ユーリウス・イグナルト・D・オンハルトという存在
2021/5/21 改稿
※物語の流れに変更はありません。
サンロットにて透とツキミの相手をしたブロンズランクの冒険者、ユーリウス・イグナルト・D・オンハルトという者がいる。
本来は骨に特化した魔法という物は世界に存在していないのだが、当人の患う極度の厨二病により骨を扱う事を得意とし、卒業試験で召喚させた巨大な骸骨を初めとして、透の思いつきによる大きさを変えた馬骨系モンスターの召喚、骨の結界や数多くの骸骨を召喚したりしている。
気分屋でサンロットを出る際には透達に拒絶されようと一緒に旅に出たかと思えば、王都につくとすぐに何処とも無く消え、またツキミのピンチに何処からとも無く現れ闇に消えていく。
神出鬼没で厨二病だという事以外謎に包まれた、ユーリウス・イグナルト・D・オンハルトという男のとある1日。
◇◆◇
王都へと訪れたオンハルトは、透とツキミと分かれ人込みの中へと消えていった。
その奇抜で目立つ容姿では何処を歩いていても注目を自然と集めてしまうと思いきや、認識阻害の魔術を己に常時発動している為、オンハルトを気にする者は誰一人としていない。
人の間を縫うように進み続け、いくつもの路地を抜けると周辺の雰囲気が一変した。
雑多で狭苦しい住居の並びから、広く悠々とした庭があり気品のある建物が並んでいるのが遠目からでもわかる。
その豪勢な家々への侵入を拒むように、気品のある建物たちが並んでいる区画をぐるりと囲う鉄格子と上空を覆う結界が貼られており、東西南北に設置されている門には白く輝く甲冑を身に着けた門番が2人ずつ警備にあたっている。
それもそのはず、鉄格子の中は貴族や大商人といった金持ちが住んでいる区画となり、更にその中心に白亜の壁に囲まれた王城が存在していた。
オンハルトは認識阻害の魔術を解き、門番の前にゆっくりと歩いていくと、姿を確認した門番達は素早く門を開け、通り過ぎるオンハルトへ敬礼をし送り出す。
門番へ軽く手をあげる事で挨拶をし、堂々と通りすぎるその姿には確かに貴族の気品を感じさせる。
通常貴族に生まれた者で冒険者になる者はまずおらず、貴族街から出る事は殆ど無い。
外出する時も従者が付き馬車で移動をするが、オンハルトを含めDの一族と呼ばれる者達のみ従者を付けず自由に出入りをしている。
毎晩何処かの家で開かれているホームパーティにも出席する事は無く、他の貴族の者達との関わり合いを持たない為、周囲からは気味悪がれていた。
それどころかその一族に名を連ねる者達は、各国を渡り歩き殆ど1つの国の家にはいない。
各国の貴族街に巨大な家を持ち、普段は使用人だけが暮らしているのだ。
その国に寄ればその家を拠点としたり、気分で宿を取ったりと、オンハルトだけではなくDの一族全ての者が基本的には神出鬼没となっている。
やがてそれまでの白と金を基調とし建造されていた数々の貴族の家とは異なる、漆黒と深紫を基調とするゴシック調の豪邸が出現した。
明らかに周囲から浮いており、禍々しいオーラを放っているようにさえ見えてくるのも、周囲の貴族達から気味悪がられている原因の1つかもしれない。
「おかえりなさいませ」
その漆黒の豪邸の正門に近づくと、門番が素早く門を開け恭しく頭を下げてオンハルトを出迎えるが、気にも留めず門を過ぎ去り屋敷へと向かった。
オンハルトが玄関まで残り数十歩となった所で、メイド達が扉を開けお辞儀をし両脇に控える。
屋敷の中に入ると数十人のメイドと執事が、左右に分かれ深いお辞儀をしていた。
屋敷の中も黒と紫を基調とし造られているため、昼間とは思えないような暗さがある。
天井からは青白い光を宿すシャンデリアがいくつもかけられており、玄関から入った正面には巨大な階段があり、途中の踊り場から左右に分かれて続いている。
踊り場には深い紫の分厚い布に金糸で家紋が刺繍された巨大な旗が飾られていた。
左側の階段より闇に紛れるような漆黒に身を包んだ人物が、コツコツと足音を鳴らしゆっくりと降りてくる。
彼の名前はフォルセリヤ・ケヒザ・D・セヴィオック、オンハルトの腹違いの兄にあたる人物だ。
腹違いの兄でさえ厨二病の雰囲気を醸し出しているのは父親側の血筋の濃さ、その厨二病の父親に魅入られた母達の教育や振舞い方の所為であろう。
「おかえり、暫くここに滞在するのかい?」
「ああ、興味をそそる者達がいる、アレ等はそのうち我が家を屠る者になる可能性があるな」
物騒な笑みを浮かべ楽しそうに笑い声を漏らすオンハルトに、セヴィオックが珍しい物を見て感心するような声を漏らすが、すぐに醒めたような顔つきになりオンハルトへと忠告をする。
「君には私よりも父上の血がより濃く流れている、今後この家をこの宿命を継ぐのは私では無く君だ。冒険者となって遊んでいるのも構わないが、それが全て泡沫の如く消えるという事を忘れてはいないだろうな?」
先ほどまでのどことなく楽し気な雰囲気がオンハルトから消え去り、憂鬱さで顔に陰りが浮かぶ。
「わかっている、全ては闇の導きによるものだ」
「ならばこれ以上は口出しはしまい」
そう言い残すとセヴィオックは自らの部屋へと戻っていった。
姿が見えなくなったのを確認し、オンハルトは小さなため息をつくとそのまま自分の部屋へと戻っていった。
コンコンコン。
オンハルトの部屋にゆっくりとノックの音が響く。
扉の側に控えていたメイドが扉を開け、外の人物と会話をする。
「執事長がお見えになっております、いかがいたしましょうか。」
「通してくれ」
メイドはお辞儀をして再度扉を開け執事長を招き入れ、メイドは扉の横で再び待機をする。
扉の前にてお辞儀をし、執事長がゆっくりと部屋を進みオンハルトの前へとやってきた。
執事長がきたのはセヴィオックが今夜この屋敷を出発する為、夕飯を一緒に取るのかという確認だった。
セヴィオックは見た目からでは想像できないが、凄腕の商人という顔を持っており、各国を回っては各屋敷に数週間滞在し、仕事をこなして再び出発するという生活をこなしている。
「折角の機会だ、一緒に取ろうではないか」
執事長は「承知致しました」と残し、再度お辞儀をしてオンハルトの部屋をあとにした。
広い食堂にはオンハルトとセヴィオックが席に着き、メイドによって運び込まれてくるフルコースを堪能している。
一緒に食事を取る事を選択をしたが、特に会話が盛り上がるというわけではなく、2人も黙々と食事を口に運んでいる。
そんな空気の中、先に口を開いたのはオンハルトの方だった。
「次の目的地は決まっているのか?兄上」
オンハルトの問いに淡々とした口調で今後の大雑把な予定を口にするセヴィオック。
2人の仲は険悪な物ではないが、あまり友好的な空気は感じ取れない。
オンハルトの方は特に何も気にしていないように見えるが、セヴィオックが時折一瞬だけ覗かせる表情や空気からは嫉妬の色が伺える。
そこには家業を継ぐのが自分では無くオンハルトである覆らぬ事実への嫉妬、家の支えの為に奔走している自分と自由に冒険者とし遊んでいるように見えるオンハルトを比べ、真面目に努力しないオンハルトへの苛立ちだ。
自分が次期当主であれば能力に胡坐をかかず、その期待に応えれるよう努力をするのに、と。
オンハルトへ強く当たるほどセヴィオックも子供じみてはいないが、はたから見ても友好的に接する事が出来ない分まだまだ大人に成り切れていないのだろう。
そんなセヴィオックの気持ちを知ってか知らずかオンハルトは兄に労いの言葉をかけ、それを聞いてまた一瞬表情を歪めるセヴィオック。
「それにしても兄上がもう少し長く滞在するようであれば、久々に1つ模擬戦をしたかったのだがな」
オンハルトが微笑みながら腕に巻き付けている包帯を1枚はがすと、オンハルトを纏っていた魔力の濃度が跳ね上がる。
左腕に巻き付けられたいた包帯の内側には小さな魔方陣がいくつも書き込まれていて、オンハルトの魔力を抑制する役割を担っていた。
「ああ、それは残念だ。またの機会にお願いするよ」
苦笑いをしつつも丁寧に模擬戦の申し込みを断りつつ心の中で悪態をつく。
勝てなくなった時からセヴィオックはオンハルトの誘いを全て理由を付けて断っていたのだ。
セヴィオックも常人には負けない魔力量と技術を持っているが、オンハルトは桁が違う。
子供の頃であれば勝機があったものの、現在に至ってはまるで勝ち目など見えない程差が開いている。
そうして和やかとも言い切れない食事が終了し、セヴィオックは従者を連れ夜の街に消えていった。
それを自分の部屋より見つめていたオンハルトも、セヴィオックの姿が見えなくなったのを確認し、1人でふらりと夜の闇へと消えていった。
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