【閑話】はっぴーはろうぃーん?
2021/1/30 改稿
※物語の流れに変更はありません。
透はふと違和感を感じ目を開けるとそこには何もない世界が広がっていた。
わけもわからず歩き出すと、目の前に光が集束して来て女神が現れた。
「あぁ、またお前か」
「女神に向かってまたとはなんですかー、またとは」
若干キャラ崩壊が始まっており、当初出会った時の荘厳さはすっかりと失われていた。
間違えて草原に転移させた時の軽い感じといい、きっと元は少女のような性格をしているのだろうと予測する。
女神はくるりと回転すると、光を放っていた煌びやかな衣装から一転し、魔女風の衣装へとチェンジする。
「とりっくおあとりーと!ですよ!」
「は?」
女神はばちこーん★とウインクをしてステッキを振り回す。
そして今の世界では聞かない地球のイベントの台詞を口にした。
「透さんが元居た世界では今日ははろうぃーんという奴らしく、皆様楽しそうにしてらっしゃったので……私も乗っかってみました!」
えへへ、と笑いながら透の周りをくるくると周回する。
「まさか、その為に俺をここに連れてきたのか?」
「その通りです!」
女神はドヤァと胸を張りつつ手を差し出して、早くお菓子をくれアピールを繰り返す。
「因みに悪戯は何をするつもりなんだ?」
「悪戯?とは何のことですか?」
はて、と首を傾げて透へと質問を投げかける女神。
どうやらハロウィンの意味もトリックオアトリートの意味もわからず、とりあえず言っておけばお菓子が貰えると思っていたようだ。
詳しく教えるのも面倒なので、透はペロペロキャンディーを具現化し女神へと投げつけた。
顔面でキャンディーをキャッチした女神は、そのまま顔をべたべたにしながらキャンディを堪能し始めた。
「おい、もういいだろ帰してくれ」
「はいはい、さよならー」
用事が済んだらさっさと送り返してくれるようで、透は目の前がブラックアウトしていきそのまま意識を失った。
透はカーテンの隙間から差し込む朝日の眩しさに顔をしかめて目を覚ます。
顔を横に向けると猫モードのツキミが、枕の横で丸くなりスヤスヤと眠っていた。
先ほどの女神とのやり取りを思い出し、ニヤっと口元を歪めてツキミを揺すり起こした。
「んあ、おはようなのだ」
寝ぼけたツキミが欠伸をして、身体を伸ばしながら挨拶をする。
それに適当な返答をし、早速本題に入った。
「今日は元々俺がいた世界ではハロウィンというイベントの日らしいんだ」
「はろうぃん?それはなんなのだ?」
元々は幽霊に子供が連れ去らわれないように仮装したり、収穫祭だったりとした意味合いがあるのだが、そんな事を説明してもツキミには理解ができないだろうと考え、とても端折って説明をする。
「つまり、トリックオアトリート!」
「とりっくおあとりーと?とはなんなのだ?」
「要はお菓子をくれないと悪戯するぞ、ってことだ」
「ほほう、なのだ」
ふむふむとツキミは頷きながら少し考え、ギギギと錆びた扉みたいな音を立てそうな動きでゆっくりと透を見る。
「お菓子、ないのだ、つまり、透に、いたずら、される、のだ?」
ゆっくりと確認するツキミにニヤァと口元を歪めた透が、その通りだと頷く。
ヒッと息をのんだツキミに手をワキワキさせながら伸ばし、そのツヤツヤでモフモフな身体を心ゆくまで堪能する。
身体中をモフモフと撫でまわし、毛を逆なでしてみたり、お腹に顔を埋めてスハスハしてみたり、肉球をスハスハしてみたり、ぺろりとしてみたり……。
透の度の過ぎた悪戯に、最初はされるがままだったツキミも怒り、いつもより強めの雷撃を落とした。
「アババババババババ」
「ふん!いい気味なのだ!!!」
プスプスと煙を上げつつ、意識を失った透を尻目にシャワーを浴びに行く。
ドキドキと高鳴った心臓の音と火照った頬は気のせいだと、自分に言い聞かせツキミは熱いシャワーを浴びた。
数時間失神していた透がゆっくりと起き上がったのを確認して、2人は王都の街並みの中に消えていった。
王都にいる知り合いと言えば後はオンハルトくらいしかいない、出会えるかわからないが王都を観光するついでにどこかで見かけたら悪戯もとい、トリックオアトリートをしてやろうと2人は目論んでいる。
のんびりとカフェのような場所でご飯を食べていると、漆黒のマントをはためかせ大きな棺を担いだ人物目の前を横切った。
「お!オンハルト!ちょっと待てよ」
聞こえる距離で話しかけたはずなのに、振り返りもしなければ歩みを止める事もせず漆黒の人物は人込みへと消えかけていた。
透とツキミは急いで追いかけ肩に手をかけ振り向かせると、その人物は怪訝そうな顔で透を見下ろした。
「おい、オンハルト、何で無視すんだよ」
「お主は勘違いをしているみたいだが、オンハルトは我の弟だ」
その言葉に驚きつつもよくその人物を観察する。
オンハルトは白黒混じっており所々破れた服を着ていたが、目の前にいる人物は全て黒で統一されており破れている所か、ほつれすら見当たらない服装に身を包んでいる。
更に右側がではなく左側が刈り上げられ、髪の毛に入っているのは赤のメッシュではなく青のメッシュだ。
そして何よりも銀髪ではなく黒髪なのだ。
「あー、それは、すみません」
フッと目の前の青年は笑い、そのまま人込みの中に姿を消した。
「まさかオンハルトみたいな人が、2人もいるなんて思いもしなかったのだ」
「あぁ……そうだな……」
その後王都を観光し終えて太陽も西の空に沈み始めた頃、少し暗めの路地で休憩をしていると頭上から「フハハハハハハ」という笑い声が響き渡りオンハルトが目の前に降ってきた。
「やっぱりオンハルトは神出鬼没なのだ」
「我は深淵の使者也。闇在る処に我はいる。深淵は常に汝等を見ているだろう」
ヒラヒラと舞う服と包帯を靡かせ、オンハルトはポーズを決め語り掛けてくる。
それを遮ったのは透だ。
「そんな事はどうだっていい、とりあえずトリックオアトリートだ!」
聞きなれない言葉にはて、と首を傾げているオンハルトに、ツキミに説明したようにざっくりと端折って説明をする。
するとオンハルトはなるほど、と呟きながらマントの裏側から干芋を2つ取りだし、透とツキミに渡した。
「いや、こんなもんどこに入れてたんだよ……」
「フッ、深淵は私の思うがままなのだよ」
観光がメインとは言え1日かけてオンハルトを探してやっと見つけたのに、悪戯できなかった事に2人は落胆の様子を隠す事もせず干芋にかぶりついた。
「ハロウィンという習慣が存在していた事は理解した、では我も汝等に告げよう、トリックオアトリートと」
オンハルトからの逆襲にツキミはその手があったかと目を丸くし、透はフッフッフッフと愉快そうに肩を揺らしながら笑う。
「その言葉予想済みだぜ!!ほらよ!」
そういって透が取り出したのは、先ほどのカフェでこっそり持ち帰りにしてあったスコーンのような食べ物だった。
オンハルトはそれを満足そうに受け取りツキミを見やる。
「猫のお嬢さん、汝の力見せてみよ」
「ぐぬう……持ってないのだ……」
ツキミはまさかトリックオアトリート返しをされるとは思っておらず、お菓子を持ち歩いてはいなかった。
そんなツキミを透は助ける事もせず、持ち上げてオンハルトへと差し出す。
「さあさ、悪戯してやってくれていいぜ」
「透のばかぁなのだ!私を売るのだ!?」
手の中でジタバタと暴れるツキミに引っかかれないように、脇の下を持ってズイっとオンハルトに差し出す。
オンハルトはそのまま透の意向に乗り、ツキミを受け取って腹に顔を埋めてスハスハしようとした所で、引っかかれ地面にツキミを落とした。
クルっと一回転をしながら地面に着地し男達2人を睨みつける。
オンハルトの顔面には、ツキミに引っかかれた蚯蚓腫れがくっきりと残り、痛々しさを醸し出していた。
怒り心頭なツキミを透は必死に宥めて宿に帰り、オンハルトはそのまま闇に溶けていき騒々しい1日が幕を下ろした。
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