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義の答え 2

「――――――ッ!」

 混濁していた意識がやっと焦点を結ぶ。そうだ。そのままリトゥアはアイツに連れ去られた!

あれから絶望の中で激痛により俺は気を失った。そして目覚めたとき、そこには冷たい目をしたジェームズが立っていた。

 次第に鮮明さを取り戻していく思考の中で、真っ先に思い続けることは、

「何でこうなった?!」

 という変わらないもの。俺は一体、どこで道を踏み外した?! この町の平穏を崩すバートンはいなくなったはずだ!

 なのに! だってのに……!

「リトゥア……っ!」

だ俺が何に変えてでも守ろうとしたものは、もうそこに無い。

 そこまで叫んだ時、俺は胸元に強く引っ張る力を感じた。そのまま、俺の体は強引に向きを戻される。

そしてそこにいたのは、

「ジェームズ……」

 胸ぐらを掴み、俺を睨むジェームズの姿だった。

「どうしてこうなった、だと? そりゃ、わからねぇだろ。お前はわかろうともしなかったんだからな」

 そう語るジェームズの瞳には、確かな失望がこもっている。

「いいぜ。お前にもわかるように一から説明してやるよ。この惨劇の全てをな」



「元々、セブリア準州、中でもネスメア周辺はビヨンディアンの中でも本土人に対して過激な考え方をする連中の拠点になってた。ヤツらが合衆国を潰すために用意した大魔術を発動するのに必要な大きな霊地があるからだ。だから、セブリアの統治を任されたバートンは霊地周りから徹底的にビヨンディアンを追い出したし、それはビヨンディアンに寛容なジャクソンだって黙認してた。そうしなきゃネスメアは守れないからな。つまり、合衆国を潰したいビヨンディアン。勢力拡大のためにネスメアを確保したいバートン。自分の自由な商売と、人倫のためにネスメアを保護するジャクソン。この三つ巴の関係でネスメアの平穏は保たれていたんだ」

 そこで一旦、話を区切るジェームズ。既に、ジェームズの手は俺の胸元を離れているが、その口調に含まれる、俺を糾弾するような雰囲気は増すばかりだ。

「けど、バートンがジャクソンを殺したことでこの三つ巴は崩れ去った。それで、お前も知ってる通りネスメアの治安は大きく悪化する。けれど、町や国を巻き込む戦争の始まりにはならなかった! 何故だ?! 辛うじて、ビヨンディアンとバートンの対立って構造が残ってたからだ! そんな中でバートンだけが急にいなくなったらどうなるか?! 答えはお前が見てきただろ!」

「俺がバートンを殺したから、こうなったって言いたいのか……?」

「ああそうだよ! 確かにバートンの圧政は目に余る。けど、こんな急で過激な方法は取るべきじゃなかった! 感情に任せてヤツを殺さないで、正規の方法で引きずり降ろしてりゃ、一瞬でも統治官がいなくなるなんて事はなかった! 統治官がいなくなったネスメアで、ビヨンディアンたちが戦争をおっ始めるなんて事はなかった! ……もうすぐネスメアは戦場になる。ここは戦争の拠点にするには丁度いいからな。当然、多くの人が死ぬだろうさ!教会だってまた襲われる! でもな、この惨状を招いたのはガキ見てぇに感情で突っ走ったお前のだ! 戦場になったネスメアで、お前が多くの人を殺すんだ!」

「じゃあ、あの時どうすれば……ッ! ああでもしなきゃ、リトゥアやファナさんがやられてたッ!」

「でも、それで教会は襲われて、リトゥアさんは連れ去られて、ネスメアは戦場だ! 確かに、ネスメア統治の実態は俺たちには隠されてたさ! だから俺はお前を止めたんだ!何が起きるかわかんねぇからな! それを無視して今さらどうすればだと?! わかんねぇのに突っ走ってんじゃねぇ! ガキじゃねぇんだぞッ!」

 その言葉は、強く俺の脳を揺らしたような気がする。

 ああ、そうか。そうやって、俺は間違ったのか。限られた情報で、たった一人の独善で、守りたいものすら守れなかった。

 一人で全てわかった気になっていた。何度も戻れるチャンスはあったはずなのに。ハッ、まさにガキじゃないか。

「最後に一つ言ってやる。リトゥアさんは、ヤツらの大魔術を操るための魔術師として育てられた。だから、霊地が戻った今、あの人はもう一度、兵器として使われるために連れ戻された。他でもないお前のせいでなッ!」

 脳内で全てが繋がった。リトゥアが捨て駒紛いの殺人兵器をさせられていた理由。それは、霊地を盗られたヤツらにとって、大魔術の核になれないリトゥアはそれだけで用済みだったのだ。高い戦闘力から前線には送るが、それは真っ当な戦いではなく犯罪行為による遊撃戦。いつ切り捨ててもいいような捨て駒だ。

 そんなリトゥアを俺は、人に戻したかった。他ならぬ俺が、兵器として生きる道を捨て去ったからだ。その虚しさを知っていたからだ。

だから、リトゥアと共に生きることを選んだ。

そして、俺がリトゥアを兵器に戻した。兵器を否定した俺が、守りたかった者を兵器に変えた。

 脳裏をよぎるのは、虚ろな目の中に絶望を湛えたリトゥア。

 ぐらり、と何かが歪んでいくのを感じる。それは決意、あるいは矜持と呼ばれるものによく似た何か。俺がビヨンドに逃げ、そしてそこで生き、戦っていく導となっていたものだ。

 気づけば、膝から倒れ込んでいる。

「俺は、何を……ッ!」

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