣人族の脚力に追いつく事は出来ず、ツキミが宝箱に触れてしまった。

 その瞬間、目の前からツキミ姿が消える。


 ガンッ!!


 鈍い音が響いたと思いきや上から降ってくるツキミ。

 うまく着地が出来ずドサっという音を再び響かせて地面に落ちた。

 ツキミから光が霧散し、少女だった姿が小さな猫へと変わる。


「ツキミちゃん!大丈夫!?」


 慌ててリアが駆け寄ると、薄っすらと涙を流しながら頭を両手で抑えている。


「いだい……痛いのだぁ……」

「触っても大丈夫?よしよし……」


 リアはゆっくりとツキミ全体を慈しむように撫でる。

 心配して手を差し伸べたが、少し触れただけでそのふわふわでモフモフな感触に心奪われて一方的に楽しんでるわけではない、決して。


「おい、涎垂れてんぞ」

「……ッッ!そ、そ、そんな事はないわよっ」


 痛みでそれ所ではないツキミは気が付いていないが、透がリアの内心を見抜いて呆れたように突っ込んだ事で我に返ったりしていない、きっと。

 それでも手を止めないリアを放置して、透が初級の回復魔術を詠唱した。


「うぅ……ありがとなのだ……ましになったのだ」

「おう、気をつけろよ」


 ツキミがゆっくりと起き上がり、しょんぼりと耳と尻尾を垂らす。

 リアが慌ててフォローを入れようとするが、何も思いつかずただわたわたと慌てているだけになった。


「ここの宝箱は最初に触れると宝箱の周辺の床が一気に飛び上がって、そこにいる人を天井に打ち付けるっていうトラップだったの。1回発動すればもう触っても大丈夫よ」


 リアの説明を受け透が宝箱を開けると薬草が少し入っていた。


「お宝って期待したけど、ただの薬草かよ……」

「あら!この国では周りは砂漠だらけだから薬草はダンジョンから取れる物か、外国の冒険者さんが売ってくれた物か、商人の方が運んできてくれた物だけなのよ。だからダンジョンから取れる物が一番鮮度が良くていい値段になるんだから!馬鹿にしちゃダメよ」

「確かにここに来て売った薬草はシュループで売るよりもちょっと高かったのだ~」


 ダンジョン内で得た物はギルドの規定により清算され、冒険者と案内人へ分配される。

 だが、冒険者の中には少しでも多く報酬を得ようと数をちょろまかすような奴が多くおり、地上に戻った後正当な報酬を貰う為の自衛策としてメモを取ってる案内人は多い。


 リアもメモを取り出しダンジョン内で獲得した物を記載する。

 透とツキミは特に気にした様子も無く収納魔術の中へポイっと薬草を仕舞い、次のお宝へ向けて出発を促した。



 その後も数日かけて下層に向けつつ、少し遠回りをして中層を探索していく一行。

 どこの安全地帯でも同じように振る舞う透とツキミの魔力の使い方に、周囲の冒険者を唖然とさせると同時にリアの精神を麻痺させていく。


「いつもいつもご飯を貰ってしまってごめんね、つい美味しくておかわりまで貰ってしまうんだけど……」


 気まずそうに切り出すリアに気にするなといった感じで、透はパンを食べながらヒラヒラと手を振る。

 その様子を見たリアは恐る恐る透へ質問を投げかける。


「いつも結構新鮮な野菜やお肉類を出してくれるけど……後何日分位残っているの……?」

「あー、どうだろ。このダンジョンに入る前に念のため3週間3人が普通に食えるくらいは買い足してるし、肉類はシュループで狩ったラパンとかもまだあるしな。まぁ、遭難でもしなきゃ14日くらいはおかわりしてても余裕だろ」


 何事も無いかのようにサラッと伝えられた常識外の収納量にリアは一瞬眩暈を起こすが、すぐに気を取り直してお礼を言った。


(馬鹿容量の魔力を持ってるとは思ってたけど想像以上だったわね……。それに特に触れられなかったけど、いつまでも新鮮なまま収納に入ってるって事は、時間経過を遅くしてあるか止めてあるって事かしら……。

ギルドマスターがどこまで知ってるか分からないけど、確かにこれは濃紺でヒラキさんのサインが入る案件だわ……。まだ良い人たちっぽいから救われるけど、中々にしんどいわね……)


 リアの心中等察する事もできない2人は能天気にご飯を頬張り続けていた。



「さて、ここからは下層に向けての罠ラッシュ地帯よ!これを乗り切れば下層は目前、頑張りましょう!」

「あいなのだ!」

「ういっす」


 そして意気揚々とリアを追い越して一歩踏み出すツキミ。

 その瞬間四方八方から水が噴射され、一行は一瞬でずぶ濡れになった。

 透とリアがため息を吐き、ツキミが気まずそうに苦笑いを浮かべている。


「なんとなく、こんな事になる気はしてたけどな!しかもなんだこれ、ちょっとぬるっとして気持ち悪ぃんだけど……」

「ごめんなさいなのだ……」


 しょんぼりと耳と尻尾を垂らすツキミに慌ててリアが「気にしないで!死にはしないから!」とフォローになっていないフォローを入れている。

 3人はかかったのはちょっと粘っこいローションのような物で、毒などは含まれていない。

 ただただねっとりと絡みつき不快感を与えるだけで。


「出でよ、滝なのだ!」


 ツキミの叫びに呼応して3人の頭上から大量の水は降り注ぎ、ローションのような物を洗い流していく。

 確かにねっとりとしていた物は一気に流れたが、如何せん水量が多く心の準備をしていなかった3人は息が出来ず藻掻いている。


「おい!また殺す気か!ちょっとは学習しろよ!」

「ごめんなのだ、苦しかったのだ……!」


 水が止むと同時に透が叫び、ツキミが苦しさにびっくりしたように謝る。

 リアは声を出す事もできず肩で息をしていた。


 3人は気を取り直して出発をするも、集中力が切れた状態の透とツキミが次々と罠を踏み抜いていく。


 大岩が転がってきて透とツキミが猛ダッシュで逃げ、角を曲がり安心し一息つきかけた所、急に方向転換をした大岩に潰されたり。

 ──ちゃっかりと寝そべって壁に張り付き大岩をやり過ごしたリアは、土にめり込みながら瀕死の2人に苦笑いをしつつ回復薬を飲ませ先を促す。


 四方八方から矢が飛んで来るのを間一髪で避けながら結界を張り2人は必死に身を守ったり。

 ──ため息を付きながら腰に吊り下げていた2本の短剣を使い、自分に当たりそうな矢を次々と叩き落すリア。


 突然頭上から降ってきた網から逃げるように飛び退いた先にあった蜘蛛の巣に引っかかり、わらわらと集まってきた蜘蛛達に馬鹿にされたり。

 ──あまりにも的確に罠に引っかかっていく2人に対して遂にため息すら出なくなり、リアは無表情のまま蜘蛛に馬鹿にされなんとか脱出した2人を見つめる。


 ちゃっかり道中の宝箱から薬草や魔石等をちまちまと回収しながら、罠にかかりつつも3人はなんとか下層へ続く場所へと辿りついた。

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