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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第一章
19/87

第1357回 王都武闘会

2021/2/22 改稿

※物語の流れに変更はありません。

「お集まりの皆々様!只今より第1357回王都武闘会を開催いたします!」


 コロシアムのような場所の中央で、司会が声高々に武闘会の開催を告げる。

 コロシアムに備え付けられている王族用の席は全て空席となっているが、そこに敬意を向け来場した全ての人がその後の進行の声を聴くまで頭を下げた。


 武闘会の開催は3日間に分けられており、初日は予選が行われる。

 王族は最終日のみしか現れないが、その日まで残れればたとえ優勝できなかったとしても、王族の目に留まる可能性が出てくる為、出場する全員が夢を見て武闘会へと臨んでいた。


 予選は参加者がかなり多い為、闘技場を4分割して結界を張り、各結界の中で次々と試合が進められていく。

 更には全ての人が控室に入る事はできない為、自分の出番の2試合前になったら客席から控室へと移動する事となっていた。


 透とツキミも客席で予選を見学していた。

 明日から予選を勝ち抜いた者達で本格的なトーナメントが始まると共に、賭けも行われるので客たちは誰に賭けるかを見極める為、予選を見学しに来ておりコロシアムは立ち見が出る程に満員状態だ。

 2人の隣に座っているおっさん達も今年の予想で話題は持ち切りのようだ。


 選手たちが続々と入場して各所定位置につき、司会の合図と共に一斉に試合が開始された。

 明かに実力差がある試合もあり一瞬で片付く所もあれば、強さが拮抗している所もあるが、1試合15分程で4区画全ての試合が終わった。


「結構サクサクと進んでくもんだな」


 透の呟きにツキミは頷き自分の出番を確認する。

 もう2試合終わったら自分たちの控室入りの時間となる為、早めに移動しつつ次の試合を立ち見する事にした。



 予選は大会上位常連以外は申し込み順に割り振られる為、透とツキミは一緒に控室へと入った。

 既に控室にいる人々を観察するが、近所の住民が腕試しで参加する事も珍しくない為、パッと見は強くなさそうな人が多い。


 2人の試合の順番になり、闘技場へと入場し決められた結界の中に入る。

 透はガンブレイドモードのルドニールを具現化し構え、ツキミはいつでも雷撃を発せれるように魔力を練り準備する。

 透の対戦相手は初めて見る武器の形状に驚き、ツキミの対戦相手は丸腰な美少女1人と油断し武器も構えずニヤニヤしていた。


 試合開始の号令が響く。



 透の対戦相手は初めて見る武器に警戒し踏み込んでこず、剣を中段に構えたまま透を観察していた。

 透はルドニールを相手へと向けながら地面と平行になるように構えると、銃口が光を集めだす。

 キィィィィィ、という音とともに銃口の中に多めに溜まった魔力を、引き金を引いて開放してやると、30cm程の魔力弾が対戦相手に向かって放たれた。


 対戦相手は驚きつつも1発目の魔力弾を横に飛ぶ事でなんとか回避するが、地面が抉られる程の威力を見せつけられ、すぐに武器を投げ捨て両手を上げ棄権を表明した。

 透は相手の行動に拍子抜けしたまま、ルドニールの具現化を解除し肩の力を抜いて退場する。



 ツキミの対戦相手はニヤニヤとしながら、舐めまわすようにツキミを見て汚い笑い声を発していた。


「ヘヘヘヘ、どこから弄ってやろうか」


 ツキミは顔を少し顰めただけで、返答もせずそのまま魔力を練り上げる。

 その不機嫌さは次々とツキミの周囲を取り巻くように発生させた雷撃に表れていた。


「気持ち悪いのだ、滅びるといいのだ」


 試合開始前から練り続けていた魔力は、全てを焼き尽くすような膨大な量の雷撃を放つ。

 結界が雷撃を外に漏らす事はなんとか避けたようだが、爆音と共に多少揺れた闘技場では他の選手達が唖然としながらツキミを見て乾いた笑いが少し上がった。

 透ですら一瞬時が止まり苦笑いをしていた程で、大きく盛り上がっていた客席も静まり返っている。


 その雷撃をまともに食らった対戦相手は、絶命したのかと思う程丸焦げになっていた。

 試合を取り仕切る王都の魔術師たちが一斉に駆け寄ってきて回復魔術をかける。


 どうやら元々結界に特殊な効果がかけられており、その結界内で命を落としても5分以内であれば蘇らせる事が可能になるらしい。

 なんとか命を吹き返した対戦相手は、ツキミを見た途端震えながら失神した。


 ツキミは鼻先でフンと息を吐き、控室へと踵を返していった。

 その後を試合が終わっている透が追いかける。


「アイツあんなに短気だったけかなぁ……」


 そのボヤキがツキミに届く事はない。

 その後も着々と予選を勝ち抜き、2人は本選に進む切符を手に入れた。


 客席では新しく表れた見たことも無い武器を空中から取り出す少年と、慈悲の無い雷撃で対戦相手を丸焦げにする美少女の話題で持ち切りとなった。

 その中には息を荒くし熱い視線を2人に向ける、脂ギッシュで頭上の皮膚面積が多いオッサンもいたが、盛り上がっていた客席では誰もその様子を気にする事はなかった。



 熱も冷めぬまま、2日目の武闘会が始まる。

 本選では試合が時間切れで終了する事がなくなり、どちらかが降参をするか戦闘不能になるまで続けられる。

 更に闘技場も4区画に分けられていた結界が取り払われ、大きな1つの結界で保護されていた。


 予選を潜り抜けたメンバーの中からくじを引き対戦相手を決定していくが、運が良いのか悪いのか透とツキミは1試合目で当たる事になった。


「透には絶対負けないのだ」

「いつもの模擬戦じゃできない本気見せてやるよ」


 一緒に強くなってきた2人には、お互いの手の内はバレており小細工は不要。

 普段の模擬戦では周囲に気を使って出せない力も久々に出し切って戦えるとなり、透とツキミは純粋に勝負を楽しみに顔を綻ばせ、拳をぶつけ合いお互いに闘志を漲らせた。


 闘技場に2人が現れると、はち切れんばかりの歓声が客席からワッと上がる。

 昨日の予選で印象的だった2人の試合は期待度が高まっていた。


 透はツキミと相対すると同時に、ガンブレイドモードのルドニールを具現化する。

 対するツキミは人の姿では無く元の猫の姿へと戻った。


 獣人族が獣の姿と人間の姿を変えられるという知識はあっても、実際に獣の姿になると動物と獣人族の区別が難しく、身近に獣人族の知り合いでもいなければ獣の姿を目にする事はそう無いだろう。

 観客が歓声も忘れ、2人へと釘付けになった。


 試合開始の号令と共に2人は一気に飛び出した。

 透はツキミとの距離を詰める為に前に、対するツキミは得意とする遠距離で戦う為に、空中に結界の足場を張り上へ。


 お互いが交差する瞬間、見上げた透は魔力弾を放ち、見下ろしたツキミは雷撃を発するが、相殺され爆風が2人を包んだ。

 透がツキミに近づく事を一旦諦め、ルドニールを構えなおす。


「チェンジ、簡易マシンガンモード!!!!!」


 剣身はそのままに、銃身が伸び回転弾倉部分からは弾帯が伸びる。

 あくまでイメージ補佐となる為だけに具現化された弾帯に弾丸は繋がっておらず、魔力を弾帯に張り巡らし魔力弾となり発射させていく。


 バラララララララとマシンガンの音が鳴り響き、ツキミが避けた氷を纏った魔力弾が結界に当たり凍らせていく。

 ツキミは身体強化を最大まで引き上げ、当たりそうな時のみ身を守る結界を展開し、音を置き去りにし走りまわっていた。

 透が認識しているのも残像ばかりで、秒間100発もの魔力弾はツキミに掠る事無く、透の膨大な魔力をガリガリと削っていく。


「甘いのだ」


 透の耳元でそんな声が聞こえた気がした。


 その直後、四方八方から降りかかる雷撃の嵐は、身を守る結界を張る猶予さえ与えてはくれない。

 透はマシンガンに込める魔力の質を変え、雷撃を迎撃する事に専念する。

 大きなルドニールを構え、遠心力を利用し速度を上げ回転する事で全方向の雷撃を打ち落としていった。


 透もツキミも撃墜しきれなかった攻撃がお互いを身をジリジリと削った。

 どちらかの集中力か魔力が切れた時が、この激しくも拮抗している膠着状態が動き、勝敗が決まる時だろう。


 結界の中では雷撃と魔力弾で溢れかえり、眩い程の光が2人を包んでいた。

 客席に届くのはその轟音と眩しさのみで、中の様子を目に捉える事はできない。


 突然何の前触れも無く光と轟音が止み、辺りを静寂が包んだ。

 観客は息を飲み、結界の中で舞い上がる砂埃の中に目を凝らす。


 砂埃が落ち着き、結界の中で立っていた物は……いなかった。



 透とツキミは同時に魔力枯渇に陥り、共に意識を失っていたのだ。

 救護班が慌てて駆け付け、2人に回復魔術をかけながら控室へ連れていった。


「両者意識不明により……勝者無しとする」


 困惑したような司会の声が闘技場内に響き渡り、観客からはどよめきが起こった。

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