始まりの町、サンロットを目指す
2020/7/2 改稿
※物語の流れに変更はありません。
ロケットランチャー1発で魔力枯渇に陥り意識を手放した透の目覚めを待つかのように、目の前には先ほどロケットランチャーでぶっ飛ばした猫が座っていた。
透は猫に当たらないようにと願いながら放っており直撃は回避していたが、爆風に巻き込まれ飛ばされ土まみれになっている。
目の前にちょこんと座っている猫は、土で汚れてしまっていても分かるツヤのある薄い桜色の毛並みに金と銀のオッドアイ、尻尾が二股に分かれている。
猫という生き物が皆可愛らしい見た目をしているのは世界が変わっても共通認識のようだ。
「言葉は……通じるのか?君は一体なんなの?」
「それはあたしが言葉を喋れないと思っているのだ?失礼な奴なのだ!」
ぷんすこと軽く怒りながらも猫は自己紹介をした。
名はツキミ、獣人族という人種であり冒険者になったばかりのヒヨッコである。
調子に乗って森の奥へ立ち入ったらレベルの高い熊3匹にエンカウントし、ボロボロになりながらも逃げていた所、透を見つけ爆風で吹き飛ばされつつも助けて貰ったと言う。
一度は助けを求める声に背を向け逃げ出し、更には容赦なく巻き込みながら凶器をぶちまける透に、助けて貰ったからと目覚めるのを待っていた──要するにアホの子だ。
ツキミは透も冒険者のヒヨッコだと思っていたようだが、異世界からの転移で何も知らないという突拍子もない話に半信半疑になりながらも説明をする。
今いる場所はサンロットという町から東に半日ほど進んだ場所となる。
「この近くに他に町は無いのだ、だから多分透はサンロットに落とされるはずだったと思うのだ」
「なるほど……」
サンロットでは冒険者登録ができ、登録をしておくとクエスト達成や魔物の討伐履歴により、難しく報酬が美味しいクエストを優先的に紹介してもらえたり国が管轄している施設の割引などが受けれたりするという。
また、ギルドで発行されるブレスレットは身分証明書となり、自分のステータスやレベルなどが確認できる便利アイテムである。
透は本来の予定通りサンロットへと訪れ冒険者登録をしようと決めた。
目の前にいたから程度に軽くツキミへ問いかけた。
「俺はサンロットへと行くが、ツキミはどうするんだ?」
(本当ならここで出会うのは可愛い女の子でこれから美少女に囲まれハーレムを作っていくっつーのがテンプレなんだけどなあ……。世の中そう旨くはできてねぇのかなぁ)
最初に出会ったのは猫、という事実は変えられない。
ツキミは一瞬照れたような表情になったがすぐに戻り、元気よく透に同行する旨を伝えたのだった。
透の魔力が回復するのを待ち、1人と1匹はサンロットを目指し歩き出した。
ツキミから草原には弱いモンスターが所々に生息しており、町に到着するまでには何かしらの敵に遭遇する可能性が高いという話を聞き、透は戦闘方法を考えていた。
(多分さっきの気を失ったのが魔力枯渇ってやつだろうからなぁ……。弱いっつっても毎回気絶してたんじゃ話にならんよなぁ、どーしたもんか)
武器を何にするか決めかねて歩いていると、前方に影が飛び跳ねているのを発見する。
透はとりあえずロングソードを具現化し、ジリジリとその影へと近づいていく。
目視できる距離までくると、そこには赤・青・黄の30cm程ありそうなカエルの群れがぴょこぴょこと移動をしていた。
「うへぇ……気持ち悪いな……」
透が気持ち悪さの余り警戒を解き目を背ける。
集中力が切れ手元に具現化していたロングソードが青い粒子となり消えていった。
「説明は後でするのだ!すぐに逃げるか、範囲攻撃で殲滅をするのだ!!」
ツキミが毛を逆立て桜色の魔力を電気のようにし体に纏った。
透は悠長にバチバチと音を発生させる足元のツキミを見やり首をかしげる。
カエル達はその間に2人に気が付き、一瞬で隊列を組み攻撃を始めた。
前方のカエル達は凄い勢いで透達へと突進を初め、中程のカエルは口を大きく開き、赤いカエルは炎を、青いカエルは煙を、黄色いカエルは突風を、それぞれ吐き出す。
そして後方のカエルは一斉に鳴き出し音波によって攻撃してきた。
ツキミは透の前へと進み出て、体に纏っていた電気のような魔力を大量に放って、突進してきたカエルを撃墜していく。
前方のカエルに当たらなかった雷撃は、そのまま中程で魔術を放っているカエルの誰かしらへと当たり、全体の20%ほど殲滅する事に成功した。
透はその光景を唖然と眺めていたが、中程のカエルが放った魔術が身体へと当たった痛みでやっと我に返り慌てて戦闘態勢へと入る。
火炎瓶を具現化し後方のカエルを目掛け投げていく。
そして火炎放射器を具現化し、ツキミが撃墜できず飛び込んできたカエルらを丸焦げにしていく。
突進してきたカエルの殲滅が終わると、カエル達の隊列が変化し数を減らしつつも再度、前衛・中衛・後衛と分かれ最初と同じように攻撃を始めたのだ。
カエル達の攻撃パターンが変わらないのと、痛みは走るがなんとか堪える事ができる程度なのが幸いし、透達は攻撃を受けつつ雷撃と火炎放射器でなんとか残りのカエルを殲滅する事に成功した。
「この辺で出会うモンスターは弱いとか嘘じゃねーか……」
息も絶え絶えに透はツキミへとぼやく。
お互いに敵の攻撃を受けつつの戦闘だった為にボロボロとなっていた。
確かにカエル個々の戦闘力は高くなかったのだが、連携が上手くとても苦戦する戦闘となった。
「カエル達がここまで群れで行動している事は殆どないのだ……」
カエルとの戦闘で体力はガッツリと削られたが、町までの距離は全然稼げていない。
透は早く町へ行きたい気持ちを抑え、その場で休憩をして行く事を提案する。
ボロボロの現状で移動してモンスターに遭遇をすると、魔力枯渇で気絶が早いか倒すのが早いか。
互いに交代しつつ辺りを警戒し、少し体力と魔力を回復する。
ある程度体力と魔力が回復してきた所で日が沈み始めたので、どこか安全に寝れる場所が無いかを探しながら少し進んでいく。
歩いても歩いても永遠と広がる草原だけで遮蔽物になりそうな場所はどこにも無く、仕方なく透達は草原のど真ん中で一晩を明かす事にした。
「腹減ったなぁ」
そう透が呟くとツキミはどこからともなく大量の生肉を取り出す。
「これを焼いたら食べれるのだ」
「この肉の量はどうしたんだ?」
「う?これはさっき倒したカエルたちなのだ」
うげ、と透は嫌そうな顔をしたが、背に腹は代えられない。
これからも倒したモンスターを食べる事はありそうなので、これも異世界の常識だと腹を決めた。
指先から火を具現化しカエル肉をこんがりと焼き、意を決して透は初めての異世界での食事を口にする。
「お、案外いけるもんだな」
「カリッとプリっとしてて、おいしいのだ~」
ツキミも満足そうにカエル肉を頬張っている。
異世界のカエル肉は不思議な事に、同じように焼いているだけなのに違う味がする。
どうやら元のカエルの色によって少し味が違うようだ。
いつでも動けるように腹八分目程肉を食い、交代で仮眠を取る。
透の異世界生活初めての夜が更けていった。
思ったより進まなかった・・・・・・"(-""-)"
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