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竜種狩り 1

竜種ドラーコの召喚。こっちがカナサの魔術はこっちが本体……。今までの魔術は炎と毒を操っていたのでは無くて、竜の力の一部を借りてただけだった……」

 リトゥアの表情は相変わらずあまり変化しないが、少しの時間を彼女と過ごした俺には、微かな変化の中に存在する戦慄が読み取れた。

「……やっぱドラゴンって強いの?」

 恐る恐る、俺は聞く。

「竜種は一体で私たちの集落を滅ぼすこともあるほど強い生き物。だから、召喚するのに高位の魔術師の命を犠牲にしなくてはいけないわ。山を降りましょう、ビリー。ここは竜種狩りに適していない」

「わかった。スチームバイまでは魔術で運んでくれ。そっからはスチームバイで移動しよう」

「そうね。--レク セリア」

 リトゥアは先刻と同じ祝詞を唱え、そのまま俺たちの体は高速で動き始める。それは、よくドラゴンの特徴を理解して、着実に距離を離していく逃げ方だった。

 ドラゴンが空想の産物では無く、特異的にビヨンドから渡ってきた生物だと判明してからしばらく経つが、それでもビヨンドの生物はまだ未知の領域が多い。正直、リトゥアの言う通り一緒に仕事へ出て良かったと思う。

 ドラゴンはそんな俺らを一瞥すると、

「■■■■■■■■■■■■■■――――ッ!!!」

 巨大な咆哮を天に叫んだ。震える空気はさながら暴風ハリケーンの様。

 びりびりと体を裂く衝撃に耐えながら、俺たちは斜面を降っていった。もちろん、木の間を動くことで巨体のドラゴンは追いかけてこられないようにする。

 そんな俺たちに痺れを切らしたのか、ドラゴンは翼を大きく震わせて天に駆け上った。

「やっぱり、上から火ィ吐いたりしてくんの?!」

「カナサに召喚された竜だから、無闇にビヨンドの山を燃やすことはしないと思う。けれど、ドラゴンは風の魔術で空気弾だって撃てる。また動きが荒くなるから気をつけて」

 リトゥアの言葉はすぐに現実となり、ドラゴンが上空で羽ばたく度、魔力の篭った空気が砲弾となって降り注ぎ始めた。

「クソっ、こっちから届かないところに居座りやがって……!」

「戦いの最中に竜が降りてくるのは、他の竜を倒して縄張りを奪うときくらい。このまま避け続けるしかないわ」

「あの空気弾、アームストロング砲みたいな物か。リトゥア、大きく蛇行しながら走れ!あの手の長距離兵器は横移動に弱い!」

「わかった」

 そうして、俺たちはランダムに走ることで何とか砲弾を躱していく。それでも、さっきまで立っていた位置にクレーターが出来るのを見るたびに生きた心地は全くしない。

 幸いなのは、一発ごとに風と魔力のリロードが必要なので連射力は大したことが無いことと、反動があるらしく撃って暫くはその場から動けないことで、それらは俺たちの逃走を大きく助けていた。

 そんな攻防を繰り返しながら、俺たちはようやく麓に辿り着く。その時、

「■■■■■■■■■■■■■■――――ッ!」

 ドラゴンは一際大きく叫び、さらに空気弾を放とうと魔力を溜め始めた。

 その先にあるのは……、

「コイツ、スチームバイを狙ってやがるッ!」

 俺たちの移動手段だ!

 目的通りスチームバイに向かえば空気弾に直撃するが、かと言って躱しても貴重な足が無くなってしまう。つまり、どの選択をしても俺たちが圧倒的な不利を負うということだ。ドラゴンの行動がそこまで理解してのものであれば、恐ろしく賢い生き物だな……。

「ビリー、どうする?」

「そのままスチームバイに向かえ! 空気弾は俺が何とかする!」

 当たったら敗北。だが回避も許されない。だったら取れる手段は迎撃だけだ。けれど、敵の砲弾は余りに強大であり、生半可な攻撃は通じないだろう。大砲に拳銃で敵う道理は無い。

 だったら、こっちも砲を使うまで!

雷公サンダラー!」

 腰に提げていた銃身型デバイスと義手を接続。すぐさま、液状血金石によって砲弾を加速して発射!

 音速を超えて放たれた砲弾は辺りに衝撃派を撒き散らしながら突き進み、そのまま空気弾と衝突する。

 魔力と血金石。大き過ぎる二つのエネルギーは上空で激しく喰らい合う。だが、強大故に膠着も一瞬。刹那の後には互いにその姿を霧散させていた。散り散りになった魔力は空を震わせ、砕かれたサンダラーの砲弾は塵となって大地に落ちる。

 これで、俺の切り札はドラゴンに傷一つ負わせることも無く、空気弾を撃ち落としただけで終わった。だが、それでもドラゴンに隙が生まれたことは事実である。俺たちはすかさずスチームバイに跨って急発進。ドラゴンは次のサンダラーを恐れたのか一度遠くへ飛行して身を隠した。こういう場で追撃よりも自己の生存を重視するのは、やはり獣の性だろう。その間に、俺らはドラゴンの視界から離れるように動く。

 そのまま、俺たちを見失ったドラゴンはファレトの頂上に降りると、そのままじっと虚空を見つめている。

「あの竜種、魔力を溜めているわ。多分、召喚されたてで万全の力では無かったのだと思う」

「あれからまだ強くなる気か……」

 だが、それは俺たちも一緒。ドラゴンが力を蓄える間、俺たちは猟場を選び、装備を整え、策を練ることができる。

 つまり、一先ず勝負は仕切り直しとなったのだった。

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