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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第一章
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拒絶の代償

 2人が拒絶の意思を見せ身体強化によって拘束を打ち破ろうともがくが、触れた所から魔力を吸い取るという特殊な魔術具によって縛られており抜け出す事は出来なかった。

 いくら身体を強化して引きちぎろうとしてもびくともしないので、吸収されるならそれ以上の魔力を流し込み内部から破壊してしまえと方向性を変え。


 ハゲヅーラはまるで断られることがわかっていたかのように落ち着き笑みを崩さないまま周囲の部下に指令を出す。


「少し混乱しているようですね、状況を身体に教えてあげなさい」


 珍しいサンプルなので決して殺しはしないように、と付け加えてハゲヅーラは下がり奥の椅子へドカッと腰掛け様子を見始めた。

 ハゲヅーラの言葉に山賊達はゲラゲラと下品な笑いを強めゆっくりと2人へ近づいてくる。


 拘束を解く事ができてない無防備な透の腹に力強い蹴りが入り一時的に呼吸が飛ぶが、回復を待ってくれる優しい奴らではない。

 髪の毛を鷲掴みにして無理やり顔を上げさせると、今度は顔面に拳が飛んできた。

 透の口の中が切れ鉄の味が広がる。


 その隣では同じように拘束されたツキミが小さい猫の身体を蹴り飛ばされボールのように遊ばれていた。

 それでも鳴き声一つあげず耐えて、1秒でも早く頑丈な魔術具を壊せるように吸い取られる以上の魔力を放出し続けている。


 透も殴られ蹴られ踏みつけられ、血が滴り胃液を撒き散らせている。

 意識が飛びそうになるのを必死に意志で繋ぎ止め魔力を放出し続けていると、ついにピキッという小さな音が聞こえた。

 魔術具に入った亀裂はあっという間に全体に回り、透の拘束が破壊され今まで魔術具が吸っていた膨大な魔力が部屋中に解き放たれた。


 魔力が解放されただけで周囲にいた山賊は吹き飛び壁に打ち付けられる。

 少し離れた所にいたハゲヅーラをも吹き飛ばそうとするが、万が一に備えて張られたいた結界を割っただけで終わった。


 膨大な魔力を鎧のように身体の周囲に覆わせることによって、骨が折れ筋肉が断裂しているのを魔力で強制的に動かせるようにし、一緒に飛ばされてしまったツキミを回収する。

 腕に抱いた際に透の纏う魔力によって魔術具にヒビが入り砕けた。

 半分以上意識が飛んでいる透が痛みを忘れそれでも動く理由は、大切な人をボロボロにされた事への怒り。

 意識を完全に失ったツキミを優しく足元に置き、透は呟く。


「マシンガンモード」


 具現化されたルドニールが青い光を帯びて変形する。

 手元の相棒に込めるのは全力の魔力と最大の殺意。

 秒間100発の怒りが山賊達が必死で張った結界を粉々に砕き命を刈り取る。


 いち早く透の変化に気が付いたハゲヅーラはツキミを回収している間に隠し通路を解除に逃げる準備を進めていた。

 そのおかげでマシンガンが具現化される前に通路を開く事ができなんとか逃げ込む事に成功した。

 だが通路の扉を閉める前に殺意の弾幕は放たれ、何重にもした結界を打ち砕き数発をその身に受けた。


 なんとか扉が閉まり致命傷を逃れたハゲヅーラは痛みに耐え出血する足と腹を抑え外へと向った。

 洞窟の中に取り残された山賊達はあっという間に息を引き取り、命ある者が透とツキミの2人だけになった事にも気付かずマシンガンは殺意を振り撒き続ける。


 数分が経過し、魔力切れによってルドニールは解除され透も意識を手放し倒れた。




「クソックソッ」


 悪態をつきながら暗い通路を進むハゲヅーラの表情からは今までの余裕の笑みはすっかり消え去っていた。

 想定外の侵入者にも対応できるように常に一部のコウモリを使役し出入口の観察、アジトの存在が露呈しそうになった時には先手を打てるようにしている山賊達の配置。

 なによりも王国の中でも最高峰の拘束の魔術具は現在まで破壊された事等無かった。

 その魔術具を使った捕獲によってハゲヅーラ達の身の安全は確実に保障されていたような物だったのだ。

 今まで幾度ともなく成功していた冒険者の捕獲がこんな形で終わるなんて誰も考えなかった。

 

 顔も身元も透に判明しているハゲヅーラは今までの生活を諦める事を決意する。

 急いで自宅に戻り王都を離れる算段を考える。


 足を引きずり貧血に陥りフラフラになりながらもなんとか通路の出口に辿りつき、森の中へと脱出した。

 そのハゲヅーラの前に影が差す。


「待っていたぞ、灰色の住人よ」


 声に驚き周囲を見回すハゲヅーラの正面に木の上から漆黒のマントをはためかせ現れたのは、ユーリウス・イグナルト・D・オンハルト。

 冒険者としてではなく家名を背負った無慈悲な闇がそこには居た。

 一切の感情が宿らない暗い瞳が息を呑むハゲヅーラを映し出す。


「その命、我らの為に燃やしきれ」


 オンハルトから放たれた影がハゲヅーラを飲み込むと、糸が切れたようにその場に倒れ意識を手放した。

 骸骨を召喚しハゲヅーラを持たせると、一緒に森の奥深くへと消えていった。

 その場には抵抗をした形跡どころか誰かがいた形跡すら残らなかった。




 ツキミが体中の痛みで目を覚ますと、隣に倒れている透と多量の血を流し腕や足が色々な所へ飛び散った見るも無残な山賊達の死体が壁際に転がっていた。

 その衝撃的な光景に血の気が引き再び倒れそうになるのを必死で堪える。


 ツキミの記憶の最後にあるのは山賊達にボールのように蹴られ投げられ踏みつけられていた所までだった。

 どうしてこんな惨状になっているのか理解が追い付かなかったが、倒れている大切な人を救いたいというただその一心で身体を動かす。


 震える身体で這いつくばり、ナメクジのような遅さでゆっくりと透の近くに寄り回復魔術を詠唱する。

 心は焦りうまく身体を動かす事ができず、たった数十センチの距離を移動するのに途方もない時間がかかったようにツキミは感じた。

 元々残り2割程度しか残っていなかった魔力を全て透の回復の為に絞り切り再び意識を手放した。

 それでも透の傷を癒すには全く足りていなかった。




 流した血が地面に吸い込まれ乾き始めた頃、うめき声と共に透が目を覚ました。

 身体中に走る激痛により一瞬で脳は覚醒し、目には涙を溜める。

 状況を確認しようと頭を回した所で足に触れている暖かさに気が付いた。


 ツキミが透の足の上に乗るようにして意識を手放している。

 ツキミを発見した安堵で少し心が落ち着き思考する余裕が生まれる。

 激痛が走るのは上半身が主で下半身はまだ耐えれる痛みな事に気が付き、ツキミが透の上で寝ている理由に思い当たった。


「お前も辛いだろうに、ありがとな」


 寝ているツキミに感謝の言葉を告げゆっくりと頭を撫でると、険しい顔が心なしか緩んだように見えた。

 透は落ち着いた事で再び自分の状況と周囲の状況を理解する為頭を働かせ始めた。


 腕が飛び、足が破裂し、腸が壁に飛び散り、大部分が破れ赤かった血が今や黒くこびりつき始めている衣服に身を包んだ山賊達が転がっている。

 透がほぼ無意識の状態で作り出した死体の山には、目を背けたい気持ちの表れなのか照準が下にずれており胸元から上は数発掠っただけの状態が多い。


 本来ならむせ返るような血の臭いが充満しているはずの部屋は、洞窟の性質なのか魔術具か何か働いているのか微かに臭うのみだ。

 それでもまともな状態で初めて見る人間の死体に胃液が込み上げ地面へとぶちまける。


「ハゲヅーラ……。あいつも、ウォエッ……巻き込んで、殺したのか……?」


 今すぐ逃げ出したい気持ちを抑え込み、軋む身体に鞭を打ち立ち上がる。

 確認をする為にゆっくりと山賊達に近づく間にも襲い来る吐き気に抗う事なく胃液を吐き出すが、出てくるのは今や唾液のみとなり苦し気にえずくだけだ。


 この国では山賊達を打ち破った時には生首を持ってギルドを訪れる事で討伐の証明となる。

 また、人がアンデッドモンスターにならないように必ず死体には火をつけて何も残さないのが鉄則となっている。

 その事を指名手配犯のポスターを発見した時に確認していた透は、吐き気と闘いながらも収納魔術を展開し山賊達の胸元から上を仕舞っていった。


 倒した全ての山賊を収納魔術に仕舞った所で、死体の山の中にハゲヅーラがいない事に気が付いた。

 けれども探す体力も気力も存在しておらず、ツキミを左腕に抱きかかえ右手にルドニールを具現化する。

 その銃口からは炎を纏った魔力弾が打ち出されアジト全体に火をつけて、フラフラの身体で痛みを堪えながら2人は王都を目指し戻っていく。



 王都を目指し森を下る様子を見ていた影が1つ。

 透がその影に気が付く様子は無かった。

またもやお久しぶりです。

最近仕事が忙しくなっててんやわんやです。

休日は趣味で遊びまわっていて中々執筆時間が取れず・・。

のんびりとお付き合いをお願いします( ;∀;)

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