ゴールドラッシュ・イン・ザ・ビヨンド 5
「それで、この後どうするの?」
リトゥアが俺に聞いてくる。
「とりあえず町まで行こう。そんで、向こうに着く頃には夜になってるだろうし、まずは酒場によってメシでも食いながら情報収集だな。その後はチンピラでもとっ捕まえて路銀を作る」
せっかくセブリア準州に来たというのに血金石掘りでは無く賞金稼ぎとは夢に欠けるが、スチームバイの出費に加えてリトゥアの給料も払わなければいけないとなれば、そこそこ確実で稼ぎの多い金策の確保は急務だった。それに、山で鉱夫をやるよりも自由にバウンティハンターをしてる方が性に合うのも事実である。
「ま、そういうわけだからリトゥアはスチームバイ――あのでっかい機械の後に乗ってくれ。途中で近道とかあったら教えてくれると助かる」
「了解」
そう言ってリトゥアはスチームバイに跨る。俺もリトゥアに予備のゴーグルを投げてからハンドルを握りしめるた。
「よし、出発だな! 俺の腰辺りにしっかり捕まって、曲がる時はマシンが倒れる方向に逆らうなよ!」
そうして、二人を乗せたスチームバイは、また大地を駆けていった。
しかし、こうして走ってみると思うのが、スチームバイの二人乗り、というのはなかなか心地いいということだ。一人では頭の中で思うだけだった景色や気候への感想を、誰かに話せるというのは、一人では中々味わえない楽しみだ。
リトゥアは大きな反応を返してくるタイプでは無いが、かと言って無視してくることもなく、時には原住民の文化やビヨンドの知識なんかも教えてくれる。それに、直接風を受けるスチームバイはジャケットを着込んでいても肌寒く感じる物だが、後ろにリトゥアがぴったりくっ付いているので物理的にも精神的にも温かく感じる。と言うか……、
「リトゥア、くっつきすぎじゃね?」
「そんなことない。別に怖がってなんかいないわ」
……怖がってるなんて一言も言って無いんだが。リトゥアも自分の失言に気が付いたのか俯いて黙ってしまう。
しかし、生死に頓着しないリトゥアも知らない乗り物のスピードは怖いらしい。きっと、一つ殻を剥けばリトゥアも普通の女の子なんだろう。
俺はスチームバイのスピードを少しだけ落としながら、そんな事を思うのだった。