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義の在り方 2

 その後、アイツの葬儀は静かに執り行われた。

形式も略式で、取り仕切るのは神父ではなくシスター。参列者も俺とリトゥアと子供たちだけの簡素な式だが、それでも俺たちにできる最大限の弔いだ。

 そしてその夜。

「……行くか」

 俺は全身の装備を確かめると、消えるように夜の世界へ歩き出した。当然、目的はバートンの抹殺。

 弔い合戦、などと都合のいいことを言うつもりは無い。ただ、リトゥアやファナさんたちを守るなら。これ以上、アイツと同じ不幸な子供を増やしたくないなら。俺がバートンを殺すしかない。

 俺は脳内でそんな覚悟と憎悪を反芻しながら、目を夜闇に慣れさせるべく、あえて明かりの無い道を歩く。バートンの屋敷まではそれなりの距離があるが、夜襲という事を考えれば音の出るスチームバイは不適なので、俺は徒歩で移動していた。

 長い移動時間はそれだけ俺に思考の時間を与え、その分だけ憎悪は熱を持って増していく。しかし、それと反比例するように思考は氷のように冷たくなっていくのを感じた。

 そうして、湧き上がる感情が頂点に達した時、

「来たぜ、バートン」

 俺はバートンの屋敷に辿り着く。そこは辺りを森と崖に囲まれ、屋敷の周辺だけが不自然に拓かれた土地だった。

 そして、そこには既に、多くの保安官や火砲が配置されている。

 ビヨンディアンに人殺しをさせておいて、自分は要塞に篭もりっきり。いや、この重装備は自分の身を守る為だけでは無く、逃げ出そうとしたヤツを殺すための物でもあるんだ。つくづく反吐が出る……ッ!

 俺は、屋敷を見下ろす崖の上に静かに立つと、闇に紛れるために纏った黒色のローブの下から義手を目の前に翳す。一対多の戦いは、奇襲と一方的な攻撃が基本。ならば、遠距離からのサンダラーによる砲撃は、それにうってつけだ。

雷公サンダラー……ッ!」

 静かな叫びと共に、義手に接続された銃身型デバイスが起動し、そこからは激しく加速された砲弾が飛び出した。

「ヒット」

 まずは一発。それはヤツの屋敷に当たり、激しい音を立ててそれ(・・)を穿つ。突然起こった破壊に、警備の保安官は慌てふためき、大穴の開いた屋敷からは血金石照明の明かりが消えていく。

 混乱と闇。その二つは、単独かつ軍属時代に夜間戦を仕込まれた俺を優位にするだろう。

 だが、相変わらずバートンの姿は見えず、どこに彼がいるのかは分からずじまい。とは言え、俺だってそうそうバートンに遭遇できるとは思っていない。一先ず、ここまでは想定通りだ。俺は、素早く肩から提げていたライフルを抜くと、ヤツらの注意が崖へ向く前に森へ消える。

 そして森を走り抜けると、今度はヤツの屋敷の目の前に潜伏。木を一枚隔てた向こうには、辺りを見回し続ける保安官がいるが、目が屋敷から漏れる光に慣れているのか、この距離でも見つからない。

 そのまま、相手の戦力を確認する。

 まず、保安官が10人ほど。全員がライフルとリボルバーにより武装していて、屋敷を囲うように立っている。

 そしてさらに厄介なのが、これまた屋敷を囲うように置かれた血金式機関砲スチームガトリング。血金石のエネルギーを利用して砲身を回転させることで、高い連射力を手に入れた火砲なのだが、バートンの屋敷には、まだ高価なはずのそれが表と裏に一門ずつ設置してあった。

 本当はサンダラーで壊してしまえば楽なのだが、この距離でサンダラーのチャージを行えば流石に連中も気付くだろう。僅かとは言え、血金駆動機関は外に音と光を漏らすのだ。

 その時、保安官は何やら集まると、その視線を森の方へ向けた。そして次の瞬間、ヤツらは森へ向けてスチームガトリングによる掃射を始めた! なかなか見つからない襲撃者を炙り出しにかかったのだろう。

 左端から穴だらけになり薙ぎ払われていく木々。だが、この状況は俺にとっても好機!

 ゆっくりと弧を描くスチームガトリングの砲台から逃げるように屋敷の前に躍り出ると、そのまま砲手に走り寄ってライフルを一発。これで砲手を失ったスチームガトリングはただの置物だ。

 その射撃は、夜間かつ、左手にサンダラーを展開したまま片手でライフルを持っているという状況の為、かなり近付いての発砲となったが、それでも掃射の油断と光に慣らした目により、保安官は対応が一手遅れる。

 その一手を俺は見逃さない。ヤツらが俺に狙いを定める前に、銃を回すようにして強引にライフルをリロード。そして、そのままの勢いで一人の眉間を撃ち抜く。これで二人目。

 そして……、

「穿てッ!」

 戦闘の最中にチャージを終えたサンダラーを発射。これにより、多くの保安官が同時に吹き飛んだ。

「ヒィッ……!」

「何なんだコイツはッ!?」

 辺りに保安官たちの悲鳴が響き渡る。この時点で、生き残った保安官は恐怖により正常な戦闘行動が取れなくなっていた。そして、そうなった集団は酷く脆い。

 震える手で撃たれた当たらぬ銃を躱し、脳天に一発。やけっぱちのサーベルによる切り込みは、義手で受けて蹴りとライフルで止め。

 そうして一人ずつ保安官を蹴散らしていき、気がつけば、あれだけ屋敷を固めていた保安官は一人もいなくなっていた。

 その時、屋敷の裏からひっそりと出ていく人影が見える。広い恰幅。悪趣味なスーツ。下卑た雰囲気。間違いない。酒場で見たあの男……、

「バートンッ!」

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