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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第一章
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樹海ダンジョン 上

 樹海ダンジョンに入り透の怒りに任せ一気に10階層目のボスまで突破した所で透の体力が殆ど無くなり、更に透の怒りが収まってきた。


「落ち着いたのだ?」


 透の様子を観察していたツキミが呆れた表情で問う。

 それに肩で息をしつつ透は頷き休憩を求める。

 更に呆れた表情をしたツキミは、透の前を歩き10階層の下へ続く階段の更に奥の扉へと入っていった。


 そこは休憩所のような場所で、大きいダンジョンでは5階層ごとに作られている。

 浅い階層では行商人もいる事が珍しくなく、ここのダンジョンも王都で人気があるので数人の商人が休憩所の中で商いをしていた。

 自前のポーションを使用するより多少割高でも買える場所で購入して手持ちを減らさない事がより深くまでダンジョンを攻略する鍵となる。

 ツキミもそれに則り商人よりポーションと保存食をいくらか購入して透に渡した。


「今日はここで休むのだ。明日からは協力して下を目指すのだ」

「わかった、迷惑かけたな」


 ツキミの言葉に素直に頷き保存食とポーションを食す。

 そしてそのまま透は体力を回復させる為に眠りについた。


 ダンジョンでの敵は何もモンスターだけではない。

 狩場にはマナーが設けられているが、全員が全員それを守るわけでもなく冒険者を狩って食料や金目の物を奪う輩や女冒険者を慰み者にする輩も少なくない。

 特に下層会に進んでいくとむさ苦しい男冒険者が多くなり、強い信頼で結ばれていないパーティ等ではパーティ内でも問題が起こる。


 ツキミは透のおかげで体力も気力も有り余っているので、透を寝かせ一晩見張りを行う事とした。

 勿論絶世の美少女であるツキミを見る者は多く、必死に理性と戦っている者や声を掛けてくる者もいた。

 そいつらをツキミは雷撃で黙らせ透が眠る最中目を光らせ続けた。



 透が目を覚ましたのは冒険者達が誰もいなくなってからだった。

 ダンジョンの中では日時感覚が狂う為、今が朝なのか夜なのかもわからない。

 けれど周りに商人しかいないこととツキミの冷たい視線で透は寝過ごした事を悟る。


「あ、あー……」


 なんとも歯切れの悪い透にツキミは眉一つ動かす事はなく、下の階へ探索に行く事を提案する。

 表情だけが凍りついていて責められるわけでもないその様子に更に透は居心地が悪くなるが、ツキミとはぐれるわけにもいかないので小さな声で謝罪をし華奢な身体の美少女を追いかけた。



「ボスと思われる強い気配に向かって真っすぐ進む事もできるけど、探索していくのだ?」


 11階層に降り立ったツキミは透に向かって問う。

 フィールドは10階層ごとに変貌を遂げる。

 樹海ダンジョンも例には漏れず1~10階層までは草原のような見通しの良いフィールドが続いていたが、11階層からはガラリと様子が変わり背後には上層階から来た者を吐き出す石の扉があり、左右に大きな木が生い茂り中央には手招きをするように若干整えられた石畳が敷かれていた。

 ツキミの感覚だとボスと思われる強い魔力反応は左の木が生い茂る奥にあるそうで、石畳は遠回りだったり罠の可能性が高いとの事である。


「この階層だけちょっと探検してみようぜ、その12階層からはツキミの感覚を頼りにボス部屋に直接向かおう」

「わかったのだ」



 左右は木々に囲まれ石畳はその間で右に左にゆるやかなカーブを描きながら進む。

 もう何時間歩いた事だろうか、景色に代わり映えはなく時折出現する弱々しそうなキノコのモンスターと鋭い牙がびっしりと生えている花のモンスターが襲ってくる位だ。

 透がルドニール改を具現化する必要すら無く、ツキミがお得意の雷撃で仕留めて歩く。


「いくらダンジョンが広くても、こんなに歩き続けて何も景色が変わんねえっておかしいんじゃねえの……?」

「うーん、ボスの気配が近づいている気がしないのだ」


 ツキミの言葉に更にげっそりとした顔をし、透は一度足を止めた。

 ツキミが不思議そうに透を覗き込むと、急にガバッと顔を上げ悪戯っ子のようにニヤリと笑った。


「木の上から見渡してみるか」


 ツキミは透を止めようと口を開きかけたが時すでに遅し、透は言い残して隣の木目掛けて助走をつけ走り出していた。

 地面から飛び移り木に足を着いた瞬間に靴裏から魔力を放出し、隣の木へ飛び移る。

 それを繰り返して透はひょいひょいっと数メートルもある大木の頂点まで登っていったのだ。


「多分無駄だと思うのだ……」


 木々の高さが全て同じだった為、目の前に広がるのは緑の絨毯だけだった。

 その光景に透は思わず感嘆の声を上げるが、どこまで石畳が続ているかの収穫は無かった。

 しょんぼりとしつつ降りた来た透がツキミに結果を報告するが、ツキミはわかりきっていたとばかりに呆れ顔だけ残して先に進んでいった。


 更に石畳を歩くこと数十分、目の前に現れたのは鬱蒼と茂る木々のみ。遂に石畳がなくなった。

 正面の木々の奥に石の扉がチラチラと覗いている。


「お!ボス部屋か!?」


 透は期待に胸を躍らせ木々の間を縫って走り石の扉前へと飛び出す。

 扉に魔力を注ぎ込みゆっくりと開けると、広がっていたのは上層階へと続く階段だった。


「う、そだろ……」


 何時間も頑張って歩いて目的地に辿り着いたと思ったらスタート地点へと逆戻りしていた。

 探検して行こうと提案した透はお宝どころか何も成果を得られないまま振り出しへ戻され、石の扉に体重を預けがっくりと肩を落として項垂れていた。


「満足したのだ?」


 森の中から呆れ顔のままゆっくりと現れたのはツキミだった。

 ツキミは最初からわかっていたようで、それでも楽しそうな透に水を差さないように黙って後ろをついてきてくれたらしい。


「ここに入ってから色々と迷惑かけっぱなしで……ごめん」


 透は上層階での突っ走りと休憩所での醜態、それから11階層での無意味な時間の全てに謝罪をする。

 ツキミはふわっと微笑んで項垂れる透の頭を撫でて耳元で囁く。


「偶にはこんな事もあるのだ」


 透の身勝手に我儘に文句も言わず後ろをついて歩きフォローまでしてくれたツキミに感謝を伝え気持ちを切り替える。

 今度はツキミの感覚を頼りにボスを目指して進む。


 石畳の上を歩いていた時とは違う手応えのあるモンスター達がボス部屋の気配へ近づくにつれて、数を増やして2人へと襲い掛かる。

 巨木に擬態するトレントが急に大口を開け襲いかかってき、超音波で切り裂いてくる蝙蝠が集団で襲ってき、木々が覆い茂っており湿った地面は2人の機動性を削ぐ。

 2人は急に難易度が上がった11階層を今度こそ背中を預けあって協力し突破していく。


 そして、石畳を歩いた時間の半分以下でボス部屋の扉へと到着する。

 石の扉に蔦が絡まり周囲に同化しようとしている扉をあけ放つと、中にはまさしく狼人間と表現するのが相応しいモンスターがいた。

 ギラギラと殺意を宿す瞳、大きな牙が覗く口、ぴくぴくと動く鼻でこちらの動向を伺っている。

 硬質そうな毛に全身を覆われ2足で立っているソイツは、二の腕と太腿の筋肉が異様に発達しており顔と同じ大きさにまで膨らんでいる。


 背にした扉が閉まった瞬間、狼人間が咆哮を上げ大地を震わせた。

 更に殺意が高まった瞳で透とツキミを射抜き、そのまま腕を振るうと爪先から風の刃が飛び2人を襲う。

 透はルドニール改を具現化しツキミを後ろにかばいつつ刃を受け止めると、負けずに咆哮を上げ狼人間に向かって走り出す。

 ツキミは足元に結界をはり空中へと駆け出し上空から雷撃をお見舞いさせ、一瞬隙が出来た狼人間に向かって透がルドニール改の引き金を引きながら振り下ろす。


 ルドニール改が微振動を起こし大気を震わせながら狼人間を切りつける。

 だが、岩をも切り裂く高周波ブレードとなったルドニール改でも薄っすらと皮膚を削るだけだった。


「こいつ、無茶苦茶かてぇぞ!」

「任せるのだ!下がるのだ!」


 ツキミの返答を聞き全力で後ろに飛びのくと、ツキミは竜巻を起こし狼人間を取り込む。

 その竜巻の中には風の刃が縦横無尽に飛び交い狼人間を全方向から削っていく。

 暴風に対して爪を食い込ませ抵抗を見せる狼人間だったが、じんわりと風刃で剛毛が削られ皮膚に傷をつけ血が滲んていた所に、容赦ない特大の雷撃が降り注ぐ。

 狼人間がプスプスっと煙を上げ倒れそうになった所に雷撃で追い打ちをかけ絶命させダンジョンへと吸い込ませた。


「楽勝だったのだ」


 透に向けてドヤ顔をしつつ地上に降り立つツキミと今の惨状をみて、透は頬を引きつらせ乾いた笑いをあげつつツキミに悟られないようにボソっと呟く。


「絶対怒ってたじゃん……」

最近は仕事が忙しくなり中々執筆する時間が取れないでいます( ;∀;)

そんな中でも頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!


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