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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第一章
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山賊(生首)を差し出すと現れたのはロリータエルフ

 山賊達のアジトのある洞窟から出た時にはすっかり日も沈みきっており、足場の悪い森の中を進む。

 途中で足を踏み外し転がり落ち、魔力切れで倒れそうになりながらもモンスターへの警戒をしつつ王都を目指す。

 洞窟に入る前に相当数のモンスターを退治していた為、幸いな事に王都へ戻るまでにモンスターに出会う事はなかった。


 軋む身体に鞭を打ちゆっくりと王都までの道を進んだが、王都の門を潜った所で安心した為か、無理をしていた為か意識を手放してしまった。

 門番が慌てて駆け寄ろうとした所に、どこからともなく舞い降りるモノクロの存在。

 街灯に照らされた銀髪がキラキラと輝き、解け掛けた包帯がヒラリヒラリと風と遊んでいる。


「この者達は我の友人だ、心配はいらない引き取らせてもらうぞ」


 門番は持ち場を離れる事もできないので、オンハルトの言葉に頷きそのまま仕事へと戻っていった。

 オンハルトは透とツキミの下の地面から骨でできた担架を具現化させ、骸骨2体を作り出し運び始めた。

 アクセントにナース帽が骸骨の頭に乗せられているのはオンハルトの遊び心だろう、誰も気にしていないが。


 ギルドの隣にある大型の診療所まで運びドクター達に1人と1匹を引き渡す。

 骸骨がボロボロの人と猫を運んできた事にドクター達は驚愕をしたが、それも一瞬だけですぐに1人と1匹はベッドに寝かされ治癒魔術がかけられる。


 粗方傷が塞がり苦しそうな寝顔が緩んだ所で話を聞こうとオンハルトを探すが、既に立ち去っており1人と1匹の素性もわからずドクター達は困惑する。

 だが、ベッドで寝込んでいる腕には冒険者の証のブレスレットをしているのを確認しており、身元を特定するのが容易な為か、このような事態はよくあるのか、ドクター達はすぐに新しい患者の手当てへと奔走し始めた。




 自分の凝り固まった身体が上げるバキッという音を聞きながら透はゆっくりと身体を起こした。

 ボーッとした頭で見慣れない白い風景に焦りを感じ状況を把握しようと立ち上がろうとしたが、極限まで力を使いきって倒れてから暫く身体を動かさなかったおかげで上手く力を入れる事ができず、ベッドから無様に転がり落ちることとなった。


 ドシンッという人間が落下した音を聞き、華奢で可愛らしいナースが駆け付けてきたと思ったら、ひょいっと透を持ち上げベッドへと投げ込こんだ。

 何が起こったか更に把握できなくなった透は目を白黒させ目の前にやってくる女性をただただ見つめる事しかできない。


「おはようございます、冒険者様。ここは王都一の診療所でございます。お元気になられたようでなによりです」


 女性が場所の説明を軽く行いニコッと笑う姿はまさに白衣の天使というに相応しい。

 ただし、この女性がやってきた事で目覚めた同室にいる屈強な男の猛烈なアタック(物理)を振り返りもせず腕一本で抑え込んでいる点にさえ目を瞑れば。


 いくつかの身体検査を行い動いても問題ない状態が確認され、やっとツキミの所へと案内してもらう事ができた。

 ツキミはまだ眠ったままで悪夢を見ているのかうなされている。

 ゆっくりとその頭に触れるとビクリと身体を震わせ目を覚ました。


 ツキミは悪夢から目を覚ましたが、目を開けた視界いっぱいに広がるのは人の手。

 恐怖から声を出そうにも身体が言う事を聞かない。

 再び投げられ蹴り飛ばされる衝撃に備え身体にギュッと力を入れるも、頭に触れた手はゆっくりと労わる様にツキミを撫でているだけだ。


 恐る恐る鼻筋に触れる手から匂いを必死に嗅ぐと、世界で一番安心をくれる人の匂いがする事に気が付き無意識のうちに目から大粒の涙が落ちた。

 違和感に気が付き透が手を離すと涙を流すツキミと目が合い、お互いの無事を喜び抱きしめあった。



「そういえば、俺らどんくらい寝てたんだ?」

「わからないのだ~」


 ツキミを仰向けに寝かせ腹毛をまさぐり肉球をぷにぷにぷにぷにしながら透は尋ねるが、されるがままのツキミからははっきりとした返事をもらう事はできなかった。

 そこに通りかかったナースを呼び止め話を聞くと、どうやら両者とも丸々3日以上眠り続けていたと告げられる。

 更に、骸骨が人間を骨でできた担架にのせて運んできたから皆驚愕したのですよ~、と疑問に思ってたけど聞きそびれていた事まで教えてくれた。


「骸骨ってことは……、オンハルトか?礼を言いたいがどこにいるかわかんねえからなぁ……」

「いつも突然現れて突然消えるのだ……。あ……れ……?そういえば、ギルド依頼の期限っていつまでだったのだ……??」


 呟きを聞いて数秒考えるように動きが止まったが、跳ねるように飛び起きた透は急いで脇にツキミを抱きかかえ走り出した。

 病室に取り残されたナースからは、起きたばっかりなのに元気なのねえ~。といったのんびりとした声が発せられたが当人たちに聞こえる事は無かった。


 受付で支払いについて尋ねると、王都の診療所はギルドと提携しており支払いはギルドの依頼達成時に徐々に天引きされていくそうで、すぐにお金を用意する事ができない2人は安堵のため息をつき病院をあとにした。

 ギルドへと向かう間もツキミはちゃっかりと透の脇に抱えられ伸びている。




 久々に感じる重厚感溢れる門を潜りギルド本部へと足を踏み入れた。

 冒険者用の階層へと行き討伐完了の証であるモンスターの断片を空間に浮かべた収納魔術の中からゴソゴソと取り出しては山積みにしていく。


「ちょ、ちょっとお待ちください!!」


 受付嬢の顔が見えなくなるくらい積んだ所で、慌てた様子で静止をかけられた。

 受付嬢が想像していたよりも量が多くあった為に2人は引き渡し用の別室へと移動させられそこで再び同じようにモンスターの断片を山積みにしていく。

 受けたクエストが5つもあったが為に、薬草なども合わせるとかなりの量になっていた。


「よくこれだけの量を収納してましたね」


 先ほどの受付嬢が驚愕した様子でそのまま確認作業へと進む。

 収納魔術に割く魔力量で収納量が変わる為、ある程度の戦力維持を考えると通常の同ランクの冒険者は多くても透が出した量の1/3程度しか収納魔術に割けない。


「あの……、別件なんですけど……、実はあそこに張り出されている山賊達を数名見つけまして……、あの死んではいるんですけど、持っていてですね……。どうすればいいですかね……?」


 透の言葉に受付嬢は驚きながらも一緒に確認するから出すようにと促す。


 恐る恐るトラウマの元凶である盗賊達の生首達を収納魔術から取り出すと、むせ返る様な血の臭いが一瞬で換気してあるはずの部屋に充満した。

 剣で切られたわけではなく銃弾で千切られたボロボロの断面を直視してしまった透とツキミは耐えきれず数度えずく。

 幸か不幸か丸3日以上食事を摂取していなかった2人は何も吐き出す事は無かった。


 受付嬢も流石に顔に広がる嫌悪感を隠しきる事ができないまま、差し出された生首を麻袋へと入れ2人の体調を気遣い別室へと移動させた。


 別室で休みながら待機する事数時間が経過し、落ち着きを取り戻した2人の所へノックの音が響く。

 透が返事をすると扉を開けて入ってきたのは、銀糸のような髪を高い所で括ったツインテールを揺らして歩くフリフリのドレスを身にまとったロリータエルフだった。


 突然の場違いとも思える来訪者に驚愕して言葉を無くす2人の前に現れたロリータエルフは、その不躾な視線を物ともせず堂々とした態度で2人の対面の椅子へ優雅に腰かけ、エメラルドのような透き通った瞳で何も言わずにジッと2人を交互にただただ観察し始めた。

またもやお久しぶりでございます。

サブタイトルが……いつも思い浮かばないんですよね……。

どうやって皆さんつけてるんですかね……。


思ったより展開が進まなかったので、2話に分けようと思います。

流石にそろそろ王都を出発して次の国へと移りたいですね。

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