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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第二章
36/87

「くっ……殺せなのだ……」

「あっ!ツキミちゃん!おはよう!」


 ツキミと見つけ大きく手を振りながら、うきうきとした声がダンジョンの入り口広場に響き渡る。

 勿論透の事は眼中に無く挨拶すら投げられる事は無かった。


 ツキミはリアに軽くを手を振り返し透に再度確認をするように視線を寄こす。

 そのツキミの視線にニヤリと笑うと早くリアの元に行ってこいとばかりに背中を軽く押した。


「罰ゲームだろ?賭けに負けたツキミが悪い」

「ちぇっなのだ、覚えてろなのだ……」


 透を一睨みしとててててっ、とリアの元に走り出す。

 リアの目の前まで到着したかと思えば挨拶もせずクルリと背を向け可愛らしいお尻を突き出した。

 そしてくねくねと尻を動かし始めた。

 合わせて2股に分かれた尻尾もゆらゆらと揺れる。


「えっ、えっ、ツキミちゃん……?どうしたのかな……?」


 ツキミは困惑しているリアの問いかけに答える事もなくそのまま尻を動かし続ける。

 行き交う冒険者や街の住人が珍妙な物を見る眼差しで遠巻きにツキミのくねくねと動かし続ける尻を眺めていく。

 ツキミは顔を羞恥で真っ赤に染め上げ頭上の猫耳がピクピクと動きながらも、尻を止める事をせず動かして動かして動かし続ける。


 2人に近づかず成り行きをニヤニヤと眺めていた透だったが、暫くしてもリアがツキミのやっている事の意図に気付かずずっとアワアワとしているだけなので興が醒めたとばかりに2人に近づいていった。


「ツキミ、もうその辺で許してやろう」

「くっ……殺せなのだ……」


 オークに捉えられ恥辱を受けた女剣士のようなセリフを吐くツキミを見たリアが龍をも殺しそうな眼光で透を睨み付ける。


「テメェ、私のツキミちゃんに何させてんだ、あ゛ぁ゛???」


 ドスの効いた声が透へと襲い掛かり、存在感の薄い透の透がヒュッと更に縮こまる。

 慌てて事情を説明しようとするが、リアの背後にうっすらと般若を幻視してしまい声が出なくなった。


「ん?いつからあたしはリアのになったのだ?」


 そんな2人の様子攻防に気付く様子のないツキミが愛らしく首を傾げながら見当違いな疑問を飛ばすが、これがリアの心にクリーンヒット。

 2度目の顔合わせだというのについ先走った気持ちを口にしてしまったリアが赤面する番だった。


 リアの背後に現れた般若が消え安堵のため息をついた透を見て更に疑問符を浮かべるツキミをつついて事情を説明させる。


「あたしが透とのゲームで賭けに負けたのだ……。だから今のは罰ゲームの尻文字だったのだ、恥ずかしいながらにも頑張ったけど、でもリアには全然通じなかったのだ……」


 耳と尻尾がしゅーんと垂れ下がり悲しみの雰囲気を全身で表現するツキミに、今度はリアの顔色が赤から青に変わる。

 好意を向けている相手が自分の所為で悲しんでいるという事実になんと声を掛けたらいいかわからずあたふたと慌てている。

 

「まぁそんな事よりも早くダンジョンいこーぜ」

「なのだ!」


 透の呼びかけにパッと気持ちを切り替えルンルンモードに入るツキミを見てリアは驚きながらもダンジョン内部へと続く階段へと案内した。



 階段を下りるとじめっとした湿り気のある空気が3人を包み込む。

 薄暗い周囲に目を凝らすと、200人は入りそうな何もない洞窟が広がっていた。

 周囲には小学生くらいの年齢に見える子供たちが4~5人ごとで固まっており、その中にハツラツとした老人が1~2人程度混じっているパーティがいくつか見受けられた。


「あの人たちもダンジョンに潜るのか」

「えぇ、そうね。上層は即死の罠も無く比較的安全だから、ルメジャンの子供たちは冒険者や案内人を引退した方々から罠の見分け方や戦闘を学び、ダンジョンに慣れ親しんでお小遣い稼ぎや将来の道を決めていくのよ」

「ちっちゃいのに偉いのだ~」


 リアに促され洞窟の奥へと進んでいくと、壁にいくつもの通路が作られていた。

 その1つに入り今日の予定は軽く話し合いながら進んでいく。


 上層は罠の数も少なく、リアからの指示も稀に「そこから5歩進んだら屈んでー」やら「ここから壁に張り付いて30歩」等の簡単な指示が飛ぶ程度だ。

 途中他の冒険者や子供たちとすれ違う時は軽く会釈をし中層へ向けて進んで行く。


 モンスターが現れる事もかなり稀で、コウモリ型のモンスターがどこからともなく現れたと思った瞬間にはツキミの雷撃で瞬殺されダンジョンの養分へとなっていった。


「お!なんか宝箱が置いてあるぜ!あれは罠なのか?」

「あれはー、正真正銘宝箱ね」


 肯定を聞いて宝箱に向かって走り出そうとする透の襟首を掴み静止させるリア。

 潰されかけた蛙のような「ぐえぇっ」といった声が透から漏れる。


「待ちなさい。ダンジョンは貴重な資源なの、上層はその安全性からも子供たちも来るわ。だから余程困ってない限りは下の層に行ける冒険者たちは上層の宝に手を付けないのがルールなのよ」


 透が今だに襟首を掴まれ首が締り酸素が薄くなっている中、必死に首を動かし同意を示す。

 その様子を横目にツキミへ向かって微笑みながら続きを告げる。


「それに下の層に行けば行くほどお宝も凄いのが出るし、ね?」

「わかったのだ!」


 ツキミが元気よく返事すると、やっと襟首を離し肩で大きく息をする透置いて先へ進み始めた。


「この怪力女……」


 ボソッと小さく呟いた悪態に反応したリアが振り向きニコリと笑ったが、その背後にはまた般若の幻覚が見え隠れしていたとかしていないとか。

 透は慌てて首を振り2人の後を追ったのだった。



 何度かの分岐を通り過ぎ暫く進むと行き止まりにぶち当たった。

 リアが壁の前へ立ったと思いきや全体重を乗せた右ストレートを打ち出し、壁に3か所の穴が開いた所で異変は起こった。


 ゴゴゴゴゴゴ……。


 軽い地鳴りと共に左右の壁が崩れ上へと続く階段と下へと続く階段が現れる。


「おおおお!すごいのだ!」


 その様子にきゃっきゃっとはしゃぐツキミにウインクを飛ばしリアは上へと続く階段へと向かった。


「お、おい!今日はこれで戻るのか?このまま中層に行くんじゃなかったのかよ」

「行先は中層よ。黙ってついてきなさい。私を信じれないというのなら1人で反対側の階段でも降りてみればいいわ」


 ツキミとの対応の差にもやもやとしたものを感じながらも「すみませんでした……」と謝りリアの後へと続く。

 3人を飲み込んだ階段の入り口は再び土に覆われ、すぐ近くにいるはずの人間を認識できないほどの暗闇が訪れた。

 真っ暗な空間なのに何故か薄っすらと目の前の階段が数段だけ見えている。


「この階段は灯りを全て吸収するから視界の確保は諦めて。壁に手をついてゆっくり上るといいわよ。ツキミちゃんは怖かったら私と手を繋ぐ?」

「あたしは暗闇でも結構へっちゃらなのだ~」


 ニッシッシと笑うツキミとは対象的に表情を曇らせる透とリアだったが、真っ暗な中その事に気が付く者は誰もいなかった。


(折角の自然な流れでツキミちゃんと手を繋ぐ作戦が失敗か……。焦るな、焦るな私!まだ1日目よ、仲良くなるチャンスはまだまだいっぱいあるわ!)


「じゃあ私が先頭を歩くから、真ん中にツキミちゃん、最後に長瀬さんね。左手を壁について、私の合図に合わせてゆっくりと上っていくよ」


 リアの号令で透は1歩後ろへと下がりツキミは半歩前へと進み、左手を伸ばしてジリジリと壁へつくまで横に寄っていく2人。

 ひんやりとした硬い感触が手の平へと伝わってくると、リアへ壁に到着した事を伝える。


「じゃあ気を引き締めていくわよ!定期的に確認はするけどはぐれると厄介だから、疲れたり何かトラブルがあったらすぐ教えてね」

「あいなのだ!」

「了解」


 元気の良い「はい!はい!」といったリアの声と共に3人は中層へ続く階段を上り始めた。



一度結構書いたのがバックアップごと消えてしまい、暫くしょんぼりしてました( ;∀;)


面白い、続きが気になる!と少しでも思っていただけたら、

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