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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第二章
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2人の持つその紹介状の意味

「じゃ、紹介状をもらえるかなっ?」


 声を弾ませて少女がツキミへと話しかけた。

 紹介状を持っているのは透なのだが、透の存在等無いと言わんばかりにチラっとも視線を寄越さずツキミだけを見つめている少女にどう話しかけていいものかと考えながらこっそりとその少女を観察する。


 ルメジャンの雲一つない晴天を切り取ったかのようなスカイブルーの長髪ストレートを上の方で一括りにしており、後ろから流れてきた毛束が少女の慎ましく主張する胸の前でサラサラと流れている。

 小麦色の肌に透き通った金色の双眼がさながら獲物を見つけたハンターのように輝き、血色の良い唇からは「ねえ、この後暇?どっかでお茶しない?」といった典型的なナンパ文句がツキミへと囁かれている。

 ヘソが見えるような短い半袖シャツにショートパンツというとてもラフな格好をしており、露出面積の広い健康的な四肢と薄ら割れた腹筋が目に入った所で透は顔をほんのりと赤らめた。

 身長も透と同じくらいの女性としては高かった為、可愛いというよりも綺麗な姉御といった印象を抱く。


 ギルドマスターとはまた別種の強烈な視線に気圧されツキミは透へと助けを求めた。

 頭を軽く振って平常心を装うとツキミの腕を引っ張り自分の後ろへやり、紹介状を取り出し少女へと差し出した。


「あー、お姉さん?紹介状はこれですけど……」

「……ん?あぁ、紹介状ね!ありがとう」


 透には見向きもしなかった少女が目の前からツキミという美少女が遠ざかった事で若干眉を顰めるも、すぐに仕事を思い出したかのように真夏の太陽のような笑顔を浮かべ紹介状を受け取って、目を通しながらずっと放置されていたオジサンの所へと向かった。


 透に背中を見せながら目を通した紹介状を見て苦々しい表情を浮かべる少女。

 オジサンはその表情から今やってきた男女が只者でない事を察した。



 冒険者の間では殆ど知られてはいないが、案内人の中で常識的な出来事が1つだけ存在している。

 それが紹介状の書き方で紹介された冒険者の危険度や重要度を示しているという事だ。


 案内人への紹介状の内容は基本的には全て同じで、空欄に日数や探索予定の場所等が記され最下部に紹介した職員が黒字でサインをする。

 だが、送り出さなければならない冒険者が()()()()()()()サインの色が変わってくる。


 ダンジョンに潜る冒険者がどこかの貴族のボンボンだったり、お金を持っている商家の者だったりすると万が一があると面倒な事が起こりやすい。

 そんな重要人物だった場合は、紹介した職員の名前が深緑色で記載される。

 そして、冒険者が犯罪を起こす可能性がある場合や、極端に力の強い場合等の危険が及ぶ可能性がある場合にはサインが濃紺で記載される。


 更に()()この冒険者を送り出したかが重要となり、重要度や危険度が簡単にランク分けされている。

 各ギルドの一般ギルド職員の名前の場合には問題は無い。

 ランクが分けられているのはそれよりも上の者のサインがあった場合、『東西南北の副ギルドマスター<東西南北のギルドマスター<中央の副ギルドマスター<中央のギルドマスター』の順でランクが高くなっている。


 つまり、今回2人が何気なく持ってきた紹介状は()()()()()()()()()()()()()()()()で尚且つ()()で書かれていた物だったのだ。

 更に選ばれた案内所がルメジャンでは1番武力が高く荒事が起こっても対処できるとされている所だったのも、中央のギルドマスターがこの2人を──特に異世界人だと言い、人間の限界値と言われる能力を超える数値を持つ長瀬透を──危険視しているかが計り知れる。



 いまだにカウンターから動かないオジサンに紹介状を渡し頷く少女。

 その顔は先ほどまでツキミをナンパしようとしていた人物と同じには見えない程の精悍な顔つきをしていた。


「そういえばまだ名乗っていなかったね!私はリア龍河、そしてこっちが父のジェイク龍河よ。よろしく」


 ジェイクが紹介状に目を通してる間に、笑顔を浮かべたリアは2人へと振り返り軽く自己紹介を行った。

 それにつられて名乗り返す透とツキミをジェイクは睨みつけるように目を細め盗み見ていた。


「リア」


 ジェイクは名前を呼んだだけだったが、その一言だけでリアは察して頷きを返し2人へと最終確認を行う。

 出発日時や報酬の取り分等の詳細を確認したリアはニッコリと更に笑顔を強めると2人と告げる。


「今回の案内をするのは私!じゃ、明日から2週間ダンジョンではよろしくね!」

「……っえ?ジェイクさんではないのだ?」


 てっきりリアは看板娘なのだろうから書類仕事ばかりで、ダンジョンには父親のジェイクが来るものだと思っていた2人は動揺を隠す事ができなかった。

 2人の中でも特にツキミの方はオロオロとしてしまい、再度リアに確認をしてしまう程に。


「あらー、ツキミちゃんは私だと不満?これでも強いのよー!」


 ムキッと力こぶを作って強さをアピールするリアにツキミは慌てて非礼を詫びた。

 ツキミや透がその見た目に通りではなく、それ以上の能力を秘めている事を自分たちでは認めていたので、リアの強さや能力を疑ってかかっていたわけでは無かった。


 ただ単純に先ほどまでやっていたゲームの勝敗がムキムキマッチョのオジサンが来ると予想し、その通りのジェイクがいたから勝利が確定したとばかりに透にドヤ顔をしまくり、頭の中では罰ゲームの内容を考えていたのだ。

 それが急に美少女が来ると予想していた透へと勝利が転がっていき大逆転を果たしてしまった事で、どんな罰ゲームを突きつけられるのかと焦り、何かの間違いではないかと聞き返してしまっただけであった。


 リアからすればそんな勝負がされていたとは思いもせず、焦るツキミと反対にニヤッと笑う透を見て、リアが入る事で自分の男を取られてしまうと焦っている美少女のツキミと、そんなとてつもなく可愛い彼女がいながら他の女をみて下卑た笑いを浮かべる気持ち悪く胸糞悪い男という認識になってしまった。


 元々リアはその美貌で本人にその気が無くても数多の男性を虜にしてしまっており、街にいる時は何人もの男性が毎日押しかけ愛を囁いていた。

 その中には金を持った商人や手荒な冒険者も勿論いる。

 国内最強の案内所の主であり見た目からも雰囲気からも威圧感を放っているジェイクが睨みを効かせてるおかげでリアに危害が加えられる事は無かったが、そんなこんなでいつしか男性に悪感情を抱き、女性を愛でるようになってしまった。


 リアの勘違いに透とツキミは気が付くこともなく、3人の思いはすれ違いを起こしていた。

 そして観察眼に長けたジェイクだけが2人が案内所へ現れた時の様子からなんとなく察し、3人の空気を正しく理解していた。

 だが、口下手なジェイクはそれを伝える事はせず呆れたようにため息を吐くだけだった。



「また明日お願いしますなのだ!ダンジョンの入口に明日の朝太陽が昇る頃なのだ!」

「うん、太陽が頭の天辺に来る頃だからね?間違いないでね?」


 先ほど話し合った内容を既に間違えてるツキミをリアが優しく訂正すると、ほんのりと羞恥で頬を染めたツキミがえへへと笑って誤魔化した。

 その様子に思わず「可愛い……」と呟きが漏れ悶えるリアを見て、大丈夫かコイツという表情を隠さない透。

 気を取り直したツキミがお別れの挨拶を告げ案内所をあとにする。


「明日の準備の為に買い込むのだー!」

「あぁ、でも罰ゲームも忘れんなよ?」


 透の言葉にげぇっとした表情を浮かべたまま、2人はゆっくりと街へと歩いていった。

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