ネスメア動乱 1
夕食が残念な終わり方をした後、俺たちは例の借家に向かっていた。とは言っても、最後の手続きはファナさんが代わってくれているで、何か特別なことをする訳では無い。途中で、今朝にファナさんの所で預けておいたスチームバイと荷物を回収する以外は本当にただ向かうだけだ。
そんなわけで、大きなトラブルもなくスチームバイを走らせているのだが、ここでも気になるのは保安官の多さ。それは、こうして道を走っているだけでもわかる程だ。後ろのリトゥアもこの状況を警戒しているようで、いつの間にかローブで肌を隠していた。
あまり気分のいい話ではないが、状況を把握できていない以上、ビヨンディアンに差別的な人間も多いセブリア保安官の前で、肌を隠すというリトゥアの判断は正しいものだ。これまたもどかしいことだが、今回は以前のように「肌を見せても俺が守ってやる」と言い放つことはできない。保安官を敵に回すなら、それなりの準備が必要なのだ。なんというか、悔しいな……。
そんな憂鬱な夜道をしばらく進んでいると、町の外れに一つのログハウスが見えてきた。これが、今回俺たちが借りた借家だ。
俺たちは、スチームバイをログハウスのそばに停め、軽く辺りを見回す。
うん、家の大きさは二人で住むには十分だし、確かに町の中心部との距離はあるが、値段の安さを考えれば釣りが来るレベルだ。これはいい買い物をした気がすると、心の中で笑みが漏れる。まあ、何はともあれ、とりあえず二週間、寝床には不便しなさそうだ。
その後、間取りの把握やら荷解きやらを済ませた俺たちは、それぞれが思い思いの時間を過ごしていた。
とは言っても、リトゥアは連日の疲れが出たらしく眠そうにしていたので、既にベッドで休んでいる。普段なら、「もう少し休んでもいい」と勧めても素直に聞かないリトゥアだが、今回はあっさりと聞き入れたあたり想像以上に参っているのかもしれない。明日からはそこにも気を使おう。
さて、そんなわけで現在は久しぶりの一人の時間だ。とりあえず、明かりが勿体無いのでこの時間を利用して今の状況を整理しておこうと思う。
まず、何度も感じてきたことではあるが、保安官が町に出だした。この町はジャクソンだとか言う資本家の影響で保安官が手を出しにくく、故にセブリアの中でも荒廃していない町のはずだった。
が、そこに保安官が入ってきたということは、大規模な抗争でも始まるのだろうか。
そして、それに対する俺の状況。竜狩りのお陰で金は持っている。一方の戦力だが、サンダラーの弾は回転弾倉の中のものと予備を合わせて4発だけ。これは義手と違って一般的な血金石式の砲弾と同型のものなので、どこかで調達出来るなら補充しておきたい。
後は拳銃と、あまりアテにし過ぎるのは避けたいがリトゥアの魔術。それが俺たちの戦力だ。
最悪の場合、自分たちの身を守るくらいは出来るだろうか。こうなってくると、物騒なそれも、それなりに有り得そうな未来なので、心の準備をしておくに越したことはない。
そこまで考えたとき、ちょうど明かりの血金ランプが燃え尽きる。
うん、考えの方も大体整理は付いたし、いい頃合なので俺もさっさと休んでおこう。……なにせ、何が起こるのか分からないんだからな。




