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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第二章
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ルメジャン国ギルド本部

 ロラッタでの短い休養を終え、ルメジャン側の関所前に集合した3人。

 ロラッタの町へ入る時に入国審査を行っている為、町から出る時はかなりスムーズなようで関所前に出来た短い列が止まる事無く動いている。


「さあ!元気も取り戻したし、いざ!ルメジャンへ!」

「既に国境線は超えており、ここもルメジャン国だがな」


 拳を振り上げ意気揚々とした透の恥ずかしい叫びに、オンハルトが冷静に突っ込みツキミがそれに同意するように頷く。

 周囲の生暖かい視線に耐え切れず顔を赤くした透は急いで関所の列に並び顔を逸らしている。

 オンハルトとツキミはやれやれといった様子で透の後に続いた。


 透とツキミの入国審査時の一件がルメジャン側の関所にも勿論伝わっており、再度すぐにギルド本部へ顔を出すようにと念を押された以外は問題も無くすんなりと塀を超える事ができた。



 3人を出迎えたのは一面の砂漠……ではなく、数百メートル続く砂漠の先には既にかなり栄えた街が存在していた。


「あれなのだ……なんかもっと辺り一面砂しかないと思ってたのだ、拍子抜けなのだー」

「そうだな……」


 複雑そうな表情で街に向かって歩く2人にオンハルトがルメジャン国というものをざっくりと説明し始めた。


 ルメジャン国をぐるっと覆っている塀の中にはただ一つの街しか存在していない事、つまりそれが今目の前に広がっている王都だという事だ。

 王都は1つの国土と考えると狭いが、1つの街と考えるとかなり広く東の端から西の端まで歩くと成人男性の足で丸14日はかかる程。

 そしてその王都の下にはこの広い街と同じ大きさのダンジョンが広がっている。


 ダンジョンの入り口が計5つ存在しており、中央部に1か所そして東西南北に各1か所ずつある。

 ダンジョンからの供給なのか全ての入口付近には水が溢れ出るオアシスが存在しており、そこから土魔法で整えられた水道管のような物を伝い王都の人々が使う水を全て賄っているのだそうだ。

ただし全ての家に直接水道管を繋げる事はできず、多少貧しい家の者達は周辺の水汲み所まで行き毎日必要な分を手に入れている。


「ほー、オンハルトは詳しいんだなぁ」

「我が詳しいのではない、お前等が無知すぎる」


 オンハルトの言葉に軽く肩をすくめた2人だが、そのまま気にせず歩き続ける。

 指摘通り2人は転移転生して何も知らずに放り出された少年と、森の中の一族から追い出され最初の町で駆け出し冒険者として生きるのに必死だった猫のだ。

 軽く養成所で教わったとはいえ殆ど無知でも仕方がないと本人達は思っている、口には勿論出しはしないが。


「ギルド本部ってのに顔出せって言われてるから、目指すは中央かな?」

「本部って中央っぽいのだ」


 頷き合う透とツキミにオンハルトは告げる。


「我が共に歩むのは王都の東入口に入るまでだ。我はダンジョンに所用があるのでな」

「ダンジョンなら俺らも入るけど、後で一緒にいかね?」


 透の誘いにオンハルトは首を横に振った。


「このダンジョンは広い、我の目的地には中央入口からでは遠すぎるのでな、このまま目的の入り口まで地上を移動する」

「なら仕方ないのだ~」


 のんびりとしたツキミの声に透も同意した。

 神出鬼没のオンハルトなら広い王都やダンジョンでもまた会う事になるだろうと楽観的に捉えていた。

 そしてモンスター等に出会う事も無く数百メートルの砂漠地帯を若干足を取られながらも歩ききり、オンハルトと2人は軽い挨拶を交わしただけで別れた。


「さて、オンハルトの話だと端から端までで丸14日だっけ」

「真ん中のギルド本部に行こうと思ったらきっと半分の7日はかかるのだ」



 途中のルメジャン王都ギルド支部(東)により、依頼の内容や冒険者の様子を見て多少の情報を集めた。

 特に隠すような内容では無いのか、ギルド支部でのんびりしているとダンジョン内の情報が多少なりとも集まった事にほくほく顔の2人。


 ダンジョンはとてつもなく広く未踏の地が多いが、分かっている範囲では強いモンスターは存在していない。

 代わりに多彩な罠があり罠探知が得意な者がいないパーティは案内人を雇う事が一般的となっており、東のギルド支部でもギルド職員に案内人を紹介して貰っているパーティがいくつかいた。



 途中で宿を取り中央にあるギルド本部を目指して歩く2人。

 急ぐ旅でもないし折角ならと軽く街中を観光し、屋台でフルーツや肉を食しのんびりとしていた為に、中央に辿りつくまでに10日かかっていた。


 そしてギルド本部に辿りついた所で透はふとこの10日間の事を思い出す。

 ツキミが少女の姿で駆け回ったり、猫の姿で透の肩にぶら下がりつつ露店を物色したり。


(もしかして、これって初デートってやつだったんじゃ……、手すら繋いでないぞ……?)


 ツキミと思いが通じ合ったのが樹海ダンジョンでの事、その後もダンジョン内だからイチャイチャする暇も無かった。

 その後すぐにお金が無いからとクエストを沢山受け、そのまま盗賊との乱闘、そして逃げるようにシュループ国を飛び出しルメジャン国へとやってきた。

 ロラッタの町で休養は疲れを癒し元気をつける為にデートっていう感じでは無く、日常の一部分といった認識をしていた透。


 そして更にふと思い出してしまった事実。


(樹海ダンジョンの蜘蛛戦以降、好きって言葉すら聞いてない気がする……もしかして、あの時はただの吊り橋効果みたいな感じで実は男としては全く見られて無いのでは)


 ギルド本部の依頼を物色しつつ1人内心で焦る透の様子に気が付く事も無く、常時収集依頼である薬草の売却を行っているツキミ。

 前世で1度も女の子とお付き合いすらまともにしていない所か、友人すら殆どいなかった透には付き合うとはどんな風に接すればいいのか全くわかっていなかった。

 そして同様に森の中で落ちこぼれとして育ったツキミも恋愛事には疎く2人の関係は両想いのはずが全く進展していかないのであった。


 そして、そういえば!といった感じでギルド職員の人へロラッタの関所で言われていた事を話すツキミ。

 既に職員には周知済みだったのか、焦る事も無く「少々お待ちください」と言われ奥に引っ込んでいった。


「透ー?いい依頼はあったのだー?」

「……っあ、あー、いや、特に目ぼしいのは無さそうだから、ダンジョンの宝で稼ぐって感じなのかもしれないな」


 急に話しかけられて焦った透を気に掛ける事もなく「ふーんなのだ」と呟いたツキミに連れられ、先ほどのカウンターへと移動する。

 そして丁度戻ってきた職員にギルドマスターの部屋へと案内された。


 ギルド職員以外殆どの人が立ち入る事のできないギルド本部の奥へと入っていく少年少女に向けられる好奇の視線。

 2人が奥へ消えた後に居合わせた冒険者たちは誰か素性を知っているかと、顔だけ巡らせてアイコンタクトを飛ばし合うが、ルメジャン国へ来たばかりの2人の事を知っている人はいなかった。


 ギルドマスターの部屋へ入った瞬間、2人の力を推し量るような眼でギロリと睨み付ける5人の人々。

 暫くその厳しい視線に晒されて居心地が悪くはあるがどうしたらいいかわからず立ち竦む2人。


 そして2人に厳しい視線を向けていた5人のうちの2人が急に驚愕の表情を浮かべ、中央に座る古傷が多く強面だが頭にフサフサの耳を2つ付け太い尻尾を椅子から降ろしている狼男のようなおじさんの方を向き言葉を発する事もできず金魚のように目を見開き口をただパクパクとさせる。

 その様子から全てを悟ったおじさんが透とツキミに向かって声をかけた。


「いきなり不躾な視線を浴びせてしまって悪かったな、俺がルメジャン国ギルド本部のマスターを務めているヒラキだ。まあ座ってくれ」


(オッサンのケモミミとか……誰得だよ)


 透は失礼な事を考えながらも指示された通り席につき、ツキミは多少怯えながらも同じように席についた。

 目の前に差し出される見覚えのある用紙。

 それは透が冒険者登録を行った際に能力値を数値化する為の用紙だった。


「使い方は説明しなくても分かるだろう?」


 そして使ってみろと顎をしゃくって促すギルドマスター。

 トラブルの予感を感じながらもどう足掻いても逃げられない事を悟り用紙へと向き直った2人であった。

お久しぶりの更新となってしまいました。

第二章ルメジャン編、色々と迷った結果どんな風に進めていくか決まったので、

仕事の合間を縫ってまたぼちぼち更新していきたいと思います!

よろしくお願いします('ω')ノ

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