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少年の戦 4

 ハクロヌの死に呼応するように、祭壇の最奥を塞ぐ結界は消え失せた。

「っ……!」

 俺はすかさず、弾かれるように奥へと駆け出す。全身は痛み、疲労はもはや感じる余裕すらないが、それでも、一刻も早くリトゥアに会いたいという思いだけで走り抜ける。

 文様の上を駆け、細い岩の門を潜って……、そうして辿り着いた祭壇の最奥には……、

「リトゥア……!」

 一人の少女が――リトゥアが佇んでいた。その背後には羽のような紋が浮かび、体には光の鎖が幾重にも絡みついている。

「ビリー……?」

 リトゥアが、その虚ろな目を微かに開けて呟く。

「ああ、俺だ! 待ってろ、今ほどいてやる!」

 俺はリトゥアへ駆け寄り、ハクロヌの剣でその鎖を断ち切っていく。それはさながら、彼女を苦しめていた呪いが消え失せていくようだ。

「なんで……、ここに……?」

 リトゥアが細い声で呟く。

「お前に会いに来たんだ。まだ、お前と一緒にいたかった」

「私と……?」

「ああ、そうだ。俺はきっと、何度もお前に救われてきた。どうしようもないガキの俺は、お前と会えて強く――いや、兵器から人になれた。だから、お前を兵器になんてしたくなかった。まだ、俺の隣にいて欲しかった。だから、会いに来た」

 我ながら、何とも恥ずかしいセリフの数々だ。血塗れになりながら会いに来て、真っ先に言うセリフにしては情けなさすぎる。

 でも、きっとこれでいいんだ。情けない子供の俺と、心を失いかけていたリトゥア。二人の兵器は、きっと二人で人になるんだ。

 だから、俺は本心をさらけ出す。すると、リトゥアもぽつりと語り出した。

「……長老様の元に戻されたとき、私はまた心を捨てるのだと思った」

 その声は、悲愴と郷愁と希望をごちゃ混ぜに孕んでいるように俺は感じる。これまでリトゥアが内に秘めてきた思いの全てがそこにあるようだ。

「この心に感じる不思議な思いも、もう消え失せるのだと思ってた。私はこれから、また心の無い兵器となるのだと思った。けど、それでもあなたのことだけは、不思議な思いと一緒に、ずっと頭の中から消えなかった。……そして今、あなたに会って、今まで感じてきた思いがわかったわ。……私は、あなたと生きていたいと思っていた! 神様でも、長老様でもない、私の心は、ビリーと一緒に生きたかった!」

 そう語るリトゥアの顔は、これまで見たことがないほどの感情を湛えていた。強く叫ぶリトゥアの頬は紅潮し、目には大粒の涙が浮かんでいた。その様は、優しさ、願い、あるいはエゴ。そう言った人の激情を俺に叩きつけているようだ。

 そうして鎖が解けた時……、

「ねえ、ビリー。私はあなたと一緒にいたいよ!」

 リトゥアは、大粒の涙を流しながら俺の肩へと抱きついてくる。

 ……リトゥアに話そうと思っていたことは山ほどあった。謝りたいことは星の数ほどあった。

けど、今はこの言葉だけでいいだろう。

「ああ、リトゥア。一緒に帰ろう」

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