再び現れるオンハルトと王都出発
どこからともなく流れてくる風に乗ってロリータエルフから発せられる大自然の香りが流れてくる。
「いや、クサッ!?」
「失礼じゃの」
先ほどのトラウマを思い出させる光景と吐き気を吹っ飛ばす程の強烈な印象を与えたロリータエルフに2人は心の中で感謝を告げつつも、醸し出す臭いに眉をひそめる他無かった。
透は日本にいた頃の記憶を引っ張り出し臭いの分析を始める。
それは、ドクダミが鬱蒼と茂っている中にじめっとした枯れ葉を大量に落とし、雨が今にも降り出しそうな天気を彷彿とさせるような自然の香りだった。
「マスターはお若く見えますが、これでも既に600年以上はこの地を治めていらっしゃいますからねぇ~」
のほほんとした声が誰もいないはずのロリータエルフの後ろから発せられた。
2人が不思議そうな顔で声の主を探すと、うふふという上品な笑い声と共に光が集束し、ギルド職員の制服を纏った女性が現れる。
(ロリババア……加齢臭かよ……)
「失礼じゃの」
心の声にもしっかり反応してくるロリババアに透は一瞬だけ目を見開いたが、すぐにバツが悪そうな顔で俯き小さな声で謝罪をした。
その様子を相変わらず無表情でジッと見ていたロリババアは、突如その顔に柔らかい笑みを浮かべ2人へと話はじめた。
「儂はこの国にあるギルド本部のマスターをやっておるが、お前たちに名乗る気はない。今回の簡単な話は職員から聞いておる、多くのモンスター討伐並びに山賊共の壊滅ご苦労じゃった。優秀な働きを賞して賞金と冒険者階級を試験免除にて次のランクへと上げてやろう」
その言葉と共に大量の金貨が入った袋とシルバーランクを示すブレスレットが2つ机の上に出現した。
2人はお礼を言い新しいブレスレットを身に着けた所でお互いの顔を数秒見合わせ意を決したようにロリババアへと向き直った。
「あ、の。実は山賊のアジトに迷いこんでしまって、その際になんとか今回の人たちは倒せたんですけど……。多分リーダー?みたいな人を逃してしまって……」
「ほう」
透の話にロリババアの目が鋭く光る。
その眼力に押されながらも、深呼吸をして続きをゆっくりと話し出しす。
「その……信じてもらえないかも、しれませんが、リーダーが、魔術研究所所長の……エム・ド・ハゲヅーラだったんです……」
俯きがちに話していた状態から恐る恐るロリババアの顔を見ると、先ほどまでの優しい微笑みは消え何を考えているかわからない無表情へと変わっていた。
「君たちの話は参考にさせて貰おう、有益な情報を話してくれた事に礼を言う」
再度柔らかい微笑みを浮かべ、他に何かあるか?とロリババアが質問を投げかけるが、2人にはそれ以上は無く首を横に振る。
「そうか、ではゆっくりと休むのじゃ、目には見えない傷と疲れが溜まっておる」
「「ありがとうございます」なのだ」
2人は礼をして収納魔術に大量の金貨をしまい部屋を出て行った。
「マスター、エム・ド・ハゲヅーラを調査しましたが、既に消息を絶っているようですねぇ」
「そうか、逃げたか……あるいは既に死んでいるのかじゃな」
秘書のような女性の周囲には8つの魔法陣が展開されており、1つ1つが別々の映像を映しだしている。
その中には透とツキミの過去の映像が逆再生されていた。
「あの2人の過去は何かわかったかの?」
「うーん……今見てる限りだと特別な事は無さそうですけどねぇ~。マスターには何が見えたんですかぁ?」
緊張感のない間延びした声が王都を長年支える最高実力者へと発せられる。
しばし考え込むように口を閉ざしていたが、難しい顔のまま困ったような声を上げた。
「目の1つで監視させてる小僧のようなステータスをしておったわ。しかも魔力にいたっては人類の成長による限界値を明らかに超えておる。スキルにしたって女神の加護を持っておるのはそいつとあの小僧くらいしか見たこともないのう」
「んー、つまり世界にとっても要注意って事ですかねぇ?」
「目を1つ使っても監視をしておいて損はない存在じゃの」
なーるほどぉ、と言いながら女性が右手を前に差し出すと、手の上に展開された通常よりも複雑な魔法陣から1匹の半透明な妖精が生まれる。
神経を研ぎ澄ませて目を凝らさないと認識できないような存在が希薄な妖精に命令を出し窓から解き放った。
数十メートル上空から透とツキミの姿を補足するとそのまま追跡を開始する。
8つあった魔法陣の1つからその様子を見る事ができるようになった。
「無事に話が終わってよかったのだー」
「そうだな、死体とか収納魔術にずっと入れておきたくもなかったしな」
目覚めたばかりの不安に揺れていた2人の瞳が少し安堵を取り戻していた。
それでも2人はハゲヅーラのその後を知らない為、どこからか襲い掛かってこないかと怯えながら王都歩いていた。
「どうする?1日くらいゆっくり休むか?それとも金も手に入ったし急いで次の国へ向かうか?」
「ハゲヅーラがいつ襲ってくるかわからないから、早く出発したい気持ちもあるのだ」
結局はツキミの案で決定され旅に必要な食糧や薬等を急いで買い集めたが、日が沈む頃にようやく出発の準備が整った。
早く王都を離れたい気持ちと街灯も存在せずモンスターも活発になった所を進む不安の間で2人の気持ちは揺れ動く。
「フッフッフッフッフッフ」
不気味な笑い声と共にカツンカツンと靴音を鳴り響かせて闇から現れたのは、神出鬼没のオンハルト。
笑い声と足音に驚き警戒をして武器を構えていた2人だが、オンハルトの姿を見た瞬間深いため息と共に具現化していた武器を解除した。
透は急に現れる事への軽い文句と、診療所へと運んでくれた事への礼を言う。
オンハルトは若干照れたような雰囲気を醸し出したが、それも一瞬で照れ隠しのようにたまたま通りかかっただけだと言い訳をする。
初めてみるオンハルトの様子に2人ともニヤついた表情で観察していたが、急に目の前に骸骨が視野いっぱいに現れカタカタと歯を鳴らしながら笑い出した事に驚愕をして後ろへ飛びのいた。
「我をからかう等と馬鹿げた事をするから使者の攻撃対象になってしまうのだよ」
暫く2人と骸骨の追いかけっこが続いていたが、その光景に飽きたオンハルトが指を鳴らすと跡形もなく骸骨は消え去った。
病み上がりで体力が減っていた為か、既に息を切らした2人が恨めしそうな顔でオンハルトのもとへと戻ってきたがスルーして要件を話し出す。
「そろそろ王都を出るのだろう?我も共に行こうぞ」
「どこからそんな情報仕入れてんだよ……。因みに向かう先はルメジャン国の予定だけどオンハルトは?」
「そんな事だろうとは思ってたのでな、問題はない」
マントをはためかせ何故かポーズを決めている。
透もツキミもオンハルトの言動にはいちいち突っ込まなくなっているが、いまだに冷たい視線をつい送ってしまう。
「どうするのだ?」
ツキミが小さな声で透にオンハルトの提案に乗るか乗らないかを相談する。
サンロットを出た時は初めは断っていたが結局王都まで一緒についてきてしまった事実と、ハゲヅーラの脅威に怯えている現状を考えると巻き込む事になってしまうが少しでも戦力が増える事はありがたいという2人の共通認識で、今回はすんなりと受け入れる事が決まった。
オンハルトは2人の声を潜めての相談をもしっかりと聞き取っていた。
だが、ハゲヅーラを処分した事は関係者であっても機密事項で話せない為2人の会話に口をはさむ事無く黙っている。
「とりあえず、ルメジャン国までまたよろしくな」
「フッ、我に任せておけ」
そしてオンハルトは狼のような骸骨を3匹具現化し乗るように促した。
「乗れ、闇の住人は夜こそ本領発揮となる。早速移動を開始するとしようじゃないか」
ロリババアの名前を出さなかったのは、決して面倒だったわけではありません……!タブン
いつかまた出てくると信じて現在はただのロリババアエルフとさせて下さい。
オンハルトが久々に2人の前に現れましたね、厨二病口調ってとても苦手なんです(._.)
素敵な言い回しがあったら是非教えて下さい!
いよいよ王都も抜け出し、2つ目の国へと向かいます('ω')ノ
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