養成所編◆卒業模擬戦
2021/1/26 改稿
※一部流れに多少の変更がありますが、概ね変わらずです。
「明日はどんな人と試合するんかな」
「わくわくどきどきなのだ」
ゆっくりと休むとはいえ、翌日の事が気になって2人はソワソワと室内を歩き回っている。
このまま宿にいても手持ち無沙汰になっているだけなので、ギルドへと向かい依頼を受ける事にした。
翌日の事を考え難易度が低い薬草集めや、ラパンの肉収集等のお馴染みの依頼を少しだけ行い、夕飯をしっかりと食べて鍛錬をやって、早めに眠りについた。
試験当日。
ギルドに訪れるとラティの傍らにとてつもなく痛々しい人間が立っていた。
銀髪に赤色のメッシュが所々入り、そして右側が刈り上げられ、左側は肩に付く程の長さまで伸ばされている。
はっきりと認識できる右側の瞳は赤く燃え上がった炎のような輝きを放ち、前髪の奥からチラチラと見える左側の瞳はまるで深淵のような漆黒が渦巻いている。
白黒を基調とした衣類やマントが所々破れてヒラヒラと靡いており、左腕に巻かれた包帯も一緒にヒラヒラとしている。
そして最も目を引くのが、その肩に担がれた人間よりも大きな棺だ。
ツキミは初めてみる人種にドン引きしており、透は若干引きつつもこの世界も厨二というかイタイ人はいるのか……と感心した眼差しを送っていた。
「2人とも待っていたよ、移動しようか」
校庭に移動しツキミと透はとてつもなく厨二オーラを放つヤツと対峙した。
右目を隠し「フフフフフ……」とさっきからずっと笑っているのを見て、ツキミは現在もドン引きを続けて後ずさっている。
透は胸のあたりを握りしめ「グッ……」と呟きながら、既に精神的にダメージを受けているようだ。
(少しカッコいいとか思ってしまう自分が悔しい……)
「何か透にだけ効く技を放ってるのだ?」
「いっ、いやっ……なんでもない」
透は自分の中に眠る厨二病がひょっこりと目覚めかけているのを感じ震えていた。
ラティが試合開始の音頭を取る。
「それではお互い、最善を尽くすように」
「「「はい」」」
離れた場所で互いにぺこっと礼をすると、すぐに透はガンブレイドを具現化し構え、ツキミは猫モードのまま身体の周りにバチバチを雷を纏う。
ヤツは無駄に大きい棺を隣へドスンと置くと、2人に向かって声高々に語り掛けた。
「我が名は、ユーリウス・イグナルト・D・オンハルト!宴の時間だ!聴け!踊れ!復活の鎮魂歌を!」
そして大きな笑い声と共にオンハルトの背後に、高さ10mはありそうな骸骨の上半身が地面から生えた。
(いや、復活させんのか鎮めんのかどっちだよ)
透は心の中でツッコミをいれつつも、とりあえず後方へ飛び間合いを取り、骸骨とオンハルトの両方へ魔力弾を撃ち込んだ。
ツキミはそんな透とは対照的に、骸骨へ登ろうと素早く距離を詰める。
透の骸骨へと放った魔力弾は骸骨の僅かな回避動作によって肋骨の間を通り抜け、オンハルトへと放った物は骸骨がその両手で盾を作り防いだ。
ツキミは骸骨が盾にするために両手を地面へ突き刺した衝撃をステップでかわしながら、その手に飛び乗り骸骨の頭上を目指し走り出す。
「鉄壁の要塞」
オンハルトはそのまま骸骨の後方へと避難し、戦闘の全てを骸骨へと任せて、自分は地中から数多の骨を出現させドーム状に覆い、骨で作られた要塞の中へと閉じこもった。
骸骨はツキミを鬱陶しそうに振り払おうとするが、空中に結界を一瞬張って足場を作り、空中回避をしてそのまま肘部分まで登りつめた。
骸骨はツキミを追い払えないとわかると、とりあえず放置をし透の殲滅に移行した。
地中より透の立っている場所周辺に、先端が鋭く尖った骨がいくつも突き出して、串刺しにしようとする。
透は必死に後方へとジャンプをし回避に徹するが、地中からの攻撃は止む雰囲気も無く透を追いかける。
大きく飛び上がりツキミと同様に空中に結界で足場を作り地面から退避すると、骸骨の投げた骨のブーメランに被弾し後方へと吹き飛ばされた。
「ガハッ」
空気を強制的に吐き出され、アバラからビシッと嫌な音が鳴った。
「透!!!!!」
その様子を見ながら骸骨の肩付近まで登っていたツキミは悲痛な声を上げ気を取られてしまうと、いつの間にか透を吹き飛ばし戻ってきたブーメランが、大きく周囲を迂回して背後からツキミをも襲った。
ギリギリでなんとかブーメランを躱したが、骸骨の手によりむんずっと掴まれたツキミは透のいる場所までぶん投げられた。
「グゥッ」
地面に叩きつけられ、ツキミの体がバウンドする。
透に受け止められると、長い詠唱により初級の回復魔術をかけられた。
呼吸を整えたツキミが透と自分に回復魔術を更にかけようとしたが、再度襲ってきた骨ブーメランを2人は左右に飛びなんとか回避する。
「ツキミ!でかくなって俺を乗せ走る事はできるか!?」
仕方なく数の少ない回復薬を飲みながら投げられた透の問いに、ツキミは行動で返答をする。
ツキミの体が桜色の魔力で光ったかと思うと、次の瞬間には透の倍程の大きさになっていた。
透はツキミの上に飛び乗るとガンブレイドを構える。
「あの骨の塊を叩き割ってやる!ツキミは奴の攻撃を避け、俺の剣が当たる範囲まで近付いてくれ」
「あいなのだ!」
勢いよくツキミは骸骨に向けて走り出し、透は照準の定まらないままとにかく魔力弾を放ち骸骨を壊そうと尽力する。
骸骨は猛烈な勢いで迫りくる2人を仕留めるべく、地中から串刺しにしようと骨を出現させるが、ツキミの軽やかなステップにより全て回避された。
先ほど2人を窮地に追いやった骨ブーメランも軽々と回避して距離を詰めていく。
空中に僅かな結界を張りその上を駆け、いよいよ骸骨が目の前にまで迫ってきた。
剣身に炎を纏わせると、雄叫びを上げながらガンブレイドを振り下ろす。
ガンッ
鈍い音が響き、ガンブレイドを受け止めた骸骨の右腕が割れ地面へと落下した。
骸骨がギリギリと歯軋りを発しながら残った左腕で攻撃を試みるが、冷静さを失った攻撃は2人には届かない。
その腕も叩き折られ地面へと落ちていった。
腕がなくなった骸骨は、肋骨を移動させミサイルのように発射する。
それもツキミの全力の身体強化による回避で、掠る事すら叶わなかった。
肋骨が無くなった骸骨の背骨を目指して突き進み、ガンブレイドを横薙ぎに振るい切断を試みるが、腕よりも強度があり叩き割る事はできなかった。
骸骨はどこかの骨で2人を叩き落そうと暴れまくり、それを躱すように1度距離を取ったツキミにだけ聞こえるように透が囁いた。
ツキミは力強い頷きと共に、結界で足場を作り骸骨に向けて駆けて行く。
再び近づいてくる2人に今度は口を開け二人をすり潰そうと襲いかかるが、軽々と避けそのまま骸骨の頭上高くへと昇っていった。
届かない距離に行ってしまった2人に、再び肋骨ミサイルを発射するが最小限の動きで避け位置調整をした。
骸骨のガチガチと歯を打ち付け、ギリギリと歯軋りをする音が大きく響く。
そしてツキミは足場にしていた結界を消し、骸骨に向かって一直線に落ちて行く。
再び骸骨は口を開くが、空中で加速した2人は頭の後ろに消え、椎骨の棘発起の間からいつの間にか具現化されていた分厚く長い板の上の先端に衝撃を殺さないまま着地した。
てこの原理が働き椎骨が衝撃により外れ、轟音と共に胸から上が外れて落ち、機能停止したように骸骨は全てが崩れ落ちた。
土埃が大きく舞う中、ツキミはオンハルトを守っている骨の要塞へと向かい駆け出した。
同じように骨の要塞の真上にきたタイミングで、今度は透だけが飛び降りガンブレイドに速度と体重と重力をかけて突きを放つ。
骨の要塞の頂点に突き刺さったガンブレイドを消滅させる事で、透の手1本くらいが通れる穴を骨の結界へ開ける。
そこに雷撃を纏って普段よりも小さくなったツキミが飛び込み、オンハルトへありったけの雷撃をぶち込んだ。
「アババババババババババババババ」
黒焦げになりプスプスと煙を上げ倒れるオンハルト。
オンハルトの意識がなくなったと同時に、骨の要塞と瓦礫と化した骸骨が消え去った。
「勝者、長瀬君&ツキミ君ペア!」
その言葉を聞いて安堵と嬉しさはもちろんの事、どっと襲い来た疲れにより透とツキミはその場で意識を手放した。
暫くして意識を取り戻したが、今日は疲れているだろうというラティの計らいでそのまま休む事となり、明日色々と手続きを行う事になった。
なんとか宿に戻った2人は、速攻でベッドへ入り瞬く間に深い眠りへと落ちて行った。
やっと長かった養成所編がこれにて終了となります('◇')ゞ
お付き合いありがとうございました!
そろそろ町を出たい所ですね
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