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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第二章
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案内人との出会い

 眉間に皺を寄せ目を細めて無言のまま顎をしゃくり続きを促すギルドマスター。

 恐れを溜息と共に短く吐き出して透は語り始めた。


「簡単に言うと俺はその勇者と同じで、異世界から来ました。元の世界で死んで気が付いたら女神を名乗るよくわからない光の塊に何もない空間で遭遇しました。この世界を救う事を条件に能力を授かり草原のど真ん中に飛ばされツキミと出会いました。


その際貰った能力が、レベルが上がった時の上昇パラメーターの最大値固定化と魔力が枯渇する度に魔力最大値が増える女神の加護ってやつです。その他のスキルについては説明を受けてないのでよくわかりませんが、多分俺が考えるにこの世界を救うためにつけてくれたおまけみたいなものだと思います」


 透は偽る事を辞め、今までツキミにも話していなかった事も含め全てを話した。

 そしてその内容はこの部屋にいるツキミとギルドマスターだけではなく、透達の遥か上空から監視を続けていた妖精を伝ってシュループの王都にあるギルド本部のロリババアもといギルドマスターにも伝わっていたが、その事に気が付く者はいなかった。


「信じて貰えないと思いますが、これが俺の身に起こった真実です」


 ギルドマスターは考えるように眉間の皺を更に深く刻むと無言のまま透を見つめ続けている。

 訪れた沈黙は透に再び恐怖と緊張を呼び戻していく。


(多分ギルドマスターの判断次第で俺は殺されてしまう可能性だってある……。何が正解かわからないけど、でも今の俺にできる事はやったと……思う)


 2度目の人生も童貞で終わるのかな……と少し思考がずれ始めた所で視線を下に落とすと、いつの間にか白くなる程力強く握りしめていた己の拳が目に入った。

 ゆっくりとその拳を広げると手汗がじっとりとズボンを湿らせた。



 暫く静寂が流れギルドマスターがゆっくりと口を開いた。


「そうか。……到底信じられる話ではないが、どうやら嘘は言ってねぇみてえだしな」


 ギルドマスターの言葉に透は目を見開き驚愕を示す。


「信じて……くれるんですか?」

「お前の事を信じちゃいねぇが、俺は嘘がわかるんでな、自分の能力を信じてるだけだ」


 フンッと面白くなさそうに鼻を鳴らし、ギルドマスターは紙を2枚取り出した。


「お前等冒険者って事は地下のダンジョンに潜んのか?」


 緊迫していた空気が緩み突然話題がガラリと切り替わって戸惑いを隠せずあわあわする2人を尻目に先ほど取り出した紙を目の前に置いた。

 目線で返答を促すギルドマスター。


「は、はい」

「そうか、じゃあこの地図の場所に行け、これが紹介状だ」


 とりあえずその差し出された2枚の紙を受け取る透だが、理解が今だに追いついておらず頭の上に疑問符を並べている。

 面倒くさそうにギルドマスターが数度手で空中に円を描くとすぐに部屋の扉がノックされ無表情の女性が現れた。


「詳しくはそっちに聞いてくれ、さあ出てった出てった」


 シッシと2人に向かって追い払うように手をはらう。

 戸惑いつつも2人は女性に書類を半ば奪われ、案内されるがまま別室へと移動した。



 移動した部屋は先ほどとは打って変わって、丸いの木テーブルが1つと向かい合う1脚ずつの丸椅子があるだけで、壁とテーブルの間は人ひとり通るのがやっとというくらい狭い所だった。

 奥の椅子に座るよう促された2人は、少し考えツキミが猫モードになり透の膝の上に座る事にした。


 2人が席に着くと案内してきた女性職員が表情を変える事も無く向かいの席に座り、先ほどギルドマスターに貰った書類を含め何枚か広げた。

 ツキミは机に前足を掛け頑張って書類をのぞき込もうとするが、視点が低く全然見えなかったので早々に諦め膝の上で丸くなり話の邪魔をしない事にしたようだ。


「それでは説明をさせて頂きたいと存じますが、今回我が国の地下ダンジョンへ訪れるのは初めてという事で間違いないですね?」

「え、えぇ。そうですね」


 注意書きの書類を2人の方へ向け、女性職員は説明を始めたが用紙に簡潔にまとめられている事に対して少し注釈を行っただけであるが。



・ダンジョンは国と同じ大きさがあり入口は中央と東西南北の計5つが存在しており、更に『上層』『中層』『下層』『最下層』の4段階に分かれている。

・ダンジョン内は罠が多いが比較的モンスターは弱いとされている。だが、情報以上の脅威が潜んでいる可能性が十分にあり、大きな怪我や命を失った場合もギルドは責任を負わないものとする。


・案内人に意図的に害をなしたと見做される場合、ギルドはそれを即時に知る事ができ、行った冒険者を排除する手段がある。

・ルメジャンにいる案内人は予定を含め全てギルドで管理されている為、ダンジョンへ潜る前に『日数』『大まかな場所(何層のどの方角か)』を報告する義務がある。

・ダンジョンより帰還したらギルドへと戻り案内人へと報酬や換金手続き、情報の共有等を行う義務がある。


・案内人を雇うためにはギルドからの紹介状が必須となり、指名を行う場合は別途料金が発生する。

・案内人を雇わずにダンジョンに入る事も可能だが、その際全ての責任をギルド及び国は負わないものとする。


・上記内容はギルドが何時でも変更できる物とし、冒険者がダンジョン内等で知りえなかったとしても有事の際には新規約が適用される事とする。



「以上となりますが何かご不明点はございますか」


 問題ありませんね?と目線で確認を促す女性職員に透は頷きで返答し、注意事項用紙にサインを行った。


「では、何日間程ダンジョンへ滞在するご予定でしょうか」

「ええっと……他の冒険者の方々はどの位潜ってる事が多いんですか?」


 女性職員によると、収納魔術の量により持ち込める食糧が変わるため自分の魔力量との相談になる。

 大半は収納魔術と手持ちの食糧を合わせ1回の探索で1~2週間程度のパーティが多く、シルバーランクの人々は上層は探索せず中層~下層の入り口付近にいる事が多い、と言う。

 今回の斡旋できる案内人は1~2週間程度、中層~下層であれば問題無いとの事だ。


「じゃ、初めての場所だし中央入口からゆっくり2週間!皆と同じように中層メインで様子を見て下層って事でツキミもいいか?」

「あい!まるなのだー」


 猫の姿のまま短い両前足を伸ばし顔の前で丸を作る。

 その愛らしい姿に初めて女性職員がほんのりと口角を上げた。

 食糧等の物資は不測の事態に備えて多めに持っていって下さいね、という注意をしながらギルドマスターに貰った紙を透へ差し出す。


「こちらが紹介状となりますので、この地図の場所に向かい中の方にお渡し下さい。ダンジョンへは明日か明後日よりお越しください」

「はい、ありがとうございます」



 ギルド本部を出てツキミは人間モードへと移り、2人揃ってグッと伸びをした。

 やはり緊張をしていたのかどっと疲れが押し寄せてきたようで、休憩がてら近くの屋台で大きな肉串とフルーツ盛りを購入しベンチに腰を下ろした。


「一時期はどうなるかと思ったけど、なんとかなってよかったー」

「ほっとしたのだ~」


 食事を取ると今日はもう休んでしまいたくなる誘惑が襲ってきたが、それを振り払い地図の場所に向けて歩き出した。

 道中今回の案内人がどんな人かを予想するゲームが繰り広げられている。


「きっとムッキムキで身体中傷だらけなオジサンなのだ!罠にいっぱい引っかかって死にかけてるから罠の場所を覚えてるすんごい人に決まってるのだ!」

「いーや、俺は可憐な女の子だと思うね!案内人は基本戦闘なんてしないんだから、占い師みたいな感じで罠の探知能力に優れてるから怪我なんかしたことないだろう」


 ぎゃあぎゃあと意見を言い合いながら楽しそうに地図の場所へついたら、目的の店の前で何人もの男性が跪き花束をそれを困ったような顔でかわす1人の少女へと掲げていた。

 目的地だから仕方ないといった感じでその奇妙な集団へと近づいていく透とツキミを見て、ホッとした顔の少女が2人へ向けて話しかけてきた。


「案内人を雇いにきた冒険者さんかな?いらっしゃい!ささ、中へ行きましょう!」


 どうやら囲まれていた少女は案内所の人らしく、仕事だ!と言って男たちを追い払うと扉を開け2人を招きいれた。

 中にはムスっとした古傷だらけでゴリマッチョなオジサンがカウンターの中におり、ツキミは先ほどのゲームの勝利を確信して透へニヤニヤとした笑みを向けたのだった。



猫が眩しそうに目元を手で覆い隠すしぐさってとてつもなく可愛らしいですよね。

ツキミの「まるなのだー」はそんな感じでもふっと作ってほしいですね、可愛い。

猫って、可愛い、可愛いなあ……。

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