ゴールドラッシュ・イン・ザ・ビヨンド 1
門を抜けると、そこは立派な煉瓦造りの役所だった。役所とは言っても硬い雰囲気はなく、辺りは活気と喧騒に塗れ、自由と富を求める者たちの底知れないエネルギーが立ち込めている。
かく言う俺も、その二つを求めてここへ来た者の一人。きっと他人から見たら、彼らと同じような熱を纏っていることだろう。
「えーと、手続きはこれで終わり?」
逸る気持ちを抑え、とりあえず用意してきた書類をカウンターに渡す。
「最後に、こちらの書類にサインをお願いします。これに名前を書くことで、あなたには就労や居住などの権利が与えられると共に、合衆国憲法と異界特別法に従う義務が発生します」
「オーケー」
長い注意書きを斜め読みしながら書類にサイン。ファミリーネームに少し迷ったが、適当でいいだろう。
「書いたよ。これで大丈夫?」
「……ウィリアム様、19歳ですね。確かに確認しました」
受付の女は書類を手元に置くと、笑顔を上げて俺を見る。
「セルクニカ合衆国暫定統治領ビヨンドへようこそ!良き門出を!」
そして、ようやく俺の手元に滞在許可証が渡された。
ああ、やっとだ。やっと俺はカウンターを隔てた向こう――ビヨンドに立てるんだ!
ジャケット、ホルスター、テンガロンハット。何となく雰囲気で揃えてみた装備一式も、こうしてビヨンドに来れば不思議と様になってる気がしてくる。
一歩、未知なる地へと足を踏み出す。湧き上がる感情は一つの覚悟。
今はまさに異界の大血金石時代。だったら俺はこの地で掴んでみせる。誰にも侵されない自由と富を!俺が失ってきたものを!