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最強の武器はこの妄想力  作者: 緒嶋まゆ
第一章
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一行、王都を目指す

2021/1/30 改稿

※物語の流れに変更はありません。

 透と人間モードのツキミは翌日ギルドへと訪れると、ラティがすぐにやってきて窓口の端っこへと案内された。

 周囲からはツキミの可愛らしい姿に見惚れる様子や、ヒソヒソとした話し声が聞こえる。


「昨日はお疲れ様、君達には新しいブレスレットを用意した」


 そう言ってラティが差し出したのは冒険者の証であるブレスレット。

 ランクがアイアンからブロンズへと上がった証拠に、中央にはまっている石が鉄から銅へと変更がされている。

 2人は表情を明るくし、早速新しいブレスレットを身に着けた。


「さて、これから君達はどうするか予定は決まっているのかね?」


 ラティの問いに2人は顔を見合わせ、どちらともなく頭を振った。

 その様子を見て2人に王都行きを提案する。


「王都では色々な催しや大きいダンジョン等もある。きっと楽しめると思うぞ」

「おぉ、それは気になるな」


 透はラティの言葉に目を輝かせながらツキミへと目配せをする。

 仕方ないと若干呆れた表情をしつつも、ツキミも目を少しキラっとさせ王都行きに同意した。


「フハハハハハハハハハハハ」


 2人は背後から突然聞こえた笑い声に、ビクッと肩を震わせ後ろを振り向く。

 そこには左手を開いて顔の前にかざし仁王立ちになり、右手でマントをバサァと翻した状態のオンハルトが立っていた。

 透はグハっと精神的ダメージを受け胸を手で押さえ、ツキミは透の後ろへと隠れる。

 オンハルトは2人の反応を気にせずそのまま続ける。


「我も共に王都へと向かおうぞ」

「いらないのだ」


 オンハルトの提案をツキミはバッサリと切り捨てる。

 ラティへと向き直ると背後から、「ククッ」といった笑い声や、「これだからヒトは面白い」といった呟きが聞こえるが、全力でスルーをしてラティとの話を進める。

 透はずっと横で胸に手を当て蹲っていた。


 暫くして透も復活しラティとのお別れを済ませ、サンロットの町をあとにする。

 結局オンハルトがずっとくっついて来て、後ろで常に不気味な「クククッ」という笑い声を続けている。

 2人はオンハルトの存在を無視しながら草原を歩き出した。



 薬草はどこでも売れるだろうと道中にあれば摘んで歩き、自分たちの食事の為に出会うモンスターを狩り肉を集める。


 いまだに後ろにくっついてきているオンハルトは、モンスターを見つけるたびに通常の詠唱節とは違う独特の厨二的詠唱を始めるが、ツキミが雷撃を無詠唱で1発放ちモンスターを仕留めていく。

 その度にオンハルトの詠唱は邪魔され不服そうにツキミを見つめ、透は「グハッ」と精神的ダメージを受けて胸元を押さえていた。


 大きな問題もなく日が暮れるまで3人は歩き続けたが、辺りにはまだ草原以外の物陰は何も見えない。

 今日は仕方なく草原の真ん中で野営を行う事になり、今日狩ったばかりのモンスターの肉を焼き食す。

 その後交代で見張りを行いつつ順番に休む事になったが、急にオンハルトがマントを翻しながら立ち上がり、仁王立ちで高らかな笑い声を上げだした。


「我に任せよ!」


 やっと現れた出番だ、と言いたげに復活の鎮魂歌(リバイバルレクイエム)を唱えると背後から巨大な骸骨が出現する。

 警戒を露わにしガンブレイドを構える透と、バチバチと雷を体に纏うツキミを、オンハルトは焦りながら必死に宥めた。


「深き闇の守護者よ我に呼応せよ。その身を削り我に忠義を捧げよ。鉄壁の要塞(ランダール)!」


 オンハルトの詠唱が終わると、地面より多数の骨が出現し3人を包み込んだ。


「あぁ、骨の要塞か。鉄壁って言いながら俺らにぶち破られたけどな」

「過去に何時までも捉えられている愚かな人の子よ……」


 オンハルトはフッと鼻で笑いながら、やれやれといった表情で頭を振る。

 外には見張りと戦闘員としての骸骨もいるので、この辺りのモンスターに守りが破られる事はあり得ないと言う。

 一応熟睡はしないよう警戒をしつつも3人は眠りについた。


 骨の隙間から差す朝日で3人は目を覚ました。

 オンハルトが魔術を解き、何事もなかった事をドヤ顔しながらしつこく迫る。

 それを雷撃を浴びせて黙らせ、昨日の残りの肉を食い王都へ向けて再び出発した。


 その日も丸1日歩き続けたが草原以外の物陰が見える事はなかった。

 更に翌朝を迎えた所で、ふと透は思いつく。


「なぁ、オンハルト。お前の召喚?ってあの骸骨以外でも出せんのか?」

「フッ、深淵からの使者である我に不可能は無い」


 クルっと回ってマントを翻す。ついでに前髪もファサっとかき上げた。


「そうか、それなら車みたいなの出してよ」

「車?とは何だ?」

「あー……うーん……。じゃあ、四つ足で速く移動できる動物かモンスターかそんな感じなやつ」


 ふむ、と少し考えてからオンハルトは詠唱を始める。

 そして3人の前に出現したのは馬みたいな見た目だったであろう骨だが、手の平サイズだった。

 オンハルトはそのまま馬骨もどきに辺りの草原を走らせて、その速さを確認し透へドヤ顔を向けた。


「あー、わりぃ、人が乗れる程でかいやつを頼む、それに乗って王都目指したら速いんじゃないかと思ってさ」

「なるほどなのだ」


 透の意図がわかっていなかったツキミはずっと首を傾げていたが、その説明に納得する。

 そしてオンハルトも「ふむ」とまた頷いて詠唱を始め、今度は同じ作りで人が乗れる程の大きさの骸骨を出現させた。


「さんきゅ、ツキミはどうする?小さい猫の状態なら一緒に乗れるだろうけど」


 少し考えて猫の姿に戻り、透と一緒に馬骨に乗ることにした。

 オンハルトは馬骨を2頭用意し片方へと跨る。

 透も同じように空いている馬骨に跨り、ツキミは馬骨の頭部分に座った。


「おい、そんなとこに乗ってたら吹っ飛ぶぞ」

「大丈夫なのだ!」


 透の方を向き自信ありげに、バン!と胸を張りそのまま前方へと向き直る。

 透は口の中で「しらねーぞ」と呟いてそのまま走り出し、オンハルトもそれに続いて走り出した。



「にゃっはあああああああああああああああああっなのだーーーーーー」


 どんどん加速していくにつれて、風と一体になる感覚にツキミは歓喜の声を上げる。

 透も風になる感覚が楽しくなり、更に加速をするしていく。


「いってッ!何だ!?」


 突然透は顔面に強い衝撃を受け、後ろに振り落とされそうになった。

 顔を擦りながら拳銃モードのルドニールを具現化して警戒し、馬骨の速度を緩め状況を把握しようと辺りを見渡す。


 すると周囲にモンスターの姿は無く、オンハルトも何事も無かったかのように首を傾げている。

 ただ1つ変わった事があるのなら、目の前にいたはずのツキミがいなくなっている事だけだ。


 どうやら速度に耐えられなくなったツキミが吹き飛ばされ、透の顔面に当たったが透が仰け反った事でそのまま後方に飛ばされていったようだ。


「だから言わんこっちゃねえ……」


 溜息を吐きながら来た道を引き返し、ツキミを捜索する。

 少し戻った所に、土まみれになって蹲っているツキミがいた。


「痛いのだ……にゃーんなのだ……」

「おら、自分に回復でもかけとけ」


 しょぼんと耳を垂らした状態で回復魔術をかけ、とぼとぼと透の方へ寄ってくる。

 そんなツキミを今度は置き飛ばされないように、透の股の間に座らせ再び馬骨を走り出させる。


 ツキミはモフモフ状態であまりわからないが、若干頬を赤らめたような気がした。


「いやーんなのだ、透ってば大胆なのだぁ///」

「うるせえ、置いてくぞ」


 懲りないツキミの首根っこを引っ掴んで草原に放り出そうとした所で、慌てて謝罪をし元の場所に戻ってくる。

 今度は若干ソワソワとしてはいるが大人しく座っているのを確認して、3人は再び王都に向かって加速していった。


 その後は森を超え、山を越え、大きな問題が起きる事もなく数日間走ると、広い街道に出て王都が見えてきた。

 町の中央には白亜のとても大きい城がそびえ立ち、それを囲むようにして大小様々な建物が多く立ち並んでいる。

 初めての大都市の大きさや綺麗さに心奪われ、思わずため息をつく透とツキミ。


 3人は馬骨を下りゆっくりと王都の正門へと向かって歩き出した。

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