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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第一章
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くえすとだいさくせんっ!

 体力と魔力の限界まで動いた2人は日が高く昇っても目を覚ます気配はない。

 辺りが薄暗くなる頃、先に透がやっと目を覚ました。


「ん……んんー……」


 フカフカしている感覚に安心感を覚えながら、寝ぼけまなこで状況を把握しようと周囲を見渡す。

 見覚えのある部屋に自分がいて、横には魔力切れからか猫の姿に戻り丸くなって眠るツキミがいる。

 意識が途切れる直前の記憶を思い出そうと考えながら、隣に眠るツキミを抱き上げ膝の上に乗せてモフモフを堪能し始める。


 おでこの部分に顔を寄せ匂いを嗅ぐと、若干の獣臭と暖かい太陽の匂いがほんのりと香る。

 いつしか思い出そうと考えていた事は吹き飛び、モフモフの身体に顔を埋め大きく深呼吸を繰り返し猫吸いをしては、腕を振り回し肉球に往復ビンタをされてみたり平和を堪能している。


 気持ちよさそうに寝ていたツキミも身体をグリグリといじくりまわされ、体勢をコロコロと変えさせられ、嫌でも意識が覚醒しはじめ己の状況を理解する。


「そんなに殴られたいなのなら、やってやるのだああああああああああああああああああ」


 盛大な叫び声と共に透の顔面に爪を立てた猫パンチと雷撃を食らわせシャワールームに逃げていった。

 ブツブツと透に対する文句をぼやきながら、ダンジョンでの土埃や汗と新鮮な透の返り血で汚れた身体を念入りに洗っていく。


「ちゃんとしたお風呂には全然入れてなかったから……きっと臭かったのだ……。そんな乙女心もわからないなんて……透のばかばかばかばかなのだ!!!!」


 怒りと羞恥で頬は赤く染まり、汗臭くて幻滅されてないかと不安で青くなり、1人百面相を繰り返していた。


 部屋に戻るとベッドを顔面からの血で染めた透がのた打ち回りった痕跡があり、床にできた血溜まりの中心で丸くなって転がっていた。

 ツキミが警戒しつつも罪悪感に後押しされ回復魔法をかけ透の頭をつつき起こす。



 ベッドに正座をして向き合った透とツキミは今後の予定について話合い始めた。

 王都に来た目的としてはダンジョンや催し物等、透がこの世界に来て楽しんでみたいからであった為に、武闘会やダンジョン挑戦を終え目的は達成したと言える。

 基本的に2人の気ままなノープランの旅なので次の目的を大雑把にでも決めないと草原のど真ん中で飢え死にしてしまう。


「そろそろ別の国に行ってみないか?」


 透は好奇心を隠し切れない顔で提案をする。

 シュループ国の王都とダンジョンはもう堪能し、現状31階層でボロボロになって引き返してきた位なのでとてもではないが最深部である83階層までは行けそうもない。

 別の国を回りつつ修行して気が向いたらまたチャレンジしに帰って来てもいいんじゃないか、という事だ。

 ツキミはシュループ国に故郷はあるが追放された身であり、今は自由に動けるので好奇心に負け二つ返事でその提案を承諾した。


「それなら次行く国はシュループ国から一番近いルメジャン国に行くのはどうなのだ?」

「ルメジャン国っつーと、砂漠のオアシスと遺跡がうんちゃらってとこか」


 暑いのも寒いのもあまり得意じゃない2人は自ら提案しつつも少し迷っていたが、他の国に行くにも通り道となる地形に存在している国なので必然的にルメジャン国へと訪れる事が決まった。


「さて、ここで問題があるのだ」

「じゃーじゃんっ」


 ツキミは透の発した効果音に首を傾げながらもスルーを決めその問題とやらを話始める。

 透もスルーされる事が当たり前だったかのように気を取り直してツキミの話を聞き始めた。


「お金が、ないのだ」


 そう、問題とはダンジョン攻略で食料やポーション等にガッツリと消え去ってしまったお金のお話であった。

 とりあえずダンジョンでゲットした魔石等のドロップ品をギルドで売り、できそうなクエストをこなしてお金を稼ぐ事に決定した。



 街中では人間モードで歩いていたツキミだが、ギルド本部は人が多く混雑しておりはぐれてしまいやすいと言って猫モードになり透の服に潜り込む。

 ゴソゴソとベストポジションを作って胸元から顔と両手だけ出した。

 冒険者用ギルドルームへと訪れた2人は、まずダンジョンでのドロップ品を鑑定依頼を出し、待ち時間で魔術掲示板にて依頼を探し始めた。


「どうせなら短期間でどばーっと稼ぎたいのだ」

「んー、まだランクが低いからなのかいい値段のやつって中々無いよなぁ……」


 探せども探せども薬草収集や鉱物採集や小モンスターの捕獲等で低リスク低リターンな依頼ばかりだ。

 数百ある依頼に一通り目を通した2人は効率よく稼げるように、王都の裏山に増えすぎてしまったモンスター退治と薬草収集等、同じ場所でできる依頼を中心に何個か見繕っていった。


 鑑定が終わるまでまだ時間がかかりそうだったので、2人はギルドルームを軽く散策し始めた。

 いたる所に水晶が浮かび虚空に映像を浮かび上がらせ、近日の国内外ニュースや緊急依頼等がせわしなく切り替わっていた。

 壁にはポスターみたいな物が貼ってあり、中の人物が動く写真のような物とその下には大きく値段が書かれている。

 捕まえればいくら!みたいな奴だろう。


「この世界にも指名手配犯みたいなのってやっぱいるんだなぁ」

「しめーてはーいはーん?」


 ツキミは透の言葉に耳をピクピクと動かし胸元から顔を見上げ聞きなれない言葉に疑問符を浮かべる。

 壁を見つめてた透はツキミの言葉を訂正して、前世の指名手配犯について軽く説明をした。


 ダンジョンドロップ品の鑑定が終わり買取金額を受け取り計算したが、やはりポーション代や食料代の方が高くマイナス収支になっていた。

 少々がっかりしながらも気持ちを切り替え依頼を受け、ギルド本部をあとにした。



 宿に戻る前にいつもの空き地で久々の訓練を行い始めた。

 ルドニール改で一通り素振りや模擬戦等を行った後、透はルドニールを2丁具現化し両手に構えると具現化して作り出した的に向かって撃ち始める。


「ふと思ったけど2丁拳銃ってかっけえよな、なんとも厨二心をくすぐる」


 そんな事を呟き走りながら色んな体制や角度で2丁のルドニールの銃口から魔力弾を連射していた。

 魔力弾の速度もコントロールも全てイメージの強さと魔力制御の繊細さで行われている為、透はその想像力をもってして全ての魔力弾を的の中心の一点に集めている。


「凄い集中力なのだ……」

「我には到底及ばぬがな」


 透の訓練を見ていたツキミが独り言を呟くと思いのほか返事が返ってきた事に驚き後ろを振り向く。

 そこには夕日を背に浴び逆光となったオンハルトが含み笑いをして肩を揺らしながら立っていた。


「気持ち悪いのが来たのだ……」


 ツキミの言葉を完全にスルーしたオンハルトは透に声をかける事無く建物の影に溶けるように消えていった。

 突然現れサッと消えていったオンハルトに取り残されたツキミは呆然としながら呟く。


「一体何だったのだ」


 建物の方を見つめていたツキミに訓練を終えた透が不信がり声をかける。

 たった今一瞬だけオンハルトが現れ笑いながらすぐさま消えていった事を伝え、2人して疑問符を浮かべながら建物の影を見つめた。



また久々の更新となります。

年末から猫や家族や自分の体調が崩れボロボロでした……。


ゆっくりとではありますがまた更新していこうと思いますので、

どうぞお付き合いの程よろしくお願い致します。

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