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竜種狩り 4

 そんなわけで、俺たちは今商人の元まで来ていた。なんでも、この辺で竜の素材を扱える商人となると、こいつともう一人しかいないらしい。

「んで、幾らくらいになりそう?」

「そうだな……今ある分で9万ダーラ、残りを持ってきたら2万ダーラでどうだ?」

 ……どうだ? と言われてもよく分からんな。

「リトゥア、これで大丈夫なのか?」

「相場より安すぎる。もっと高く売れるはず」

「だ、そうだ。もっと払えってさ」

 俺はリトゥアに向けていた顔を商人に戻して答える。やっぱり、商人が最初から相場価格で取引をするなんて事は無かったか。

「バカ言うな兄ちゃん。俺よりも、そんなガキ女の言葉を信じるってのか?」

 とは言え、この発言は見過ごせない。

「へえ、女の言葉が嫌なら男らしく拳銃これで話付けてもいいんだぜ?」

 腰のホルスターを軽く叩く。すると商人は、顔を顰めながら軽く両手を挙げた。

「チッ、何も知らなさそうだったからちょっと試してみただけだ。女云々は悪かった。12万ダーラと4万ダーラ、これでどうだ?」

「今度は大丈夫よ、ビリー」

「そんじゃ、それで頼むわ。残りは明日持ってくるよ」

「へいへい、毎度」

 すぐに非を認めて金の入った袋を渡してくる商人。金になる商品をライバルに持ち込まれては困ると考えたのだろう。この変わり身の早さは流石と言うべきか。

 ただ、こっちとしても正当に取引してもらえるなら文句はない。俺たちは、受け取った金を抱えて、早々に館を後にする。


 素材の売却を済ませた後、俺たちはファナさんの教会へと赴いていた。仕事の報告と頼んでいた調査の結果を聞くためである。

「……ま、そんなわけで、カナサの死体は持ち帰れなかった。けど、ヤツが死んだのは確かだから、手配書は下げられないかもしれないけど、安心してもいいはずだぜ」

 俺は笑顔でそう話す。すると、ファナさんは何故だか少し表情を曇らせた。

「うーん、私たちはそれでいいかもしれませんが、ビリーさんは気の毒でしたね……。死体が無ければ換金できませんし……」

「いや、俺もそう思ってたんだが、竜の素材がかなりいい値段で売れたんだ。だから、実は儲けはかなり出てる。後で喜捨をして帰るよ」

「いえ、お構いなく。それは、あなた達が命懸けで稼いだお金ですから」

 相変わらず、人のいい事を言うファナさん。そんなファナさんだからこそ、礼代わりに喜捨でもしていこうと思ったのだが、きっとこの話を続けても断り続けられるだけだろう。うん、金は後でこっそり置いていこう。

 俺は、話題を変える意味も含めて調査の結果を尋ねる。

「そういや、ファナさん。頼んでた宿の件はどうなった?」

「それが、宿屋で泊めてもらえそうな所は残念ながら……。リトゥアちゃんの事もありますが、酒場での騒動が広まっているらしくて、面倒を起こされても困るとか……」

「流石にあれは暴れ過ぎたか……」

 でも、あの場で戦ったことに悔いはない。だって、あそこでリトゥアの為に立ち上がれなかったら、俺がビヨンドに来たことも、リトゥアと暮らし始めたことも、全てが無駄になってしまう。

 それが故の野宿生活なら、それもまた人生の一興だろう。だが、そんな俺にファナさんは予想外のことを告げてきた。

「けれど、安心してください! 借家なら一つ安くて短期間から借りられる所を見つけましたよ! 向こうも宿屋みたいな使い方も想定しているみたいで、最短で三日から借りられるそうです。現物を見てきましたが、建物も問題は無さそうですし、中心部から離れている分値段が安いそうですが、スチームバイを持っているビリーさんなら問題無いと思います」

 ファナさんは嬉しそうにそう言うと、一枚の書類を見せてきた。まあ、この手の物は書面で確認できることはあまり無いのだが、少なくとも正式な借用書の様ではある。物件に関しては、確かに値段も安いし、大きく生活に困るほど不便な立地という訳でもない。

「うん、良い物件だと思う。血腥ちなまぐさい生活をしてるのは事実だし、そこに気を使わなくていい分、宿より気楽かもな。他にアテも無いし、借りさせて貰うよ。この書類を書けばいいのか?」

「はい。そしたら、後は担当の者に私が届けておきます。ただ、書類を受け付けてくれるのが明日の朝からなので、今夜は教会にお泊まりください」

「いや、さっきも言ったけどそれは……」

 と、ここまで言って、ふとリトゥアのことが頭をよぎる。そう言えば今朝はリトゥアの意見を聞かずに何となく返事をしてしまったため、ここは一度話を聞いておくべきだろうと思ったのだ。

「リトゥア、ファナさんがこう言ってくれてるけど、お前はどうしたい?」

 俺は後ろにいたリトゥアに向き直る。すると、リトゥアは俯きながら小さな声でこう答えた。

「どっちでもいい。無理して教会に泊まる必要は無いと思うわ」

「だ、そうだ。悪いな、ファナさん。俺たちは根無し草なくらいが気楽らしい」

「そういう事なら構いませんよ。暖かくなってはきましたが、外には様々な危険もありますので、そこにだけはどうかお気をつけ下さい」

 こうして、俺たちは今夜の方針を決め、教会を後にするのであった。

 ……リトゥアはこの短時間で確実に変わってきている。それは、自分の生死すら頓着しなかったはずなのに必死でドラゴンと戦ったり、自分の意思で今夜の方針を選択したところから明らかだ。それは、まだ無意識での行動なのかもしれないが、それでも出会った時から比べれば大きな変化だろう。

 だったら、対する俺は何か変われたのだろうか?ジョーからリトゥアを守りきれなかったり、ドラゴン戦でリトゥアの手を借りなければ生き残れなかったような俺が、アイツと共に生きるのに相応しい存在になれているのだろか?

 俺は、そう思わずにはいられなかった。


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